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脱炭素経営の誤解を解く!構造を理解することでわかる、本当に取り組むべきアクションとは?

気温の上昇や大雨をはじめとする異常気象、そしてそれに伴う自然災害は私たち一人一人にも大きな影響を与えるようになりました。地球温暖化による気候変動問題への対応は今や、社会全体で取り組まなければならない共通の課題となっています。

関連して、近年ニュースなどでよく耳にするようになったのが「脱炭素」というワードです。持続可能な社会に向けた世界の動きを受けて、企業のみなさんも脱炭素を意識した経営の必要性を感じているのではないでしょうか。

一方で、「実際、弊社で脱炭素を推進するのは難しいのではないか?」「脱炭素は利益に繋がらないのではないか?」というイメージを持っている方も多いはずです。

実は、多くのビジネスパーソンがこのように考えてしまう背景には、今流行りの「脱炭素」というビッグワードに対する誤解があります。それらは、構造の理解を踏まえて誤解を解くことができると、ビジネスを推進する上で本当に取り組むべきアクションが見えてくるのです。
本文では、昨今の脱炭素を巡る社会の動きと企業における推進への誤解について解説すると共に、構造の先にある、取り組むべきアクションを紹介していきます。


そもそも『脱炭素』とは?

「脱炭素」とは、地球温暖化の原因である二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする取り組み(=カーボンニュートラル)のことです。

「排出を全体としてゼロ」というのは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの人為的な「排出量」から、植林・森林の機能による「吸収量」を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味しています。つまり、排出量を抑えるのと同時に、どうしても排出が避けられない温室効果ガスを回収することで、温室効果ガスの排出量と吸収量の双方を均衡させるということです。

脱炭素に向けた世界・日本の動き

2015年に採択されたパリ協定では、世界共通の長期目標として、

世界的な平均気温上昇を工業化以前に比べて
2℃より十分低く保つとともに(2℃目標)、
1.5℃に抑える努力を追求すること(1.5℃目標)

が合意されています。

またこのパリ協定を受け、2020年10月、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。

「べき論」ではない、企業が脱炭素に取り組む具体的なメリット

このような背景の中、「エネルギー消費量の多い企業こそ、二酸化炭素排出の削減に取り組むべき!」という主張は、頭では理解できるものの、「やるべきこと」としてしか捉えられず、メリットを感じづらいため、脱炭素経営の推進にまで及ばないことが多いのではないでしょうか。

一方で、企業が脱炭素に取り組む意味は、社会的責任以外にも具体的なインセンティブから見出すことができます。

・コスト削減への貢献
エネルギー効率を高め、再生可能エネルギーに移行することで、長期的にはエネルギーコストの削減が期待できます。エネルギー価格の高騰に左右されにくくなるだけでなく、廃棄物や排出量の削減による運営コストの低下も見込めます。

・カーボンプライシングの回避
すでに世界の多くの国々で導入が進むカーボンプライシング(CO2排出に対する課税や排出権取引制度)は、企業に直接的なコスト負担を強いる可能性があります。企業が脱炭素対策を講じることは、カーボンプライシングによる直接的な負担を軽減し、将来的なコスト上昇リスクを回避することができます。

・法的規制への対応
世界中で環境規制が強化されており、企業はこれに適応しない限り、法的リスクや罰金に直面する可能性があります。規制に先んじた取り組みは、法的リスクの回避だけでなく、企業の社会的信用の向上にもつながります。

・ブランド価値と顧客信頼の向上
消費者や取引先が環境に配慮した製品やサービスを求める傾向は強まっています。環境に配慮した経営を行う企業は、ブランド価値を高め、消費者からの信頼を獲得しやすくなります。特に若年層の消費者やサステナビリティを重視する企業にとって、脱炭素に積極的に取り組む企業との取引を選ぶことが増えています。

・投資家からの評価向上
ESG(環境・社会・ガバナンス)に基づく投資が拡大しており、環境に配慮した企業は資金調達において有利な立場を得ることができます。

脱炭素への取り組みは企業にとって事業活動と切り離された社会的責任だけなく、コスト削減や市場での競争優位性の確保、さらには投資家や消費者からの支持を得るための重要な戦略です。企業が自主的に脱炭素に取り組むインセンティブは、今後さらに大きくなるでしょう。

企業が脱炭素経営に移行することの生々しい難しさ

これらの要素からも、脱炭素経営への転換は、設備投資や技術導入、サプライチェーンの見直しなどの短期的な投資を必要としながらも、長期的にはメリットがあるとご理解されているかと存じます。

