詩 【 疵の舐め合い 】
疵を舐められた
舐められたから疵を舐めかえしてやつた
疵は沁みるいつぽうで
あまり気持の良いものではなかつた
あいつもたぶん同じだつたろう
しばらく黙つていることにした
あいつもじつと話さない
するとまた疵を舐められた
けれども今度の疵の痛みは少しちがつた
相手の気持を解る分少しちがつたのだつた
おれも舐め返した
相手の気持が解る分ちがう舐め方で
あいつは笑つたよ
だからおれも笑いかえした
そうして
お互いにやにやと気味悪く笑いながら
疵を舐めあつているうち夜が明けた
明けたんだよ
20080210
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