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女性が活躍できる社会は男性も活躍できる社会

大学教員の知人は共働きで3人の子どもを育てる女性です。自宅のある東京から長時間かけて他県の大学に電車通勤しています。民間企業に勤める夫の勤務は東京ですが、二人で話し合って彼女が遠距離通勤することに決めたと言います。

私は大学院で彼女と同じ研究室でした。社会人として進学した私とは親子ほど年が離れていますが、優秀な彼女からは多くのことを学びました。彼女が結婚するとき私にこう言いました。「この先も研究者として仕事を続けたいから子どもはあきらめる」と。そんな彼女に私は子どもを産み育てることを強く勧めました。私も2人の子どもを育てながら共働きで仕事をしてきました。その大変さはよくわかっています。同時に子どもを持つことの幸せも実感しています。ジェンダーを研究する彼女だからこそ夫婦で協力して子どもを育ててほしいと思いました。

3人の子どもはいずれも育休明けには保育園に入れず、西日本に住む高齢の実母がその都度上京して面倒を見ていました。末の子が2歳になるまでは3か所の保育園に預けていました。綱渡り状態の毎日で研究に集中するのが難しかったと彼女は言います。そして3人が小学生となった今も夫婦で家事と育児を分担しながら日々奮闘しています。

研究の世界はまだまだ男性中心です。女性がその業績を認められるのは男性の何倍も大変なことです。同じことをしていても女性だからという理由で目を向けられないことすらあります。3人の男の子を育てながら研究する彼女の苦労は並大抵のものではないと思います。雨が降る中、自転車の前後に子どもを乗せ合羽を着て走る彼女の姿を目にしたときは、無責任なことを言ってしまったのではないか思ったりしました。

彼女を見ていると政府が提唱する「女性が活躍する社会」の実現がほど遠いことを強く感じます。日本は世界の中でも「ジェンダーギャップ指数」の順位が驚くほど低いです。要因のひとつが、結婚した女性にとって働きやすい環境が整備されていないことが挙げられます。環境が一日も早く整備されることを切に願います。それは男性にとっても働きやすい環境のはずです。

それでも友人は困難を乗り越えながら仕事と家庭を両立させてきました。研究者としても活躍しています。男性に比べ、女性研究者は出産や育児の「壁」にぶつかる割合が大きく、業績をあげるのも難しいと言われます。現に研究をあきらめる女性も多くいますし、逆に出産をあきらめる女性もいます。友人はそのどちらもあきらめずに頑張っています。優秀な研究者であり、良き母親、良き妻である友人を私はこの先もずっと 応援していきます。そして、女性が活躍できる社会の実現を心から願っています。

3月8日は国連が定める「国際女性デー」です。

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