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学会に参加し始めた頃に抱いた小さな疑問

【個人の体験です】

大学院に入るまでは学会というのは優秀な学者や研究者が集まるところで、私のような一介の院生など相手にしてもらえないと思っていました。学会そのものに権威主義的な印象を持っていたのです。でも実際に参加してみるとそうでもないことがわかりました。もちろん権威を纏っているような人もいないわけではありません。でも多くの人は気軽に話をしてくれますし、いろいろなことを教えてくれます。

でも、わたしがそれまで過ごしてきた世界とはどこか違いました。「あれっ?」と思うこともありました。あくまでも私個人の印象ですがいくつか紹介したいと思います。

まず、発表者の中に原稿を読む人が意外と多いことに驚きました。学会にもよるのかもしれませんが原稿をそのまま棒読みする人がかなりいました。政治家の答弁のようでした。配布したレジュメをひたすら「朗読」し、参加者は原稿を目で追っているだけという場面をよく見ました。「すべてを読む時間がないので下線部だけ読みます」と前置きして始める人もいます。原稿を配布するのであればわざわざそれを読む必要などないのにと思いました。原稿に書かれていないことや補足点を伝えればよいと思いました。発表時間をすべて使って「朗読」されると私など途中で集中力が切れてしまいます。だから自分が発表するときは資料を手にしてはいますが、棒読みだけはしないように心がけています。

このことについてはある大学の先生が以下のような記事を書いておられました。

また、若い院生の素晴らしい発表に刺激を受ける一方で、大学教授の物足りない発表に戸惑うことがありました。明らかに準備不足で付け焼き刃的な印象を受けました。突っ込みどころもたくさんありそうなのですが、みんな遠慮して何も言いませんでした。

発表のあと質疑応答の時間があります。学会の「お作法」なのかもしれませんが、質問をされると発表者はたいてい「ご質問ありがとうございます」と言います。最初は「何でお礼を言うのだろう」と思いました。でも次第にわかってきました。質問されるということは発表をしっかり聞いてもらえたということです。興味を持ってくれたということでもあります。また、質問されたら発表者は答えなければなりません。きちんと答えられなければ勉強不足ということになります。研究の弱点や不足している点に気づくことができ、研究を発展させられます。そうしたことに対するお礼なのだと私は理解しました。

一方で、質問が何も出ずシーンとすることもあります。質問が出ないほどの完璧な発表は稀で、質問が出にくい内容だったり、興味を持つ人が少なかったりする場合のようです。質問が出ないほどのつまらない発表や議論に値しないような発表なのかもしれません。だから何となく気まずい空気が流れます。そんなときはたいてい司会者が「それでは私から質問を」と言って質問を投げかけます。司会者も大変だなと思いました。

私も学会で質問するには勇気が要りました。気の利いた質問をしたいと思うのですが未熟な私はなかなか質問ができません。的外れな質問ではないか、つまらない質問と思われるのではないかと余計な心配をしてしまいます。でも質問は大事だと思っています。

質疑応答はたいてい短時間です。少しでも多くの人が質問するために質問者は短くかいつまんで発言する必要があると思うのですが、中には自身の研究の話から始めて時間を独占する人がいます。複数の人が質問できるような配慮が必要だと思いました。

セッションの開始時に司会者が「質問の際にはご所属とお名前を」と言います。だから質問者は「〇〇(所属)の誰々です」と言って名乗ります。名前はともかく所属を言うのはなぜだろうと思いました。所属は大学や研究機関などですが、所属の中身がいまひとつはっきりしません。教員なのか院生なのか職員なのかわかりません。どこに所属しているかより、何をしているかの方が大事ではないのかと思ったりしました。さらに所属のない人や、複数の大学で非常勤を掛け持ちしている人はどう言えばいいのかなど些末なことに疑問を抱いていました。礼儀として、あとで連絡を取りやすくするためなどそれなりの理由があることがその後わかってきましたが。

質問者が「興味深いご発表ありがとうございました。とても勉強になりました」と社交辞令のように言うのをよく耳にします。発表者を労っているのでしょうが、みんなが同じことを繰り返す必要もないのにと思ってしまいます。やはり時間がもったいないです。

また、「不勉強なので教えていただきたいのですが」「〇〇については知識がありませんので質問させていただきます」と言いながら、およそ不勉強とは思えない質問であったり、突っ込んだ指摘をしたりすることがあります。「?」と思ったことのひとつです。

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