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【ミラノ風ドリアが300円!??】たった1円の値上げを行ったサイゼリヤの戦略を独自解説!

皆さんこんにちは。リバイバルブックスの近藤彗です。

あれは今年の夏くらいだったでしょうか。サイゼリヤが「1円値上げ」を実施するというニュースが出たのは。

もう私はびっくりしたわけです。「あの【安い・早い・美味い】のサイゼリヤが値上げするってどういうことだ!??」って。しかも1円だけ。

思い返せば中学時代、クラスの打ち上げはいつも近くのサイゼリヤ。

高校時代、テスト期間に友達と向かうのはいつも美味しいサイゼリヤ。

大学に入り、何かと立ち寄るサイゼリヤ。いつも頼むのはミラノ風ドリア299円。

そう、私にとってミラノ風ドリアと言ったら299円。そういうものだったのです。それが300円になると。


こ~れは面白い動きだぞ!!?

ということで今回は、

上記「サイゼリヤニュース」の目的やそこから推測できる戦略を

経営学部の4年生・中小企業診断士合格者の目線から解説しようと思います。

この記事は特に経営学部の大学1年生向けに執筆しています。こういうニュースを見た時に、学部での学習を活かしてここまで想像できると良いね!という指針を提供することが今回の趣旨です。

途中には《用語Check!》のコーナーも設けていますので、新しい用語が出てきても大丈夫!経営学部以外の方も気楽にご覧ください!


----------‐‐‐↓↓↓初めに確認↓↓↓‐‐‐‐‐‐‐‐‐---

※「サイゼリヤニュース」ざっくり言うと…

・サイゼリヤは、全約140品のメニューの大半を1円値上げする

・例えば、売れ筋の「ミラノ風ドリア」や「ペペロンチーノ」は従来の299円から300円に改定

※元記事にはその他の内容も含まれていますが、今回はこの内容のみを扱います。

※以下「サイゼリヤニュース」を「1円値上げ」と表記します。

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筆者プロフィール

◇近藤彗(21)大学4年生

◇大学1年次から中小企業診断士の学習を始め、3年次に2019年度中小企業診断士試験に最年少合格

◇大学2年次に「リバイバルブックス」を立ち上げ、先日代表を退任

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目次

-Ⅰ.そもそも何で300円じゃなかった?~299円の理由~

-Ⅱ.「1円値上げ」の目的~ニュースリリースより~

-Ⅲ.【考察】「1円値上げ」は構造改革の一環!?キーワードは<利益構造改革>

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Ⅰ.そもそも何で300円じゃなかった?~299円の理由~

皆さん突然ですが、ジャパネットたかたの高田社長が言いそうなこと、イメージできますか??



(かん高い声で)にまん⤴きゅうせんはっぴゃくえ~ん⤴⤴!!!!!

こんなイメージ、出てきましたかね?(笑)

実際、ジャパネットたかたの価格設定ってこんな感じ。↓↓↓

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(出典:ジャパネットたかたHP(参照2020/11/5))

29,800円

とか

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(出典:ジャパネットたかたHP(参照2020/11/5))

9,980円

とか

ジャパネットたかたの価格設定って全部こんな感じです。

ここに従来ミラノ風ドリアが299円だった理由が隠れています。


よくよく振り返ってみると、読者の皆さんも、世の中には「29,800円」「3,980円」「299円」…こんな価格が溢れていることに気が付くと思います。マーケティングの分野では、このような価格のことを端数価格と呼んでいます

さあ、1個目の《用語Check!》です。

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この端数価格ですが、一般的に9や8をともなうことが多いとされています。4,000円であっても3,980円であっても実際の価格差は20円でしかありませんが、消費者に与える心理的な印象は4,000円台であるか3,000円台であるかによって大きく違ってくることがわかるでしょう。これによって購買意欲をあおるのです。

これが従来ミラノ風ドリアが299円だった理由です。つまり、サイゼリヤは、299円という端数価格をあえて採用することによって、消費者が感じる心理的なハードルを低下させ、購買意欲をあおり、(300円の場合と比較して)より多くの販売量を確保しようとしていたわけです。

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Ⅱ.「1円値上げ」の目的~ニュースリリースより~

前章では、従来ミラノ風ドリアが299円だった理由を確認しました。300円ではなくわざわざ299円という価格設定にしている理由は、「販売量の確保」という観点から見て一定の合理性を持つからでした。

それではなぜ、今回このような合理性を持つ価格設定を変更することになったのでしょうか?その目的を、ニュースリリースを参照しながら整理してみましょう。

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(出典:株式会社サイゼリヤニュースリリース「7月1日グランドメニュー改定」(参照2020/11/5)※黄線部は筆者加筆)

ニュースリリースを見ると、「新しい生活様式」「接触機会を減らす」「キャッシュレス決済」等のキーワードが散りばめられているのに気が付きます。コロナ禍における「新しい生活様式」が今回の重要なテーマになっていることが確認できるでしょう。

従来の299円、399円、599円…という価格設定では会計の際にはどうしてもお釣りが発生してしまいます。また、これによる個別会計の要望すらも増えてしまうでしょう。

「これではいかん!!!」というのが今回の「1円値上げ」の趣旨のようです。

***価格の末尾を00円または50円に統一することにより、極力お釣りの発生を防ぐ。これにより顧客と従業員の接触機会を減らし、コロナ禍への対応とする。***

というわけです。

したがって、「1円値上げ」の目的は、お釣りの受け渡しによる接触機会を減らすことであると言えるでしょう。

※「1円値上げ」は厳密には値上げ ex)299円→300円 の商品だけでなく、値下げ ex)169円→150円 の商品も含まれていることには注意が必要です。ミラノ風ドリアをはじめ、大半の商品は1円値上げになりましたが、一方でライスは169円から150円へ、ランチドリンクバーは110円から100円へ大きく値下げされました。

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Ⅲ.【考察】「1円値上げ」は構造改革の一環!?キーワードは<利益体質改善>

前章では、ニュースリリースを参照しながら「1円値上げ」の目的を整理しました。「1円値上げ」の目的は、お釣りの受け渡しによる接触機会を減らすことでした。コロナ禍における「新しい生活様式」が重要なテーマになっていたことを思い出してください。


しかし、

「1円値上げ」の目的は本当にこれだけだったのでしょうか?

