ジブリ作品を金曜ロードショーでしか観たことがなかった私が『君たちはどう生きるか』を見た結果
私は映画が好きですがスタジオジブリ作品を金曜ロードショーでしか見たことがありませんでした。
例えば、物心つくころに丁度かつて日本歴代興行収入1位になったことがある『千と千尋の神隠し』が上映されていてめちゃくちゃ話題になった時、家族は行きたがっていましたが夏はポケモンなのでそっちに行っていましたし、あまりに人気過ぎて地元の公民館が即席映画館になって『千と千尋の神隠し』が上映されて、子どもは500円で見られた時も行きませんでした。
その翌年『猫の恩返し』が公開された時は母親と姉は観に行きたい!と観に行っていましたが私と父はその日『スターウォーズエピソード2』に行ったのは何故か憶えています。
その後の『ハウルの動く城』や『崖の上のポニョ』『風立ちぬ』などなどもスルーしていました。
スタジオジブリ作品に触れる機会は金曜ロードショーで定期的に放送されているものを見ている程度で、腰を据えてみることもなかったので『天空の城ラピュタ』などの80年代~90年代の作品も含めてちゃんと物語を把握している作品は少ないです。
そんな私が『君たちはどう生きるか』を映画館で観に行こうと思ったのは、宣伝がほとんどなく公式から提供されたのはあの謎の鳥がアップで映っている画像のみで、逆にどんな作品か興味を持ったからです。
観に行く前、実は実写ドラマなんじゃないかとか、より驚かせるためにホラー映画にしているんじゃないかとか様々な憶測をしていて少々不安でした。
今回、公式からネタバレ厳禁とあるわけではないですが、提供されている情報が少ないため自分なりの配慮として映画館に行った時思い出と観ている時の自分の感情だけを話す日記風にします。
直接的な表現は避けますが察すれば物語の内容に触れてしまうこともあるのでまだ見ていない方で、さらに公式から提供されたあの画像一枚を見て楽しみにされている方はご注意ください。
公開2日目2023年7月15日世間は三連休初日、都内某大型映画館の朝一番の回にて。
映画の内容について情報がないのにも関わらず、ぞくぞくとお客さんが劇場に入ってきています。
私は1人で行きました。劇場に訪れている年代層は子供から高齢者まで。もちろん1人で観に来ている人も多いですが、カップルや家族連れなど映画鑑賞をイベントして楽しんでくれている層の姿が目立ちます。
スタジオジブリさんのネームバリューと信頼度すごいですね、毎年のように金曜ロードショーで上映しているのは意味があるのだろうかと思っていましたが各世代に響く作品が多いんですね。
(これでジブリファンや子どもがドン引きするような内容だったらどうなっちまうんだ……)
そんな不安がありながら、上映する頃には映画館で一番大きい劇場にはほぼ満員のお客さんが集まっていました。
そしてようやく上映開始、スタジオジブリの社名と共にとなりのトトロのいつものオープニングロゴが出てきました。これくらい私でも知ってます。
オープニングロゴから最初のカットが映し出されます。
(よかった~実写じゃなかった、アニメーションだ……って、あれ?またこの時代設定!?)
そんなファーストインプレッションから始まった映画。
(あの鳥みたいなやつ……どこ?)
しばらく話の筋を探りながらあの鳥を探していました。
予告もあらすじもジャンルすら公開されていないまったくの前知識なしの映画を観るのはたぶん初めてで、どう筋を捉えて良いのか、誰の視点で語られるのかを探り探り見ているのは新鮮でした。ただ序盤から疲れます。
(なんかどこかで見たことがるような、焼きまわし設定だ)
ようやくあらすじ的なものが見え始めた時、私は少しがっかりしました。
あれだけ情報を制限した映画なんだからもっと革新的な映画かと期待していたのに、割と見たことある物語の主人公の境遇で肩透かしを食らいます。
しかし、これで革新的過ぎたら攻めすぎとか詳しくないくせにジブリっぽくないとか言っていたような気もするんでめんどくさいですね、自分。
(あ、わかんないけどこれジブリっぽい)
(あの鳥っぽいのいた!)
そこから物語が進められるうえで必要なキャラクターが集まり始めますが、そのキャラクターはジブリ作品でおなじみの雰囲気を纏ったキャラクターがいて安心感がありつつも言い換えればまた既視感となっています。
(主人公……何してんの?)
