見出し画像

もっと楽にお出かけしたい 車いすとバリアフリーの話

今年は暑い。暑さに参っているせいか、毎日だらだらだ。そうして過ごしているうちに、髪の毛が伸びてきた。髪の毛が伸びると、乾かすのに時間がかかる。「髪の毛を洗う時間もかかるようになったし、美容院へ行こうか!」と母に言われ、美容院へ行くことにした。

そうそう、私は線維筋痛症などの持病があり、殆ど寝たきりで毎日を過ごしている。髪の毛を洗うことさえも、全身の激痛や極度の疲労感などのせいでひとりでできず、母に手伝ってもらっている身だ。そんな人間が美容院へ行くとなると、介助する人と車いすと車が必要になる。通常のショッピングモールなどでレンタルできる車いすではなく、頭を支えることができて尚且つ背もたれの角度を変えられるティルト式車いすを使って外出する。


美容院へ出掛ける当日。天気は曇り。「今日はずっと曇りで、雨が降らなくてよかったね。」と帰り道で母と話していた。そう、雨は車いすの弱点。雨が降ってしまうと傘を指すことが出来ないので、レインコートを着て出掛けなくてはいけない。天井などで雨を避けて通れるところがあるのならいいのだが、残念ながら私が通っている美容院はどうしても雨が避けられない。こうなってしまうと、なるべく雨が降らないように願うしかないのだ。

雨といえばこのあいだ、美容院とは別の日でどうしても行きたい展示があった。しかし、その日は雨だった。仕方がないので、その場合は会場に近い駅からタクシーを利用する。車いすじゃなければ、電車だけで行ける場所なのにタクシーを使わなきゃいけなくなるのはお金がかかって嫌だなと思うが仕方がない。それが世の中なのだ。もうちょっとタクシー代の負担の免除とか充実してくれると助かるのにな…と心の中でぼやきながらタクシーに乗っていた。

美容院のときも展示のときもそうだが、車いすで電車などに乗る際、なるべく通勤ラッシュにぶつからないように交通機関を使うのが暗黙のルールとなっている。また、駅員さんに案内してもらえないと乗車できないため、乗りたい電車の30分前に最寄り駅に着くようにしている。一見、便利そうに見える駅でも、車いす視点から考えると不便な駅の構造だったりすることも多い。なので、事前に駅などの構造を念入りに調べてから、一番安心安全なルート使って毎回出掛けている。


ここまで読んできて、コロナが蔓延している時にそこまでして出掛けたいのかと疑問に思う方がいるかもしれない。「病気なんだから、お前は家に篭れ。」と。けれど、どんなに激痛などの症状でつらくても、定期的に外へ出ないと精神的に参ってしまうのだ。おとなしくずっと家で殆ど寝たきり状態で過ごしていると、思うように身体を動かせなくてストレスがたまる。すると、この世界で症状を抱えて生きていくのが急にバカらしくなり、すべてが嫌になっていく。たとえ、世の中がどうなろうと私の症状は良くならない…、生きる希望さえも持てなくなっていく。そういった思考に陥らないためにも、私は定期的に外に出ている。この世界で生きている人間であることを確認するためにも、外の世界に触れることが必要なのだ。


そうそう、車いすでの外出での話といえば、たしか今年の4月。ある車いすユーザーがJRに乗車拒否されたとのニュースがあったが、覚えているだろうか。

ニュースが拡散されるようになって、Twitterにて炎上が起きた。良くも悪くも車いすの話が話題になり、さまざまな人たちが車いすについて意見を述べていた。

しかし、7月下旬の現在。もうその車いすの問題は、話題にはなっていない。そのニュース記事について、当時色々とTwitterなどで持論を呟いていた人たちには、おそらく記憶の片隅にあるぐらいで、その時どんなことを思って呟いていたのかなんて覚えていないだろう。当時ハッシュタグ運動なども盛んだったが、今はどこへ行ったというくらいに消えてしまっていた。けれど、炎上のせいで本人に根強いアンチがついてしまい、この間チラッと覗いた時にはリプライ欄がアンチだらけだった。

やはり、炎上で注目を浴びることにはリスクがともなう。その手法で社会運動などをし始める人たちがいるけど、私が知っている限りでは毎回継続できていない。花火のように一時的に盛り上がって、あとは消えていくだけ。おまけに固定のアンチが増えて、本人への負担が非常に大きい。そこまでリスクを負いながら発言しているにもかからわず、後に何も残らなかったらあまりにも可哀想だ。しかし、現時点では忘れられているかのように話題になっていない。もちろん、一部の人たちにとっては記憶に残っており、その後も話題にしている。だがしかし、その人たちは炎上しなくても、その分野にもともと関心があった層だろう。そして、私もその中のひとりである。炎上がキッカケで活動しても、その後にきちんと繋げられなければ、意味がない。炎上リスクを背負ってまでSNS上で社会運動をして話題になることは、トータルで考えると良いことなのだろうか。


しかしながら、当事者本人がそこまでしないといけないほどに、車いすの状況は悲惨なのかと聞かれると「前より良くなったのかもしれないけど、まだまだ不便だよ。」としか私も言えないのが現状だ。おそらく、これでも昔よりはマシになったと思う。だが、残念ながらこの時代になっても、車いすで不便なく外出を楽しむのには通常よりタクシー代などのお金がかかる。また、交通機関を使う際に、最短距離のルートでスイスイ行ける状態でもなく、遠いところや端っこにエレベーターなんて当たり前で、おまけに降りたい出口は階段もしくはエスカレーターしかなくて降りたい駅の反対側の出口しか利用できないこともよくあったりなど、交通機関だけでも課題はまだまだ山ほどある。

私の理想は、設置可能な場所にエレベーターが出来ること。交通機関での利用が、駅員さんを呼ばなくても大丈夫なくらい楽になること。お店などで、気軽に車いすでの入店が可能になること。しかし、現状は難しい。エレベーターの設置には、お金と場所と許可が必要だ。また、お店などによっては個別に対応ならできるが、設置不可能のところもある。

だからこそ、その時々にお互いにここまでならできる or してもらいたいところをきちんと冷静に話し合って解決していく。ひとりひとり見えないバリアというものは違うのであって、具体的に何をして欲しいのかをきちんと言葉にできるようにしなければ、対応する側に伝わらない。また、対応する側もどのようなことが現状で可能なのか、きちんと把握しておかなければならない。そして、より良い合理的配慮をするためには、お互いに歩み寄ってこそ実現可能なものであり、どちらも上から目線で言いたいことだけ言ってはいさようならでは何も生まれない。

私たちは良くも悪くも人間なので、今は考えられても、意識していないと忘れてしまう。よほど興味がない限り、ひとは忘れてしまう。だからこそ、たまにこうやって言葉にしていくことで、思い出してくれるかもしれない。お互いにとって、より良い社会を目指すために。これからも、発信し続けたい。





--------


前回の記事はこちら



▷のしりこ Official Website【ricrck】
https://ricrck.blogspot.com/

▷Twitter
https://twitter.com/ricrck

▷Podcast『のしりこの旅のあいまに』
https://ricrck.blogspot.com/p/podcast.html




【サポート募集中!】 普段は難病のせいで全く働けず、殆ど寝たきり状態のなかで活動しております。もしよかったら、サポートしてくださると心がウキウキでキュンキュンです。猫のトラも喜びます。SNSなどでサポートをいただいたことは触れますが、名前などは出しません。よろしくお願いします!