なおさなきゃ
たぶん、わたしはおかしいんだ
まわりと考え方も、好みも、なにもかも
だから、だから、
隠さなきゃ、
みんなと同じ格好して、
みんなと同じようにしゃべって、
みんなと同じように感じて、
"わたし"をみんなに近づけて、いたって"普通"な"ボク"でいて
ボクは特別なんかじゃない、異常なんだ
だから、あの時みんなはボクを叱ったんだ
"そんなものが好きなんておかしい"
"なんで悲しく思わないの、おかしいよ"
"君がこんなもの身に着けるなんて、ダメじゃないか"
ダメ、おかしい、変だ、ダメ、ダメ、変だ、気持ち悪い、おかしいよ、キモイ、おかしい、変、終わってる、変わってる、
そうやって怒られたくないから、私は、ボクをつくった
見た目通りの、
年相応の、
みんなと同じ、
"ボク"だ
怒られるようなダメダメなわたしは、
小さく、小さく、丸め込んで
奥に、奥に、しまい込んで
ボクで包み隠して、
でも、ダメダメなわたしは普通にそれすらできなくて、
一人のときに出てきてしまう
みんなのように普通を続けられない
ああ、なんてダメなんだろう
異常なわたしはどこかに消えて
おねがい おねがい
消えて、消えて、
だけど、
普通じゃない人と出会った
みんなはその人を、おかしい、きもい、イタい、って怒ってた
ボクもそう思った
でも、何故か、
わたしにはキラキラして見えた
だから、だから、
普通ならこんなことしないのに、
その人に話しかけちゃったんだ
まわりから今にも怒られそうな雰囲気を感じたが、何故かボクは、その人に尋ねた
『なんで、そんな普通じゃないの?』
その人はすぐに答えた
「普通じゃない?おもしろいことを言うね、キミは」
『えぇ?』
「普通ってなんだい?僕は"僕"らしく生きてるだけだよ」
『あなたらしく?でもみんな自分らしく生きているよ。ボクだって…』
「そうなのか?キミはなんだか、おかしな気がするよ」
えっ…
『おか、しい…?』
なんで、なんで、ボクは普通にしてるよね?何もおかしなことはしてないよね?ダメダメなわたしはもういないもんね?でも、なんで?なんで?
「おかしいとは少し違うね…なんというか、キミはなんだか隠してる気がするんだ」
『隠してる?なにを?』
「キミは自分らしく生きていると言った。だけどなんだか全て本心じゃないような、そんな気がするんだ」
なんで、なんで、わかったの?異常なことを直してる、なんでわかったの?
「キミはそれで苦しくないのかい?」
『え?』
「自分を隠して、苦しくないのかい?」
隠す?違う、ボクは普通になってるだけだよ
「普通ってそんなに大事?キミはキミらしく生きていいじゃないか」
『だ、だって、普通でいることはみんな普通で、その、普通じゃない、異常な人はみんなから怒られる、怒られるってことはダメなことでしょ、直さなきゃいけないとこでしょ、だから、普通でいることが正しいんだ、普通だったら、怒られないし、寂しくもないんだよ?』
「それは違うよ。普通でいる必要なんてない。異常なんかじゃない、キミという人間そのものなんだ。怒られるんじゃない、みんなだってそうやって仲間はずれが怖くって、自分は普通だって見せるために、その普通と違うものを攻撃しているだけだ。人はもともと、一人一人が違うんだ。同じなんてない。普通なんて言葉に縛られるな。大丈夫、キミがキミでいることを邪魔するような人がいても、気にしなければいい。僕だって、キミのちからになる。安心して、キミはキミでいいんだよ」
『ほんと…?ほんとにいいの?』
「ああ、いいんだ」
『異常でいいの?ダメダメでいいの?』
「異常なんかじゃない。ダメなんかじゃない。キミはキミだ」
「いいんだね?」
「ああ、もう息苦しく生きる必要なんてない」
いいんだ、いいんだ、わたしは"わたし"でいて、ほんとにいいんだ
だんだん涙があふれてくる
奥に、奥に、閉じ込めた、"わたし"が
だんだん、だんだん、大きくなっていく
もう、"ボク"なんて必要ないんだ
わたしでいていいんだ…!!!
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・
「あれ…?」
涙が頬を伝っていく
「わたしって、どんな人間だったっけ……?」