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勝ち続ける組織の作り方

青森山田高校サッカー部を選手権2度の優勝に導いた黒田監督の著書。25歳から同校で指揮を執る黒田監督の考えが随所に記されている。

本書で面白いと思ったところは、黒田監督が名付けた「高体連現象」と呼ばれる項目である。高校生が所属するチームには大きく分けて2つあり「高体連」と「Jユース」である。簡単にいえば、高体連は高校の部活動、JユースはJリーグの下部組織である。Jユースの入団テストはそれなりに厳しいもので、Jrユースからの昇格組と全国からスカウトされたトップクラスの技術や身体能力を持った子で構成される、いわばエリート集団なのである。

U-18までの育成世代で日本代表に選ばれる選手のほとんどはJユース所属の選手たちだそうだ。しかし、これが年代が上がってくると、高体連出身選手の割合が増え、ついには逆転してしまうらしい。たとえば、2010年の南アフリカW杯の日本代表に選出された選手は、23人中なんと19人が高体連出身だった。2014年のブラジルW杯ではその12人/23人と、割合は減少したが、海外組の多くは高校サッカーの出身だったそうだ。このように、若い世代の日本代表はJユース出身選手ばかりなのに、A代表になると高体連出身の選手が多くなる。これを「高体連現象」と呼んでいるのである。

選手の将来を見据えた育成とは、できることの追求よりも、できないことの克服を教えていくことが最も重要だと思っている。なぜなら、できないことを減らすことは、できることを増やすということだからである。

その前に柴崎岳選手の例が出てくる。彼は日本代表のボランチとして現在も活躍しているが、青森山田高校在学中、自らの弱点を克服する取り組みをどん欲に取り組んだという。強みだけではいつか限界を迎えるが、弱みを克服することで常に成長できることになる。自分で弱点を発見し、自分で改善できる。そんな努力ができる選手でないと日本のトップクラスになれないということだ。

サッカーがうまくなるためにはサッカー以外の部分を大事にしなければならないと繰り返し説いている。例え話はサッカーのことになっているが、本質的にはサッカーでなくても通用するものだ。強さを継続できる高校(チーム)は人間教育がしっかりしている。逆に言うと、人間教育を疎かにしていてはトップにはなれないことを教えてくれる。普段の生活から改めることがたくさんあるのだなと思わせる一冊である。

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