しかし、実際は多くの企業が脱炭素への取り組みを行ないながらも、脱炭素経営を実現できているとはいえない状況です。

企業にとって、脱炭素推進を阻む落とし穴は、大きく2つあると考えられます。

1. 脱炭素の発生構造を理解しないまま導入される、社内での対策
脱炭素の取り組みは、自社内の温室効果ガス排出を抑えることだけ考えていても思うように進まないことがあります。例えば、自社内でのエネルギー消費を削減しても、原材料の供給元が高い排出量を持つ場合、全体の排出量にはほとんど影響がない可能性があるのです。
つまり、脱炭素経営においてはまず業界全体やサプライチェーン全体での排出源を理解することが不可欠だと言えます。

2. 社内各部署・サプライチェーン全体での協力不足
脱炭素の取り組みにおいて、他部署・サプライチェーン全体との協働が不十分だと、目標達成が困難になります。例えば、一部の部門が脱炭素への取り組みに対して消極的な場合や、取引先が高い排出量を持っているにもかかわらず、それに対する対策が進んでいない場合、全体の排出量が減らず、自社の取り組みが無駄になることがあります。

これらの失敗例では、トレンドである脱炭素というビッグワードに流されるあまり、脱炭素の全体構造や業界・サプライチェーンに対する理解が欠け、闇雲に目標や取り組みを決定した結果に起こっている事象です。

このように、何に取り組むかよくわからないまま脱炭素への取り組みを進めると、短期ならず中長期でも利益に繋がらずに終わってしまうため、企業もそれを取組を推進し続けることができないというジレンマを抱えてしまいます。

取り組むテーマの構造を理解することで、初めて見えてくる解決のヒント

では、どのようにしたら企業は本質的な脱炭素経営に移行することができるのでしょうか?

リディラバは、取り組むべきイシューの構造を正しく理解することが、事業の失敗を避け、成功に繋げる第一歩となると考えます。

より具体的に言えば、部門ごとといったようなミクロの視点ではなく、よりマクロの視点で脱炭素を取り巻く構造について捉えることで、企業が本当に取り組みたかった脱炭素の実現に取り組むことができると考えています。

マクロの視点で構造を捉えるとはどういうことなのか、ここでは食品ロス問題を例にして考えてみましょう。

食品ロスのテーマから、課題の全体構造を捉えてみよう!

日本では年間に約523万トンの食品ロスが出ており(令和3年度)、まだ食べられる食品が大量に廃棄されています。誰もがもったいない!と思うであろうこの問題ですが、なぜ中々廃棄が止まらないのでしょうか?

多くの人が食品ロスという言葉から、所謂「売れ残り」「たべのこし」に代表される、小売から消費にかけての食品ロスをイメージします。故に、行政や企業の取り組みとして、「手前どり」や「無駄なく食べる」といった取り組みが挙げられることが多いです。

「食品ロス」の構造化(Ridilover Journal)

では、目に見える領域だけではなく、食品ロスの初めから終わりまで、その内側を見てみるとどうでしょうか?

食品ロスの内訳をみると、約半数は家庭から生まれるものですが、企業活動の中で生まれる事業系の食品ロスがもう半数を締めています。
また、食品のロスは、小売の前に生産・加工という、サプライチェーンの各領域においても発生をしています。

例えば、規格外野菜がその一つです。【生産⇒小売】において、サイズが違うと輸送コストがかさんだり、小売店や消費者に買ってもらえないリスクが高まるため、はじめから規格外野菜は出荷しない方が経営上は合理的とされています。

またその他にも、1/3ルールや先入れ先だしルールといった【加工⇒小売】にかけての食品業界独自のルールが存在し、ロスを避けられない構造があります。

問題の構造化をすると、今まで把握しきれていなかったボトルネックや、世間の表層的な認識と本当に起こっている「本質」とのギャップなどが見えるようになります。

構造化をすることによって初めて、食品ロス削減という取り組むべき課題に対して理解することができ、本当に意味のある目標や取り組みを設定することができるのです。

自社だけに限らない、構造の理解は産業全体の本質的な脱炭素経営の近道

脱炭素に向けた取り組みにおいても、食品ロスの例のように、取り組むべきイシューの全体構造を正しく理解することが重要となります。

脱炭素経営というと「最近よく聞くし、何となくやらなきゃいけないよね」「自社内の温室効果ガス排出を抑えればいいよね」と単純に考えがちですが、このような誤解は本質的でない環境対策を招いてしまいます。

企業のみなさんがより本質的な脱炭素経営によって自社にも社会にもメリットをもたらすためには、まずは向き合うテーマの構造を正しく理解することが大切です。構造を理解することで、自社のみならず、産業が構造の中でどの位置づけにあるかが明らかになり、取り組むべき本質的なアクションを決めることができます。


リディラバでは、『脱炭素』に限らず、『障がい者の社会参画』『地域社会』など社会課題の構造を起点に、企業の人事・人材育成の課題解決に取り組んでいます。

お困りごとを抱えるご担当者がございましたら、ぜひこちらまでご相談下さい。


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