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プロだけが知っている 小説の書き方

予め言っておくけれども、現時点で小説家になりたいわけじゃない。小説は好きだけど、自分でそれらしきものを一文字も書いたことはないし、本気でなれるとも思っていない。それでも何となくタイトルに惹かれて買ってしまった。文章術みたいなものが知りたかっただけだ、たぶん(深層心理では書きたいと思っているのかもしれない)。

そういえば以前にも三浦しをんさんの小説の書き方講座なる本を買っている。あれはたしかに面白かったが、以下の感想ではなかなか尖ったことを書いている。レビューに対する自分なりの反抗?だった気がするけど、今読み返すと、そこまで書かなくていいんじゃないかとも思う。

さて、前置きが長くなってしまったが、今回の本題である。本書には、きわめて実用的な内容が載っている。今回はkindleで購入したのだが、実はその前に本屋で探した。だが、見つからなかった。小説コーナー、実用書コーナー、エッセイコーナーと探したのが、どこにもなかった。店員さんに聞けばいいじゃんと思うが、聞くと絶対にその場で買わなければならない気がして、聞けなかったのである。で、結局、踏ん切りがついたタイミングでkindle(Amazon)を利用したというわけだ。

実用書なので、今、まさに小説を書くのに困っているんだ、誰か助けてくれ!という人にはもってこいの本だと思う。"プロだけが知っている"というだけあって、ダメな書き方はこんな感じ、プロならこう書く、というように対比がなされている点がよい。これならば、あぁ、こういう書き方が良くないんだねと一目でわかる。とても親切な構成だと思う。

あまり内容まで触れてしまうと営業妨害になりかねないので、ちょっとだけ書くが、要するにくどくど説明してはいけない、ということのようだ。小説は心理を書くものではなく、あくまで行動、心理が人間の五感に浮き出てくる部分を描写する作業ということだそうだ。直接的に書いてはいけない、そう聞くと俳句とか短歌とかを思い浮かべてしまうのだが、小説もそうであるという。

それが小説の醍醐味であることは間違いなさそうだが、この点を読んで頭に止まることがあった。それは、理系の文章(技術文章)の書き方とは相容れないのではないか…ということだ。技術文章は、とにかくわかりやすく書く。特許は殊、そうであるが、同じレベルの技術を所有する人間(同業者)が見て明らかにわかるように書くというのが鉄則である。だから、一つひとつの文章が平滑になるように努めなければならない。もちろん専門用語が入ってくるので一概に平滑にはならないかもしれないが、それでも何が何を指し示すのかを明確にせねばならない。

小説の描写は(語弊があるかもしれないが)一見、そうだとわからない点が美しいとされる。こういう言い回しができる人はホントすごいなと思いつつ、普段の会話や文章でこんな表現は使わないよなとも思う。つまり、ある種の特殊技術なのでは?とさえ思ってしまう。もし、理系の人間が小説を書こうとしたら、全然違う頭の使いかたをせねばならない。そういうことができる人がいたら…、本当に天才ではないかと思う。たぶん、世の中に一定数いると思うが、思いつく筆頭はガリレオシリーズでおなじみの東野圭吾さんだ。

キャラクター設定の仕方などは緻密な作業だなと思う一方で、魅力的なキャラクターを生み出す小説家や漫画家の凄さを改めて知ることになった。文章をより良いものにするために、推敲のことに触れていて、その点は大いに共感できた。良いものを作り上げるための最後の関門は、小説でも技術的な文章でもあまり変わらないのだなと思った。

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