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大塚英志 原作『東京オルタナティヴ』が歴史オタク大歓喜モノだった

ヤングエースで連載中の『東京オルタナティヴ』(原作:大塚英志 作画:西川聖蘭)が久々にグッとくる作品だった。

原作者は『多重人格探偵サイコ』で知られる大塚英志氏。
大塚さんが原作なら間違いなくおもしろいだろうと思ったら、案の定おもしろかった。案の定おもしろかったけど、8割くらい理解できなかった。

誰か情報を整理して! とググっても、ろくな感想が出てこない。
なので、読者を増やして考察してもらおう!! と他力本願なやり方をすることに決めた。

ここから43話まで読めるので、ぜひ読んでほしい。

「ミステリー」「タイムリープ」「歴史修正」「刑事モノ」

これらが好きな人には刺さる作品。
TBS系の刑事ドラマ『ケイゾク』や『SPEC』が好きだった人にもオススメできる。

だがしかし、「一般ウケは絶対しないだろうなァ」と思うくらい難読なマンガでもあった。
ネタバレはなるべく避けつつ、つらつらと感想を書いていこう。

『東京オルタナティヴ』あらすじ

1945年、東京に原爆が落ちた。1989年、昭和は終わらなかった。何者かに修正された歴史を正すことはできるのか?そして時を行き来する少年・トキオが守ろうとしているものとは一体――?本格“時間SF”ストーリー、ついに開幕!(ヤングエース公式より引用)

公式のあらすじだと何のこっちゃなので、詳しいあらすじをば。

舞台は1989年1月8日の東京。昭和天皇が「死ななかった」世界。
警視庁広報課資料室調査係の臨時職員として採用された日和見迷子(ひよりみめいこ)は、出勤初日の通勤中に不可解な出来事に遭遇する。

迷子の目の前で、同じ顔をした男二人が握手をしたのだ。

え? 双子? と戸惑う迷子。
次の瞬間、時が止まり、世界が静止する。
時の停止になぜか巻き込まれなかった迷子の前に、謎の少年トキオが現れる。
トキオは「オルタナティヴ」という言葉を残し去っていった。

一方同じ頃、警視庁捜査一課の刑事・笹山徹は、「被疑者と同じ顔を持つ人物」を追っていた。
A地点で事件を起こしたはずの人物が、同時刻にB地点にも存在している。
こうしたドッペルゲンガー事件は敗戦後から増えているという。

広報課資料室調査係へと突然左遷された笹山は、新しい上司から「この世界の歴史を修正している存在」について語られる。

迷子とともに調査することになった笹山。
ふたりは次第に、時間修正のキーワードとなった「東京原爆」「オルタナティヴ」へと導かれていく――……。

一回読んだだけでは理解できないマンガ

あらすじを上手くまとめようとしたものの、難解すぎてコレが精いっぱいデシタ。

どうも、この世界には自分と同じ顔をもつドッペルゲンガー「オルタナティヴ」が存在するらしい。
本人とオルタナティヴが握手すると爆発が起こり、半径数メートルが消し炭になる。
冒頭から登場する謎の少年トキオは、このオルタナティヴの干渉を阻止している存在っぽい。

オルタナティヴの誕生には「東京原爆」が関わっている。
本当は起こっていた3つ目の原爆。
それが何者かの力により、「無かったこと」とされた。
その影響で、あちこちにホットスポットと呼ばれる時間の歪みが存在するように。

ここまで書いて、好きな人は好きな作品だよなァとつくづく思う。
シュタインズゲートとか好きな人は刺さるでしょ?

