見出し画像

一括投資か、積立投資か。

暴落時に爆死しない運用を。

 2022年も残りわずかだが、今年一年の金融相場は全体的に歴史上稀に見る番狂わせな展開であったように感じる。特に米国株式は2月末時点の記事で予想した通り、マイナスリターンでフィニッシュしそうな様子で、過去3年間のリターンが良かっただけに、レバナスから入った初心者は例外なく焼かれていることだろう。

 私は軽微な下落で爆死しないために、日本株と外国株を現物かつ半々で保有するように努めている。そのため、S&P500が続伸している時に、日本株なんて持ってる奴は情弱的な投稿がSNS界隈で蔓延っては、GAFA全盛期にバリュー株投資なんてオワコンだと煽られた日もゼロではなかった。

 しかし景気は循環する。ノリに乗っている人気絶頂銘柄を乗り換え続けて、爆発的な利益を出せるスキルを持つ、ごく一部の人を除けば、プロでも負けることがある世界で、我々個人投資家が株価の天井や底を見極めるのは困難である。

 また、人間は感情的に取引を行うと、高値で買って安値で投げ売る行為になることが、プロスペクト理論で証明されている以上、知識や経験もなく取引していれば、感情を揺さぶられて場の雰囲気に呑み込まれてしまう。個人投資家の9割が負けるなんて格言の信憑性は定かではないが、何の策もなしに取引していれば、負けるような構造になっているのは紛れもない事実である。

 とはいえ、世界中の様々な立場の人達が参加する、壮大なオンラインババ抜きで、ババを引かずに過ごすことは、期間が長期であればあるほど難しくなるし、何もババは1枚とは限らない。遅かれ早かれ、どこかで暴落に巻き込まれる運命にあるのだから、暴落に巻き込まれない手法を考えるよりも、暴落しても爆死しない運用を考えた方がはるかに現実的である。

NISAの枠を年始に埋めるか、待つか。

 そこで持て囃されるのが長期、分散、積立とドルコスト平均法でお馴染みの謳い文句である。保険会社のパンフレットなどにも、決まった口数で買うよりも取得単価が安くなるメリットが十中八九記載されているが、ドルコスト平均法が機能するためには、相場が右肩上がりで成長し続ける前提条件が機能していなければならない。

 名称にドルとある位だから、米国社会の考え方であって、そっくりそのまま日本社会でも通用するとは限らない。仮に日経平均やTOPIXに連動するインデックスファンドをドルコスト平均法で積み立てても、横ばいなのだから取得単価と売却時の差益は、米国株式ほど生じないことは何となく想像がつくだろう。

 それならば、投資対象が右肩上がりで成長するものを選べば良いと考えるのが自然だが、本当に右肩上がりなら、株価の安い今この瞬間に一括で購入した方が、毎月定額でちまちま買うよりも取得単価は小さくなる筈である。

 これに関する一応の答えは出ており、相場が右肩上がりで成長し続ける前提条件が崩れない限り、一括投資の方が理にかなっていると、多くのファンドマネージャーが口を揃えて公言している。

 新年はNISAの枠が追加される時期でもあるから、私は一般NISAの120万円の枠を60万円分はクレジットカードの積立購入で、残りの60万円を年初に一括で購入するつもりでいるが、先述のとおり、景気は循環する。

 なぜ相場が長期的に右肩上がりで成長しているにも関わらず、我々はドルコスト平均法で積み立てるのかと言えば、単純に一括投資できるだけのキャッシュを持ち合わせていなかったり、暴落時に割安で購入するために、一定程度のキャッシュをリザーブしておき、暴落時の保険を掛けて安心したい側面の2つが要因として大きい。

 そして今の私は後者の要因から、出来るだけキャッシュを温存して、暴落時にフルポジションで身動きが取れない事態を避けたい誘惑に駆られており、30万円のスポット購入を2回行うか、年初に一括で60万円買うべきかを決めかねている。

信じるべきは直感か統計か。

 これは先述の通り、暴落時の保険としてキャッシュをリザーブして安心したい心理の現れだが、裏を返せば2023年の相場が2022年の今よりも悪くなると直感していることになる。

 しかし、統計上暦年で上昇相場とだった割合は2/3、下落相場が1/3と、統計的には上昇相場に賭ける方が期待値が高く、直感では悲観して逆張りをしようとしているのである。

 上昇相場に賭ける方が期待値が高いからこそ、信用取引で「買いは家まで、売りは命まで」の格言がある訳で、感情論を抜きにすれば、分散投資でポジションを取らずに現金で寝かせておく方が期待値は低くなる。

 しかし、投資は継続して複利の恩恵に預かって初めて意味を持つ。いくら期待値が高くても、感情がその状態に耐えられず退場してしまえば意味がない。選択肢を増やすためにお金があるに越したことはないが、お金だけ追い求めても幸せになれる訳ではない。

 積立か一括か、インデックスかアクティブか、バリューかグロースか、ファンダメンタルズかテクニカルか。いずれも決着のつかない論争でネタには困らないため、情報誌などで対立構造の記事が散見されるが、投資手法よりも自分に合っていて投資そのものを継続できるならば、どちらでも合格点は取れて、心の健康を保ちながら裕福になれるのではないかと考える今日この頃である。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?