地獄のクリスマス

全ては私が悪いのである。
ネットで見かけたレシピを軽い気持ちで試した私が悪いのである。

嫁は大の納豆嫌いで、恐らく彼女のなかでは納豆は痴漢と同列かそれ以上の忌み嫌うべき存在にして、その扱いはウンコと同等と言っても過言ではない。

そんな納豆を私は惜しげもなく2パックも開け、更にはサバ缶と混ぜた挙句、チーズを乗せてトースターで豪快に焼いたものだから嫁の怒りが光速でMAXに到達したのだ。

その怒りを例えるなら、ローマ法王が土下座で許しを乞い、かの北の将軍様ですら裸足で逃げ出し、キリストでさえ左の頬を隠すように怯えるほどだ。
周囲を恐怖のどん底に叩き落すほどのその威容は、もはやラオウを凌がんとする勢いである。
このままいけばアラブ諸国の統一だって夢ではない。

その怒りに任せて発せられる罵詈雑言の集中砲火を、私は無抵抗に浴びた。
それはもうサンドバッグそのものであり、私はその一発一発がいちいち重たいパンチにひたすら耐えなければならなかったが、記憶があったのは5発目までであった。

子供の頃の思い出が頭をよぎった。

罵詈雑言の一言一句は筆舌に尽くし難く、恐らくガンジーですらドン引きした末に「ちょっともうやめなよ」と止めに入るほどの仕上がりである。
一体何を言われたのか、それを詳らかに記そうとしたのだが、途中で涙で前が見えなくなった為断念したことを皆様には正直にお伝えしておく。

今宵はクリスマス。
子供たちの笑顔で溢れる夜に、私は独り、死んだ魚のような目で遠くを見ている。

メリークリスマス。

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某SNSにアップしようと思ったがカミさんに見つかると怖いのでボツにした文章。結構最近の話。