主人公は存在しているのですが、主人公の心理や行動が読めるようで読ませてくれません。個人的には考え甲斐があって楽しいです。
そこから物語は起承転結の承に差し掛かります。
(急にジャンル変わった!?)
(鳥!鳥!鳥……?oh……)
物語は冒頭では予想できなかった展開へ転がり、雰囲気もかなりジブリっぽい世界観になります。
そして、あの鳥の正体が分かります、正体が分かった時は衝撃はなかなかでこれからの展開に少し期待が持てます。
ジブリっぽい世界観になり、ようやくここから本筋に向かって進むのかと私はだらけきった体勢を直しました。
しかし、中盤から終盤へと待ち受けていたのは……
(主人公の目的はあれだよな……だけど、なんで今こんなことしてんだ、てかここどこだよ……)
わからないことだらけ。
(あれ、あの鳥よりもよくわからない鳥いっぱい出てきた……)
どういう世界なんだと私は当惑しました、まるでインセプションを初見で観た時の夢の階層世界のような複雑さで、何か理解できるものはないかと探してみてもただ映像が流れているような感じです。
ここから体勢を何度も立て直そうとしている人、トイレ目的で立ち上がっていくお客さんが多く、皆の集中力が欠けてきているのが伺えます。
少しマイナスなことを話してしまいましたが1つ1つのシーンはジブリアニメーション特有の繊細さと温かみがあり、キャラの動きも大胆さがあって活き活きとしています。
話が説明不足すぎるというか物語自体がどこに進んだらいいのか分からない迷子状態になっているような不思議な映画です。
そうして起承転結の転になり結末へと差し掛かります。
承であったことを転で裏返して、結末へと再びもっていくスタンダードで私の好きなストーリーラインが展開されています。
さらにそんな時、劇場で起きたあることに気がつきました。
(そういえばトイレに行った人は多かったけど戻って来た人は少ないな)
あくまで体感で人数を数えていた訳ではありませんが、そんな不思議な事が起きました。まさか帰ったってことはないでしょうし、トイレが長い人が多いですね。もう終わっちゃいますよ。
そんなことはさておき映画に集中。
(またさっきの鳥だ……駿鳥好きすぎだろ)
宮崎駿って鳥が好きなんですね。
(なんかまだ分からない事だらけなのに世界観は広げていくなあ……)
終わりに差し掛かり謎が回収されるわけではなく、さらに多くの謎が増えてしまいました。もうここらへんで私は理解するのを諦め、映画に身を任せることにしました。
(よくわかんないけど、主人公実はすごく成長していた……!)
主人公はラストにとある選択をするのですが、その際いつのまにか凄い成長したなと感じられる雰囲気になりタイトル回収までしてしまいます!
(すごいすごい、この畳みかける感じ……映画だ!)
ラストのまとめ方はとても良かったです、話を細かく考えると本当によくわからないことだらけなんですが、主人公は大冒険をした結果、大切な物を見つけられたんだなとグッとくるような感情がこみ上げかけてきます。
みんな笑顔で大円満、とにかくよかった。
みんな笑顔ならそれでいいんじゃないか、これが原作『君たちはどう生きるか』を読んでアニメーションとして宮崎駿が描きたかったことなのだろうと自分に言い聞かせます。
エンディングは公開初日に情報解禁されましたが米津玄師さんが歌っており『シン・ウルトラマン』の『M78』のようなゆっくりとしていながらも壮大な音楽でゆったり余韻に浸れます。
スクリーンが真っ暗になり劇場が明るくなり、お客さんの第一声が気になる所です。しかし、いつもよりも静かに映画館を立ち去る人が多い印象です。
「声優豪華だったね」
そんな声が一番に聞こえました、その通りだと思います。
声優豪華です。
以上、私の『君たちはどう生きるか』の感想です。
正直言うと『わからーん』な部分が多く、宮崎駿監督自身も試写で「私自身もよく分からない」と言っていたので考察する気もありませんが、前情報なしでの映画鑑賞という体験は貴重でした。
宮崎駿が再びアニメ業界に降り立ち、話題を呼び起こすことで日本の、いや世界のアニメーションが次の世代やステージへと繋がることができる大きな意味のある作品になるでしょう。
そのため今は、話題の謎味のお菓子を食べたらそんなにおいしくなかった時のテンションによく似ています。
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