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月の精と水底の仏たち(玉川観音)

2022年6月19日15時8分石川県能登地方震度6弱の地震発生

1989年7月16日15時30分頃玉川岩盤崩落事故発生

2017年8月5日18時過ぎ玉川観音拝観

時は廻る

螺旋階段の如く


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玉川洞窟観音(福井県丹生郡越前町)

海よりマレビトあり。

今は昔、漁師の網にかかりて越前海岸より引き揚げられた十一面観世音菩薩をこの地に祀ったのがそのはじまりであるという。


半夏生にはまだ早い

夏至も間近の今夜。

ふと、思い出したので

越前海岸からの帰り道

フロントガラスの向こうから語りかけてきたあの夜の月の言葉をカタチにしてこの場に記そうと思う。


わたしは夜のいろどりに囲まれたる月光

波間に揺蕩たゆたう舟を手まねくしるべ


彼の地に数多あまた在る哀しみを我がものとするために

やわらかな唇は千の導きを唱え

しなやかな腕は万の救いをもたらす


水底みなそこに沈む魚たちの群れも

仄白ほのじろい峰に佇む獣らも

すべての旅の途中の者たちも

あらゆるいのちがわたしのもとで安らかであるように


いまはしばらく

幸せに眠れ



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深い深い海底のような洞窟に在る

水底みなそこの仏たち。

そこにそっと網を掛けるように

海の観音と繋がった。


丹の生まれる処。

十一と、土と平けくある処。

火門ホトより陽は出ずるか、

落ちるか…

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夏至に太陽はひろがる。

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千手センジュの手を伸ばした先が

救い(掬い)の終着点。


我、夏のはじまりを夢む


裏話。

玉川観音のほんとうの場所は実は別のところにあります。(この場合は元の場所と言うべきか…)

海蝕洞、岩の裂け目のような場所に以前は祀られていたようです。

30年以上も前の岩盤崩落事故の折に、人工のトンネル内に移されたということです。

それはたくさんの犠牲者を出した悲惨な事故だったそうです。

その事を知ってこの地でも祈らせて頂きました。

仏教の教義がこの国に入る以前から、この海蝕洞そのものが信仰の対象だったのでしょう。

海とも山ともつかぬもの。

いのちを育み、幸を与えるもの。

波は攫い、時には崩れ、全てを無に返すもの。

凡ゆるものを与え、奪いもするが

寄る辺なきものたちを懐き弔うのもまたこのカミであったと…


観世音菩薩の祀られていたその海蝕洞は

母神のホトのようにも見えてきて。

凡ゆるものは此処よりうまれいでて、最期は宇宙(子宮)に還るのでしょう。

海のほとけ、元より女の神(月神)の祈りの

いつか行けたら、と思います。


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