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okanote
#7 平凡
角田光代 著 新潮文庫
皆さんは、「もうひとつの人生」があると思うだろうか。
私は、あの時こうしていたら、今どうなっているのか考えてしまうことがある。この短編集に出てくる6人の主人公たちも私と同じ。
6人皆に共通していることは、全員良い意味で平凡な人生を生きているということ。
人生は、一つ一つの小さな決断によって出来上がるものだと思う。
あの時、過去の自分が選択していたものが違ったら、今と全く同じ人生はないのだから。そう思うとなんだか不思議な気持ちになる。
だからこそ、あとから後悔しないようにその瞬間瞬間を大切に生きなくてはならない。全力で生きなくてはならないのだ。
月が笑う の主人公は、自分に原因のない離婚を言い渡される。理不尽で悔しかったろうな。私なら耐えられない。
また、ここでも共通点が。
別れた恋人が幸せに暮らすことを願いたいはずなのに、不幸になれと願ってしまう というくだりだ。
好きあっていたはずなのに、ゴールが変わってしまうとこうも変わってしまうものかと。
でもそれって、きっと自分の人生を本気で相手に預けていた証拠なんじゃないか と私は思った。
そのかつての恋人がいなければ、今の自分は確実に存在しないのだから。皮肉だけど、不幸になれではなくて心に余裕を持ちたい。そう思った。
私の場合、「不幸になれ」ではなくて、「私と一緒にいるときより別の女と幸せになったら許せない」こんな感情。自分が否定されてしまう気がして悲しいから、こんな器の小さいことを思ってしまうんだろうな。
共感できる部分がたくさんある作品で、読み応え、満足感も大きい。
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