思い出が置き去りにされていく(有料日記)
「えっ、磯っこ、閉店したの!?」
お風呂がわくまでとソファでぐうたらしていた夕食後。いとこのSNSを目にして、思わず叫んだ。
「なんだ、どうしたんだよ」
ダイニングテーブルでぼんやりスマホいじりをする夫が、とりあえず形だけという抑揚のなさで問う。
「青森のばあちゃん家の近くに食堂があったでしょ、磯っこ。閉店したんだって」
わたしの母は青森県のまさかりの上部分出身で、子供の頃の夏休みには毎年帰省したものだ。年の近いいとこたち、おおらかさが海のような祖母、頑固ながらにお茶目ないたずらが好きな祖父。全校生徒が千人程のマンモス小学校に通うわたしと妹には、二学年ずつで教室を共有し、全校生徒がみな親友のいとこの小学校は新鮮だった。二十人ちょっとの帰省期間中限定の友人たちは、わたしと妹を快く受け入れてくれて、小学校のふもとの神社で何度遊んだことか。
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