非日常ラウンジ 海外一人旅アメリカ出発編
私は非日常が好きだ。
私がこれまでにしてきた旅の中で、最も記憶に残っているのはアメリカ、ロサンゼルス一人旅だ。
私の人生は映画で溢れていた。
幼い頃から両親の影響で多くの作品に出会い、中学生から映画館に通ってフライヤーを集めることに夢中になった。
高校生からは下校中、毎日のようにTSUTAYAに寄ってはタイトルと裏のあらすじを読むことにハマった。
そうしているうちに生まれた夢。
いつか、映画の聖地ハリウッドに行って世界一有名な映画館、チャイニーズシアターで映画を観る。
それを叶えるため、バイトをしてお金を貯めた。
そして、ようやく。
ある年の春。
羽田空港で、私は映画「インセプション」の曲「Time」をリピートしていた。
搭乗時間まであと15分。
緊張でお腹が痛かったのを覚えている。
これからはじまる旅に心躍らせている学生や、おそらく帰りの便であろう、やりたいことを達成して満足したような表情で時間を待つ外国の方を横目に、1人で落ち着かなかった。
時が来ると、航空券を挟んだパスポートを片手に列に並ぶ。
日本人のCAさんの笑顔に少しだけ勇気をもらい、しかしゲートを過ぎて機内に入り、席に着く頃には再び不安が襲ってきた。
次に地上に降りるのは9000キロ離れた見知らぬ土地、11時間後。
ワクワクするのはたしかだ。
しかしこれほどまでに不安を覚えるとは。
注意事項をまとめたビデオがはじまり、飛行機が動きはじめる。
大丈夫。私がこれまでずっとお世話になってきた世界、夢の街が待っているのだ。
そう考えると感慨深いものがあり、早くも涙腺が緩みはじめる。
イヤホンからは、映画「LIFE!」の「Dirty Paws」が流れる。
ラララー
ラララーラー
ウォルター・ミティに元気をもらう。
なんて素晴らしい映画なんだ。
椅子が激しく揺れ、窓がガタガタ暴れ、機内が轟音に包まれる。
あの頃の私よ。
今まで頑張ってきてよかったな。
ずっと心の支えにしてきた作品たちの故郷に向かっているぞ。
地面を擦る音が小さくなり、体が傾いた。
いざ、ハリウッドへ。
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