ライトノベル第四章七話【自分と向き合う時】

 俺は視界から三人が消えるまで、その場に立ち尽くし見送った。あたり前になっていたことが、突然一人になり取り残されることの恐怖がヒタヒタと近づいてくる。
「参ったな・・・。」
 俺は独り呟いた。いつかは突きつけられるだろうと予感はあったが、それに気づかないようにしていた。奏に甘え過ぎていた。律にも美琴にも。彼らがサポートでいいと言ってくれることに。
 だが、律が本当にバンドをやってるみたいだと言った時、彼なりにサポートを越えて俺に歩み寄ったのだろうか。他の二人も言葉には出さなかったが、日々歩み寄り続けてくれていたのかもしれない。それを俺は・・・。今となっては振り返っても遅い。しかも俺にはその時それを受け入れる覚悟がなかっただろう。
「ったく、こうしていてもしょうがないだろ、俺。」
 自身に向けハッパをかけ、俺は重い足を動かした。まるで鉄の玉を引きずって歩いているようだ。実際、彼らと別れてから自宅に戻るまでのことはよく覚えていない。体が帰路を覚え、無意識に足が家に帰ろうと動いてくれたといったところだ。
 誰もいない暗い部屋はまるで、俺の心そのもののようだ。手探りで明かりをつけ、ベッドに倒れ込む。帰り際、三人も思いつめた表情をしていた気がする。普段は柔軟に対処する奏も思うことがあるのだろう。
 ただ気がかりなのは美琴だ。今度のことで、また以前の美琴に逆戻りなんてことはないだろうか。奏なら、そのあたりのフォローもしてくれていると思いたい。
 ・・・で、本題は俺自身のことだ。
 どうしたいか・・・がわかっていればこんなことにはなっていなかった。

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