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【日本語教師の本棚3】「ビジネスで一番大事な心理学の教養」を、日本語教師目線で読む

この記事の所要時間:4分

週末、読書の時間がありました。

タイトル ”ビジネスで一番大事な「心理学の教養」”

本書の内容で、日本語教師にも参考になる点がありましたので、シェアさせていただきます。

本書の特徴

本書は、心理学関連の知識をダイジェストでざっくりまとめてくれている本です。

本書は「モチベーション」、「営業・マーケティング」、「イノベーション」、「人材育成」など、ビジネス上のいろいろな場面で心理学の知見をどう活かすか、という観点で書かれていました。

全体として「広く浅く」で書かれており、更に掘り下げたい人は専門書を参考にできるよう関連する本が紹介されています。

中でも、「コミュニケーション」の項目は、日本語教師ならだれでも使える知識が書かれていましたので、かいつまんでご紹介していきます。


授業の始め方に使える知識

ファティック

「ファティック」とは、「暑いですね」などといった、それ自体は特に意味のない社交辞令のような言葉です。実は、会話の中ではこうした一見意味のない言葉は「私はあなたに関心を持っていますよ」ということを表す手段でもあります。

この知識、日本語教師はどう使う?

授業の最初に、相手のレベルに合わせてちょっとしたあいさつのことばをかけるのは大切です。「お元気ですか?」といった意味のない言葉も、慣れない外国語に緊張している生徒にとっては、ウォーミングアップの意味合いがあります。たとえ、毎回同じようなことばでも、ちょっとした挨拶の言葉をかけるのには意味がありますね。

「ファティック」に関する参考書

授業中に使える知識

メラビアンの法則

人はよく理解できない話を聞いたときにどうするか、という調査に基づく仮説です。

「人はコミュニケーションを取るときに、見える情報をかなり参考にしている」そうです。

具体的には、「よく理解できない話を聞いたとき」、7%は聞いた情報、38%が話し方の速度などの聴覚情報、55%が話し方や身振りなどの見える情報に基づいて判断する、という法則です。

この知識、日本語教師はどう使う?

オンラインでも教室でも、まだ勉強中の生徒にとっては、聞く情報よりも見える情報がかなり重要です。先生の表情、身振り、話し方、そして、話すスピードなど、話の内容以外の要素に気を配るのは大切です。

特にオンラインの場合、生徒から先生がどう見えるかは重要です。カメラの角度、照明の明るさといった要素だけなく、表情や身振りを使って、よりわかりやすく話すことが大切ですね。

「メラビアンの法則」に関する参考書

ツァイガルニク効果

人は、「未完成なもの」や「中断されたものに」注目しやすい、という効果です。連続ドラマ、「続きはWebで」という広告、レストランの手書きの看板などはすべて、この「ツァイガルニク効果」の応用です。

この知識、日本語教師はどう使う?

授業で資料を準備するときに、あえて未完成にしておき、授業で完成させる、という方法があります。

オンラインの授業だと、パワーポイントの資料にわざと余白を作っておき、授業でそこに手書きで書き込んでいくと生徒は注目しやすくなります。

作りこんである完璧は教材よりも、「未完成なほうがいい」というのは、授業の準備の手間が省けていいですね。

授業の終わり方

ピークエンドの法則

人間は過去の経験を「ピーク(一番いい・悪い)」の瞬間と、「エンド(終わり方)」で判断している、というものです。

この知識、日本語教師はどう使う?

これは授業の終わり方をどう工夫するかの参考になりそうです。どんなに授業が盛り上がっても、授業の最後がなんとなく盛り下がって終わったら、それが生徒にとってはその授業全体の評価になります。

逆に最後の方に授業の満足感を感じられたら、授業全体への満足感も比較的高くなる、といえますね。

会話の練習などでは、復習たしてすでに授業で練習した会話文の練習を、あえて最後のほうにもう一度やってみるとで、生徒は「今日はかなり話せたな」と感じるかもしれません。こうした満足感や達成感が、日本語学習全体へのやる気に影響を与える、とも言えそうです。

逆に、最後の方に、難易度の高い内容をもってくると、生徒が達成感を感じにくくなる、とも言えます。

こうした知見は教案の作りの参考になりそうですね。

「ピークエンドの法則」に関する参考書

生徒との関係構築に使える知識

インテーク

「インテーク」とは面談のこと。「インテーカー」は面談者のことです。「この人にはなんでも話してもいいんだ」という気持ちを持ってもらうことで、リラックスして話してもらえます。インタビューにおけるインタビュアーのような存在です。日本語教師は、まさにこの「インテーカー」を目指すべきかなと思います。

教師がひたすら説明する形での授業は、生徒のインプットは多くなってもアウトプットは少なく、やり取りの機会も少ないです。

また、試験監督のように「間違えてはいけない」という緊張感も、言語の学習にとってはマイナスですね。

教師が生徒の発話を上手に引き出す「インテーカー」になれば、生徒にとっては「今日はたくさん話せたな」という気持ちを持ちやすいですね。

「インテーク」に関する参考書

まとめ

本書のすべての部分が日本語教師にとって参考になる内容、というわけではありませんでしたが、コミュニケーションの項目はかなり参考になりました。

また、本書は心理学の知識をひとまずさらっと知っておきたいという人には、おすすめの内容です。

心理学は外国語教育にも応用できる部分が多いため、勉強すると面白ですね。

こちらの記事、第二弾もあわせてお読みください。


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