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『御社のチャラ男』、そしてリモワ時代のお仕事小説って。

絲山秋子さん『御社のチャラ男』を読む。
会社でひそかに「チャラ男」と呼ばれるとある男性。彼の人びとが彼を語ることで、日本にどこにでもあるような会社の実態が浮かび上がってくる。

タイトルに惹かれて手にとったけど、中身も裏切らなかった。
とにかく「チャラ男」の描写が絶妙だったので、いくつか紹介。

「この人(チャラ男)の話すことって、コピペなんだ。ひとから聞いたこと、ビジネス雑誌に書いてあったこと、ネットのまとめの受け売りなんだ」。チャラみがはんぱない。

「私は努力をしないひとが嫌いだった。なんでも楽々とこなしてしまうひと、勘でものを言うようなタイプ。サボっていても帳尻だけ合わせる輩。いい加減にやって上手にできてしまうひとと、物事をほったらかして平気なひとも」。

「チャラ男が最も嫌がるのは、無視されること」。

「チャラ男は頭がいい。責任感はないが危機管理能力が高い。そして常に自分中心だ。それは例えば高校2年で陸上部がだるいと言って引退し、野球部に入ってきたと思ったらいきなりレギュラーを要求するような人だ」。

帯に「チャラ男って本当にどこにでもいるんです。一定の確率で必ず」と書いてある。それに違わず、こういう人いるー! って。

「エモい」の定義もよかった。

すごい昔のこととかを思い出して、不必要に照れたり羞恥心が湧き上がったりするでしょ? カーって感情がほとばしるのが「エモい」じゃないかな。

会社での会話や物の考え方や社員の描写が「あるある!」の連発。お仕事小説が好きな方にぜひ読んでもらいたい一冊。

***

ところで、リモートワーク時代になると「お仕事小説」ってどういう形になるんだろうか……。

満員電車、同僚と連れ立って行くランチ、給湯室やトイレでの会話、コーヒーを買うコンビニ、深夜残業中に抜け出して行くラーメン屋……なんてものが全て無いわけで。

リモワ時代の仕事小説の舞台は全てslackとzoomなのかな。読んでみたいなぁ。

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