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鳥たちと一緒に空を旅した少年ー絶滅寸前の渡り鳥を守れー実話を基に「ニルスの不思議な旅」は、蘇るー『グランド・ジャーニー』

子どもの頃、物語が大好きで、たくさんの児童書を読んだ。50年(!?)くらいも前のことだろう。『ニルスの不思議な旅』は、何度も何度も繰り返して読んだ記憶がある。いたずらをして小人にされてしまったニルスが、ガチョウのモルテンの背にのって、隊長アッカ率いる雁の群れと一緒に旅をする。

後にアニメ化されたので、そちらの記憶の方がきっと多いのでしょう。でもわたしは、アニメのニルスもモルテンもアッカ隊長も「イメージが違う!」でろくに見なかった。面倒くさいタイプ☺️

『グランド・ジャーニー』は、これまた大昔のディズニー映画(実写版)を思い出させる。少年と冒険ー心が通じる相棒、犬や猫や人間でないものたちのー

都会っ子のトマは、ほうっておけば一日中ゲームをしてる。スマホとノートパソコンがなければ生きていけない(と思い込んでいる)

仕事で忙しいママは、夏休みの間中、田舎暮らしをしているパパのところへ行けという。(二人はどうやら離婚してるらしい)湿地帯で暮らすパパは、自然生物学者のようで、絶滅が危惧されている野鳥のカリガネガンを人工孵化から育て、成鳥したら渡りが出来るように、自ら超軽量飛行機で伴走するー壮大で妄想的な計画に邁進している。

いったい本当にそんなことが出来るのだろうか?

アヒルやガチョウの雛は、生まれた時に初めてみたものを「親」だと認識する「擦り込み」について、聞いたことがある人はきっと多いと思う。主人公のトマは、生まれて初めて、生き物が誕生する瞬間に立ち会った。自然にも生き物にも全く興味のかけらもなかった彼の人生は、その瞬間から一変する。

映画を見ているわたしも、雛に夢中になる。トマと鳥たちの共感ぶりは、フィクションとは思えないくらい愛おしさに満ちて。鳥たちが大きくなり、超軽量飛行機に乗る少年ー親ーを追って水面から飛び立つ瞬間ーあまりの美しさに涙が出た。

予想もできない数々の苦難を超えて、トマと鳥たちは飛び続ける。

実話を基にしているとクレジットがありますが、渡りを教えるためにノルウェーからフランスへ飛んだ気象学者のクリスチャン・ムンクが、自らの体験を基に脚本化ー映画自体は、全くのフィクションで、だからこそ驚愕する。

本当にトマとアッカは、一緒に空を飛んでるんだよ!

夏休みの子どもたち、特に小中学生に見てもらいたい。家族で見るのは、もっと素敵!是非おすすめします。


封切りの宣伝を見た時、これは絶対に見たい!と思ったんですが、見てる時に思い出した。『WATARIDORI 』(2001 ジャック・ベラン監督)ドキュメンタリー映画をわたしは見ていたのだった。野生の渡鳥の渡りをそれこそ一緒に飛んでる映像で話題になった。長い映画で、途中で何度も居眠りをしてしまいーなんで見に行ったのか忘れたけど、でも見たかったんだよね…。それこそニルスの擦り込みーだったのかもしません。

角川映画、だったのね。


追記

映画に出てくるアッカーカオジロガンについて調べていたら同じ系統のカナダガンが外来種で駆除の対象になっているのを偶然見つけたんですが、この東京都環境局のサイト「外来生物」についての表記の仕方、おかしくないですか?

「危険な外来生物」って、

>人への咬傷
>羽で打たれることによる打撲や骨折

人に何をするかじゃないでしょ!? そもそも野生の水鳥が人を噛んだり、羽で打って骨折させたりする可能性って何%あるの?(わたし、カラスに蹴られたことはあるけど)

外来種の危惧とは、その地域に元々いない生物が、何らかの理由によって繁殖し元々ある生態系を崩してしまう環境への影響なんだから、人間に危害を与えるから駆除しますーみたいな一律の表記では、何ら自然環境の問題なのだという意味は、伝わらない。

これじゃあ人にとって「危険な生物」は、殺していいんだってメッセージにもなってしまうし「外来」への歪んだ認識にも繋がってしまうだろう。駆除に関して、動物愛護の人たちから抗議でも来るのだろうか?

素晴らしい自然と環境保護と問題意識についての映画を見た後に、この見事なまでの我が国の「お役所仕事」に、愕然とするって。落ちは辛い😢



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