単に接触機会を減らして感染防止を図る

この一点のみを意図したものだったのでしょうか?


私は、「1円値上げ」は単なる感染防止策ではなくあくまでサイゼリヤの【利益体質改善】という戦略の一環だったと考えています。


最後は、これまで取り上げてきた「1円値上げ」をもとに、現在のサイゼリヤの戦略を一緒に考察していきましょう。


【考察①】「1円値上げ」はこう考えられる!コスト面への効果

前章までで、「1円値上げ」はお釣りの受け渡しによる接触機会を減らす効果を持つことを何度も確認してきました。ここで大事なのは、顧客と従業員の接触機会が減少することは、すなわち業務の効率化に結び付くということです。一般的に、このような業務効率化は企業のコスト削減に直結するとされますから、「1円値上げ」はコスト削減の効果があるのではないかと考えられます。

例えばアルバイトの人数を減らすことができるかもしれないというのが良い例だと思います。

飲食店でアルバイトをしている友人に聞きましたが、飲食店は事前にお札等を両替して棒金(ex)1円玉50枚1セット)をレジに用意しておくみたいです。この手間が非常に大きいようです。これも省けることになるでしょう。

値上げなのにコスト削減効果、面白いですね。

実際、「1円値上げ」実施後に行われたインタビューでは、堀埜一成(ほりのいっせい)社長はこのように語っています。

会計にかかる総時間も30%減少した。(中略)レジに来る前にグループでまとめてくれることも多くなった。価格改定で個別会計は25%減少した。(2020/08/05 5:10 東洋経済オンライン)

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【考察②】「1円値上げ」はこう考えられる!売上面への効果

「1円値上げ」は売上高の規定要因にも影響を及ぼすと考えられます。

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特に影響を及ぼすと考えられるのが、回転率です。

先ほど「1円値上げ」により会計時間が短くなるというお話を紹介しましたが、これは次の顧客の待ち時間が減少する(=次の顧客を素早く席へ案内できる)ことも意味します。このサイクルが早まるというわけです。

限られた席数に次々顧客を案内できれば、それだけ売上高が増加するのだと考えられます。

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【考察③】結論:「1円値上げ」は<利益体質改善>の一端だった!??

以上考察①・②を踏まえると、接触機会を減らすことに主眼が置かれているように見えた「1円値上げ」は、コスト削減効果売上向上効果を見込むことができる取り組みだということが分かります。

利益は収益(≒売上)-費用(コスト)から求められますから、ここまで考察を進めると、この両面に効果が期待できる「1円値上げ」の取り組みは、実は利益体質の改善を意図したものであったのではないかと考えられるのです。

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まとめ

考察①〜③までで見てきた通り、「1円値上げ」は単なる感染防止策ではなくあくまでサイゼリヤの【利益体質改善】という戦略の一環だったと考えられます。


まとめとして、最後に今回進めてきた考察の確からしさを確認しておきましょう。

題材は、堀埜一成(ほりのいっせい)社長が話していた興味深い話とサイゼリヤが出している2020年8月期の決算説明会資料です。

サイゼリヤの損益分岐点比率は85%超だ。席数8割でも利益が出る構造に作り替えないといけない                   (2020/06/02 18:00 日経速報ニュースアーカイブ)

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(出典:株式会社サイゼリヤIRニュース「2020年8月期 決算説明会資料」(参照2020/11/5)※黄線部は筆者加筆)


聞き慣れない用語が出てきましたので、先に「損益分岐点比率」や「席数8割」の持つ意味について確認しておきます。

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《用語Check!》と重複してしまいますが、損益分岐点比率は、低ければ低いほど少ない売上高で利益を得られることを意味します。この点サイゼリヤの損益分岐点比率は85%ということですから、大きな売上高を獲得しなければ利益を得ることができないことになります。加えて、今回の新型コロナウイルスの影響等で売上高が落ち込んだ場合、すぐに赤字に転落してしまうことにもなります。

「席数8割でも利益が出る構造に」という言葉や「利益体質の改善」という言葉もありましたが、実際にサイゼリヤは売上高の確保が難しい中でも利益が出るように、利益構造の改革に舵を切っていたということです。

今回進めてきた考察の確からしさが確認できたと思います。



多くの場合、1つのニュース・情報に出会った時、そのままの情報を鵜呑みにしがちです。しかし、大学で学ぶような知識をもとに自分なりに考察を進めてみると、本当の理由や背景にある意図に辿り着けたりします。

今回であれば、「1円値上げ」のニュースから考察した<利益体質改善>は後に出された「決算説明会資料」から見ても確からしいものでした。

冒頭に

この記事は特に経営学部の大学1年生向けに執筆しています。こういうニュースを見た時に、学部での学習を活かしてここまで想像できると良いね!という指針を提供することが今回の趣旨です。

と書きました。

今回の記事が、皆さんの大学へのモチベーションになったとしたら、非常に嬉しく思います。


リバイバルブックスでは毎週金曜日に記事を投稿しています。今回初めてご覧になった方は、是非下の記事にもアクセスしてみてください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

また来週お会いしましょう!

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