ライトノベル第四章十一話【Reunion初ライブ】

 ライブ当日。その日は朝から意外にも落ち着いていた。いつもならなにかしら気負ったような感覚があった。失敗はできない、絶対に成功する。意気込みのような感情だけが、やたらとあったような気がしたが、今はない。なにより、楽しみたいという気持ちが強い。
 それぞれが指定した時間に「HEAVEN」に集まり、バンド単位で軽くリハーサルをする。その後、照明の確認や舞台装置の最終確認などを終えると、用意された楽屋で待機となる。ライブハウスのようなところであまり舞台装置を設置するバンドは少ないが、スモークなどの演出を活用するバンドは少なからずいる。

「お客さんの入り、今日も凄いですね〜。」
 外の様子を見に行った美琴が戻るなり、そう声高らかに言う。かなり興奮していた。
「俺たちReunion以外は、それなりの知名度があるからな。」
 奏は演奏の順番の打診をした際、ほかのバンドのことを少し調べたらしい。特にトリのバンドには多くの固定ファンがいるらしい。入り待ちをしていたファンも結構いた。
「客のノリもいいぜ!」
 一番目のバンドを見てきた律が言う。
「なんか、急に緊張してきました〜。」
「いつも通りだ、美琴。」
 俺はこの時でさえ不思議なほど冷静でいることができている。
「もちろんです、詩音さん。」
 美琴のいう緊張も、いい意味での緊張なのだろう。緊張といいながらも、返す笑みはひきつってはいない。そしてReunion初ライブのために衣装製作もしていた。黒を基調とした衣装で、各々イメージを出し合って決めたものだ。
「そろそろ舞台袖で待機しようか。」
 前のバンドのステージが中盤にさしかかったところで、俺たちReunionは楽屋を出ようとしたが、律がみんなを呼び止めた。
「ちょっと待て! Reunionの初ライブなんだ、円陣組もうぜ!」
 全員納得したのか、円陣を組んだ。
「Reunionを立ち上げたのは詩音だ。掛け声よろしく〜。」
 と奏が言う。
 俺はやれやれ・・・と思いながらも掛け声を発した。
「俺たちは互いを信じあって、音楽を楽しんでいる。それを今日会場に来ている人たちに思いっきり伝えよう。いくぞ!」
「おーっ!」 
 時間通りに前のバンドが終わり、セット交換が行われている隅で奏と律が最後のセッティングをはじめる。美琴が細かいチューニングなどを確認し終えると、セット交換も終わる。
 一旦舞台袖に戻り、オープニングSEが流れ、美琴、律、奏、俺の順に登場すると歓声が聞こえた。

 いよいよ俺たちReunionの初ライブの幕開けだ。

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