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刑法#26 窃盗罪①

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窃盗罪概要


→個人的法益に関する罪である。
→判例は事実としての所持(占有)を保護法益とする。
 占有説が判例の立場であるが、学説には本権説というものもあり、所有権に基づき、保護法益を判断する。
 盗まれたものを取り返したという事例で、占有説にたてば盗人の占有を侵害したとして窃盗罪が成立しうるが、本権説にたてば取り返したことは肯定される。

【コラム 自救行為】
 違法性阻却事由に自救行為がある。これは条文に定めがないが、成立する可能性があり検討されうる。ただし、程度による。
 例えば盗まれた自転車がとめてある場所をたまたま見つけた場合、それを取り返すことはこの自救行為が成立する可能性がある。
 しかし、自分の土地に勝手に伸長建築された軒先を勝手に壊すことは、器物損壊にあたるという凡例がある。本来、物権的請求により解決されるべきである。

→なお、麻薬など違法な物でも窃盗罪は成立する。

窃盗と使用窃盗


→窃盗罪が成立するためには、不法領得の意思が必要である。
→不法領得は①権利者を排除し自分の所有とする意思②経済的用法に従い利用や処分する意思の2つの要素により成立する。
→自転車の短時間使用して元に戻す行為は①の要素がなく、単なる使用窃盗であり、不可罰である。しかし、自動車であれば高額なものであり、使用窃盗は認められない。
→機密情報のコピーはたとえ、原本を元にもどしたとしても、不法領得の意志が認められる。

重要書類を誰かを困らせる目的で隠す場合
→窃盗罪ではない。不法領得の意志がなく、構成要件を満たさない。文書等毀棄罪である。

不可罰的事後行為
→窃盗罪は状態犯である。すなわち、盗まれたという違法状態が、原則続くのである。この状態で盗品を壊したとしても器物損壊とは評価されず、窃盗一罪となるのみである。

窃盗罪と遺失物等横領


→遺失物等横領または占有離脱物横領ともいう。
→窃盗は占有状態にある物を領得する。
 遺失物等横領は占有を離脱した物を領得する。
→走行中の電車や営業中の商業施設など人の往来があるところでの占有離脱物を領得すれば遺失物等横領となるが、車庫に入った電車や閉店後の店、旅館などであれば、電鉄会社や店舗、宿泊施設の占有下となるため、窃盗となる。
→死人に占有は原則認められない。したがって、死人から物を盗めば、遺失物等横領となるが、殺人後に盗みの気持が沸いて行った場合は窃盗となる。
→誤って届けられた郵便物を領得した場合、遺失物等横領となる。この場合、発送者、配達人、本来の受取人の誰の占有下でもない。

演習問題

次の設問に○か×かで回答せよ。

①後で戻すつもりで、他人の自転車を短期間無断使用した場合、窃盗罪が成立する。

→✕ 使用窃盗であり、不可罰である。判例では窃盗罪の成立の主観的要件として不法領得の意思を要するとしている。

②後で戻すつもりで持ち出しの禁止された他人の機密資料を持ち出してコピーした場合、窃盗罪は成立する。

→○ 機密資料はコピーすればその価値を領得することができるため、不法領得の意思に欠けるところはない。

③窃盗犯は他人の家から花瓶を無断で持ち出し家に飾った。その後にその花瓶を壊した場合、窃盗罪と器物損壊罪の併合犯となる。

→✕ 違法行為は窃盗罪で評価されており、その後の器物損壊は不可罰的事後行為となる。

④校長に恨みを抱いていた教師が、紛失の責任を校長に負わせようとして学校の金庫から重要書類を持ち出して校舎の天井裏に隠す行為は窃盗罪を構成する。

→✕ 不法領得の意思を欠くため窃盗罪は成立しない。文書毀損罪が成立する。

⑤宿泊先の旅館で前日の宿泊客の置き忘れた財布を発見してこれを取得した場合、窃盗罪が成立する。

→○ 財布は前日の宿泊客からの占有からは離脱しているが、旅館主の管理下にあるため、占有離脱物横領ではなく窃盗となる。

⑥人を殺害した後に、はじめて財物窃取の意思を生じて被害者から財布を奪った場合、窃盗罪が成立する。

→○ 死者には占有がないことが原則であるが、殺人犯が殺害の直後に財物を窃取した事例ではなお被害者に占有があるとした判例がある。

⑦養殖業者のいけすから湖中に逃げ込んだ、明らかに天然のものとは外見が違う錦鯉を領得した場合、窃盗罪が成立する。

→✕ 占有離脱物横領罪が成立する。なお、猫のような飼い主のもとに帰る習性のある動物は他所にいても飼い主の占有を離れないとされる。

⑧水増し投票をする目的で投票用紙を持ち出した場合、経済的利益を得る目的がなくても、不法領得の意志が認められるので、窃盗罪が成立する。

→○ 財物は経済的価値以外、たとえば主観的価値や消極的価値をもつものも対象である。なお、電気は財物であると法定されている。

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