で、この作品が何で一般ウケしないと思ったかって、とにかく絵面が分かりづらいんですよ。
昨今のマンガのように丁寧な説明なんてしてくれないし、パズルのピースだけ渡されて「自分で組み立ててね」って言われている感じ。

キャラクターたちが存在する時間軸すら前のページと次のページで変わるし、とにかく全体像が見えない。

その分、あれやこれやと考察するのが大好きなオタク向けではあるんですが(だから刺さったのもある)。

『多重人格探偵サイコ』も中盤以降から話が分かりにくくなっていたけど、あれの比じゃない分かりにくさ。
意図的にそう描いているのは分かるものの、読む人を確実に選ぶ作品だと思う。
話のギミックがめちゃくちゃ面白い分、ちょっと損してるなって印象。

歴史オタにはたまらん

話のギミックが面白いと言いましたが、歴史オタや昭和史オタには垂涎ものです。

実際の昭和史をベースに、「三億円事件」などの実在の事件や、「グリコ森永事件」「宮崎勤事件」を彷彿させる事件も出てくる。

御巣鷹山の日航機墜落事件で、当時ささやかれていた「自衛隊が生存者を殺した」ってエピソードも盛り込んでくる。

「終わらない昭和」っていうのもモチーフとして好きな人は大好きだろうし。

昭和天皇崩御は1989年1月7日でしたが、『東京オルタナティヴ』では1月8日を過ぎても天皇は存命のまま。
TVのテロップには日々「天皇の容態」が流れ続ける。

で、主人公のふたりは上司から「あったかもしれない世界線」での「昭和天皇崩御」を報じる新聞を見せられる。
主人公たちがいるのは修正された時間軸かも? って第1話で示唆されているんですよね。

シュレディンガーの猫も出しちゃう

アラサーの中二病オタクが大好きな「シュレディンガーの猫」もキーワードとして大活躍します。

観測されるまで事象は定まらない。
その観測者として機能しているのが、主人公のひとりである迷子ちゃん。

シュレディンガーの猫が出てきた瞬間に「いやだから盛り込みすぎだろ!」って思ったのはナイショ。
風呂敷を壮大に広げすぎて収拾つかなくなるのはサイコの時から変わっていない……。

このシュレディンガー要素をぶっこんできたせいで、分かりにくかった話がさらにこんがらがっていきます。
ちゃんとした考察を書くためには5回くらい読まないとダメかもしれない。

笹山徹という概念

主人公のひとり「笹山徹」を始め、『多重人格探偵サイコ』のキャラネームがいくつか出てきます。
雨宮とか。鬼干潟とか。

雨宮に関しては大塚先生が「サイコの雨宮とは関係ない」と明言していますが。

「笹山徹」は大塚先生の他作品にもよく出てくるキャラクター。
それぞれの世界に「笹山徹」がいて、パラレルワールドの同一人物と見ることができる。

大塚先生の作品をすべて読んでいるわけではないんですが、「笹山徹」ってもはや概念であり「世界の観測者」でもある気がするんですよね。

巷で笹山徹サーガと言われている作品は『探偵儀式』以外は一読していますが、どの作品でも笹山は観測者の位置にいる。
どの世界でも主人公にはなり得なくて、誰かに置いていかれる存在、それが笹山。
でも今回は笹山も主人公なわけですが、どっちかと言えば活躍しているのは迷子ちゃんで、笹山はやっぱり脇役の観測者って雰囲気があります。

迷子ちゃんが猫の生死を決定する観測者なら、笹山は迷子ちゃんの決定も含めて全体を見守る観測者。

ああ、こう考えると上手くバランスが取れている気がする。

終わらない夏休みを過ごしていた笹山が、今度は終わらない昭和を過ごすわけか。

『東京オルタナティヴ』を誰か考察してくれ

大塚ファンで大塚作品を読み込んでいる人の考察を見たいんですが、びっくりするほど出てこない。
探し方が甘いのか、マイナー作品すぎるのか、『東京オルタナティヴ 考察』でググっても出てこない。

とりあえず現時点で理解できているものを整理してみようと思ったけど、頭がショートしそうだったので止めておきます。

誰か整理して考察書いてほしい。切実に。

あと5回くらい読み込めたら考察書くかもしれない。


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