ライトノベル第二弾序章(原作)

 Reunionが結成されて一年。この一年間、主に対バンイベントに参加し、Reunionの知名度を広めたり、他バンドやライブハウスとの交流、情報交換、などをしていた。だが、いつまでも対バンイベントに出ているわけにもいかない、そう詩音は考えていた。どのバンドも対バンから、主催ライブ、ワンマンライブと活動の幅を広げ、将来、全国ツアーやホール、ドームでのライブを成し遂げることを夢見ている。Reunionももちろん、他のバンドと同じように全国ツアーやホール、ドームでのワンマンライブに憧れているのだろう。かつての詩音はとにかく一人でも頂点を目指す、そういった気持ちだった。しかし、Reunionとなってからは、仲間の力があってこそ上を目指せる、そう考えられるようになっていた。
 Reunionはこの一年で確実にバンドとしての力をつけた。そろそろ次のステップに進むべきであろう。Reunionでいつか必ず大きな舞台に・・・。今となってはメジャー、メジャーなどとは言わないが、詩音は奏、律、美琴という大切な仲間とともに常に挑戦していたいし、夢を見ていたいと感じている。それが、かつて別れていった仲間たちに対する誠意でもある、と自分勝手だと思うが、詩音はそう思っているのだ。

 いつものようにスタジオでリハーサルが終わる。
「いや〜、今日もいいリハーサルだったな〜!」
 律が言うと
「ステージでも暑苦しいのに、スタジオという狭い空間であんな暑苦しいステージングするなよ・・・。」
 相変わらず正反対な奏は律に対してツッコむ。美琴はどうやら新しいシンバルを購入したようで、まるで子猫を撫でるかのように扱って片付けている。そんな中、少し真剣な顔をした詩音は
「ちょっといいか、みんな。この後ロビーで少し話がある。」
「なんだなんだ〜?なんかやらかしたのか〜?」
 とおちょくる律だったが、真剣な詩音の顔を見て思わず口を手で抑えた。そして三人はいつもと違う詩音の雰囲気からなにか悟ったように、素早く片付けを済ませ、スタジオを後にした。挑戦し続けたい気持ちは、奏も律も美琴もきっと一緒だけれども、自分の口からみんなに向けて伝えること、またそれを実現するためにやらなければならないことを提案しなければ、と詩音は考えていた。そんな気持ちで三人がスタジオを出た後、詩音もまたロビーに向かった。

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