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どこにいるの

ある日、ひとり暗がりの中をたたずんでいた。誰もいない。ひんやりと冷たく、誰も声をかけない。僕はひとりだ。

ふと何かが聞こえてくる。食器のぶつかる音だろうか。金属質な音色が部屋にこだます。
僕は何かを忘れようとする。その瞬間だ。
この世のものとは思えない女の叫びが部屋中にこだます。発狂する女。僕は何が起こったのかわからないまま、ただうろたえ続ける。
助けて。僕は何もしてないよ。

恐怖と不安が入り乱れた感情は、その場所に、忘れ去られた記憶として留められている。抜け出したい。抜け出せない。どこに救いがあるのだろう。すぎゆく時の流れの中で、この断片だけがどこかに取り残されている。僕という人のことである。

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