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生活拠点を分散させる価値は?


地方、時々、都市。

 過日、田舎の生活圏では完結しない予定をこなすために、地方都市まで自転車を2時間近く転がした。優待名人の桐谷さんが中野からピューロランドまで自転車で移動するのと似たような感覚だろう。

 地方での生活では車が必須と思いがちだが、費用面が懸念材料ならバイクや原付で割合安価に代用可能だし、極論、若くて体力のある時期に、定職に就かずフラフラするのであれば、貧乏学生の延長線上で、有り余る時間と体力のパワープレイで自転車を爆走させれば、それなりの距離まで生活圏として捉えることはできなくもなく、この限りではない。

 とはいえ、私は霊長類ヒト科の中で、フィジカルが決して強い個体ではないことを自覚しており、ミニベロで往復できなくはない距離だが、ロードバイクと異なりメーカーが設計段階でロングライドを想定しておらず、仕様上、フォームに無理が生じやすいことから、膝関節辺りを痛める自信がある。

 そのため、行きは標高差を活用してフリーホイールでひたすら下り、帰りは登らずに駅でミニベロを折り畳み、列車に運ばせたためあくまでも片道でだが、健康のために運動する口実と、片道の電車賃もチリツモだと思えば案外バカにできない。

 そんな地方、時々、都市な生活にすっかり慣れてしまったが、首都圏暮らしで、都市部の利便性よりも喧騒さに嫌気がさして地方移住したこともあり、日常生活に多くの刺激を求めない性格であれば、地方で隠居染みた生活をしている方が心穏やかに暮らせるのは間違いない。

都会は遊びに行く所で、住む場所ではない。

 個人的な経験則の域を出ないものの、地方出身者は地元には何もないと嘆いて上京する。私がこれまで首都圏で暮らしてきたのだから、そこで会う地方出身者=上京組となる訳だから、属性が偏るのも無理はない。

 しかし、都市部に在住している人が、都会の喧騒に疲れて地方移住するのが稀なのは、都市部の転入と転出の人数を見ても、人口が都市部に一極集中しているのは明らかだし、肌感覚としても、田舎に若者はいない。

 学生は見るが、20代〜30代の野郎を見ることは稀で、いわゆる金になるような仕事ほど都市部にしかなく、地元を離れるのだろう。

 しかし、賃金が高くても、物価も相応に高いため、可処分所得で見ると大差なかったりする。それどころか都会は娯楽という名の誘惑に塗れていて、散財するトラップを数え出したらキリがなく、手元に残るお金は田舎の方が多いかも知れない。

 私は首都圏で生まれ育ったため、娯楽という名の散財装置に適度な距離感を保てるが、身近な娯楽施設がパチンコ店以外にないような場所で育つと、誘惑への耐性がない分、たがが外れる可能性は相応にあるのかも知れない。

 とはいえ、田舎には娯楽がないという常識も今は昔で、スマホがあることにより、サブスクを契約すれば定額で対象コンテンツが見放題になるサービスが乱立しているし、ネット通販でポチれば、当日〜翌日とは行かずとも数日後には商品が届く。

 昭和的な価値観にありがちな、わざわざ都会に出向かなければ手に入らないモノなど、もはや大して残っていないのではないか。そう考えると、都会は遊びに行く所であって、住む場所ではないと常々思う。

ギャップを知ることで投資のアイディアに。

 そんなこんなで都会をこき下ろしながらも、首都圏某所の実家にはコンスタントに帰省しており、別に定職に就いている訳でもないため、1週間単位で滞在することが多く、事実上の二拠点生活に近い。

 別に都市に暮らそうが、地方で暮らそうがQOLに大きな差が出ている訳ではない。強いていえば都市で暮らした方が、外出した際の街そのものが持つ情報量の多さが、感度の良いアンテナと相性が悪く疲れるため、割合引きこもる傾向にある。

 とはいえ、投資アイディアの厳選でもある、世間の流行の兆しをキャッチするのは決まって都市部であり、地方で流行り出す頃にはイノベーター理論で言うところのレイトマジョリティ〜ラガードで、都市部では新たな流行が生まれている場合が多いと感じる。

 書店で新刊やおすすめ本の陳列を見るのが好きで、如実に感じる部分があるのかも知れないが、地方の場合、チェーン店だとどこも似たようなラインナップで、ローカル店だとその本はもう読んだ的な、ひと昔前のものが平積みされている割合が高い。

 ICT化で時代が変化しても、やはり流行の最先端は、多くの人が交流する都市部で生まれるのだとつくづく思う。

 しかし、この事実も都市部にだけ住んでいれば当たり前の光景であり、地方に住めば周回遅れの流行が当たり前と、特段目新しさはないが、双方を知ることで都市と地方のギャップを知り、裁定取引もといアービトラージのアイディアに繋がる。

 ここに生活拠点を分散させる妙味があるように思う。首都直下型地震が起きた際のバックアップとして、生活拠点を複数持つことも悪くはないが、それだけのために、わざわざコストをかけてまで分散させる価値は見出せない。

 都市経済と地方経済のギャップを肌で感じることで、ビジネスや投資アイディアが閃き、うまいことやると収入の源泉となる。そうした視点を持つと、地方は何もない場所ではなく、見向きもされない観光資源が、割安のまま放置されて眠っている宝の山にも映る。


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