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宮崎市を行く!(前編)シーガイアで禊する?


【宮崎でふと時間ができてしまった】

宮崎県から東京へ戻る飛行機便にはかなり時間がある。
せっかく神話の国・宮崎に来ているのだから何処か行きたい。
しかしあまり遠くに行く時間は無い。
少し考えた結果、「阿波岐原あはぎはら」に行こうと思い立った。

【追跡!祓詞に出てくる阿波岐原ってどこだ?】


皆さんも神社で神事の前に祓詞はらえことばをかけられると思う。

かけまくもかしこ伊邪那岐大神いざなぎのおほかみ筑紫つくし日向ひむかたちばな小戸をど阿波岐原あはぎはらに、御禊みそはらたまひしときせる祓戸はらへど大神等おほかみたちもろもろ禍事まがごとつみけがれらむをば、はらたまきよたまへとまをこと聞食きこしめせと、かしこかしこまを

【現代語訳】
口に出して言うことも恐れ多い国土万物を生んだ男神である伊邪那岐の大神が、筑紫にある日向の橘という所の小さな水門のそばにある阿波岐原で、身の罪や穢れを水に漬かって洗い清め災難などを除き清めなさった時に、お生まれになった祓戸という祓えをするための場所を守る四柱の立派な神々が、すべての悪いこと災いを招くことさらには不浄なことが起こったとしたらそれらを除いてくださり清めてくださいと、祓戸の神々に申し上げることを祓戸の神々はお聞き入れくださいと、恐れ多い恐れ多いと思って祓戸の神々に申し上げます。

この祓詞、初詣などで1度は聞いたことがあるはず。
「どうせ、神話でしょうよ」という気持ちで架空のものと決めつける方もおられるが、この中に「|阿波岐原《あはぎはら》」という具体的な地名が出てくることにお気づきになっただろうか。

筑紫とは九州のこと(北九州のことを指す場合もある)であり、日向とは現在の宮崎県と鹿児島県北東部のこと。
そして、筑紫の日向には、現在も「阿波岐原」と呼ばれる場所があるのだ。

阿波岐原あはぎはら森林公園という広大な森林が海岸線にそって広がっている。

【天照大神誕生の地】


以前、出雲へ行った際に「黄泉比良坂よもつひらさか」の記事で書いたが、伊邪那美命は黄泉比良坂を通じて黄泉の国から帰ってきた。

黄泉の国での汚れを清めたかった伊弉諾尊は、「阿波岐原あはぎはら」の地で禊を行った。

これが神事の前に行う「禊」の初出であり、さらにその禊では様々な神様が生まれ、最後に天照大神あまてらすおおみかみ、月読命《つくよみのみこと》、素戔嗚尊《すさのおのみこと》の3貴柱が生まれた。
汚いものを祓うのに、そこから貴いものが生まれてくるところに「禊」の面白さがあると思う。

【宮崎県民はシーガイアで禊をしているのか?】

「電気羊はアンドロイドの夢を見るか」みたいな変な小見出しだが、これは後輩の発言から来ている。
宮崎出身の後輩が「宮崎は神話の国でー」云々ドヤ顔で言っていったので「伊弉諾尊が禊をした場所にシーガイア作ってるじゃねえか!冒涜じゃないのか!」とツッコんだことがあった。
すると、ノータイムで後輩は「シーガイアで禊をしてるんだ!」と言い返してきて感心したことがある。

海の目の前の屋内プールという成金趣味

私も世代ではないので、驚いたのだが、宮崎県は昭和30年代から50年代にかけて新婚旅行先として人気で観光立県だったのだという。
観光地として人気の衰えに危機感を持った結果、切り札として生まれたのが「シーガイア」だった。
2000億円で計画されたシーガイアは、建設中にバブルがはじけ、年間200億円の損害を出すお荷物となってしまった。
目玉施設の世界最大の屋内プールも閉鎖してしまい、紆余曲折あって現在は「フェニックス・シーガイア・リゾート」として稼働している。
神話の国という神聖なイメージと成金趣味のプールがかけ離れているじゃないか!と突っ込みたかったのだが、「禊」をしていると言われたら何も言い返せない。
確かにあれは屋内プールではなく、世界最大の禊場だったのかもしれない、と思ってクスリと笑った。

【みそぎ池のある市民の森へ歩いていく※非推奨】

みそぎ池へ行くためには、宮崎駅から1時間に1本出ているバスに乗れば25分ほどで行ける。
ただ、タイミングが悪く、少し歩いていってみたい気持ちもあり、JRで5分ほどの「蓮ケ池駅」から2キロほど歩いて行ってみた。

無人駅「蓮ケ池」
線路の向こうに原っぱが広がっている
街路樹も南国風
歩いていると鬱蒼とした森が見え始めた。大きなビルも
おそらくあれが市民の森なのだろう
原っぱの向こうの森は美しく見える

田舎出身だが、歩くのは得意なので割と平気だった。知らない土地を歩くのは風土を感じられて楽しい。
ただ、暑い中で慣れない土地を歩いていったので、40分ほどかかってしまった。

【みそぎ池につながる森が広がる江田神社】

江田神社に到着した。
この社叢の奥に「みそぎ池」があるという。

神様の系図も置かれている。
ここが神話の地だということを意識しつつ、鬱蒼とした森に足を踏み入れるのであった。

【中編】に続きます。


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