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朝散歩で世の中を読み解く。

平日の朝散歩で得られる情報。

 私は鉄道員と言う職業柄、平日休みがあるため、休みの日くらいは朝散歩をするようにして、世間を観察している。

 変則的な生活をしているため、休みの日は寝溜めする鉄道員が多数派だと思うが、私はたとえ休日でも朝に起きて、戦略的に二度寝するため、寝起きの不快感は、身体には良くないのかも知れないが、極力無視するようにしている。

 寝起きで機嫌や気分が優れなくても、フロスをしてから水を飲んで、朝日と共に散歩に出れば、帰ってくる頃には意外とスッキリしているものである。

 そこまでして、朝方に散歩するのには、相応の理由がある。居住する地域で出されているゴミが収集される直前の生活道路を観察して、その地域の人々が何を消費しているのかを分析して、投資に役立てているのだ。

 日勤のサラリーマンであれば通勤時間であり、満員電車や嫌な職場が待ち構えて憂鬱で、死んだ魚の目をしながら、ゾンビの如く無気力で駅に向かうため、とても道端に出されているゴミを観察して、消費性向の想像を膨らませることはできない。

 それに、私がゴミを観察している理由を知って、良いと思ったところで、土日には収集していないから、平日休みの人以外は真似することができない意味で、ゴミの観察は一般社会と異なる生活リズムで動いている者と、ゴミ清掃員にのみ与えられた特権とも言える。

 当たり前であるが、ゴミは何かを消費することによって排出される性質から、出されるゴミの傾向を知ることによって、地域の特性や世の中の動きを推察することができる。

ゴミ観察で、地域の特性が浮かび上がる。

 酒税法が改正されたことによって、ちゃんとしたプレミアムビールやクラフトビールの税率が下がり、安かろう悪かろうのビールもどきの税率は上がった。

 これによって、出されている缶のゴミに変化があれば、世の中の人たちが趣向品に掛ける予算がどう変動したのかを、大雑把に把握することができるし、特定の銘柄の空き缶ばかりが目につくようであれば、その地域の売れ筋であり、ビール会社は3社上場している訳だから、その銘柄を業績が向上することを見越して保有することもできる。

 財務諸表で得られる情報は、一定期間に区切ってまとめた過去の情報や、定点観察した過去の情報であり、リアルタイムの情報は、企業の経理部や現場の肌感覚程度でしか把握することができない。

 一介の投資家として、一般消費者の消費性向を把握したいがために、スーパーの売り場で定点観察していれば通報されるか、警備員に声を掛けられるだろう。だからこそ、世の中が何を消費しているのか、売れ筋をざっくり知るのに、消費し終えたゴミを見るのが理にかなっているのである。

 分かりやすい例としてビールの空き缶で説明したが、これを段ボールや空き瓶、レトルト食品、缶詰やペットボトルのラベルなど、あらゆる種類のゴミを定期的に観察していると、相当精度の高い居住地の消費性向データベースが、自身の脳内で構築されることだろう。

 疫病となってから、日常を少しでも楽しむ工夫として始めた朝散歩とゴミ観察のため、徒歩圏外の地域で試したことはないが、旅行先で早めにチェックアウトして地域性の違いを観察してみたり、転居先の不動産を内見する前段階か、一泊して翌日にゴミ捨て場の様子を観察してみると、その地域の民度が窺えて、隣人ガチャでハズレを引く確率を多少は減らせるかも知れない。

 一般論として、お金持ちの家はモノが少なく、貧乏人の家はモノで溢れかえってる印象が強いことから、高級住宅街とスラム街とでは、ゴミの量や質が違っても何ら不思議ではない。

他人と違う考え方は、投資家向き。

 とは言え、初対面の他人に「趣味は何ですか」と聞かれて、「ゴミの観察です」と応えては、ただでさえ近寄ってくる人が少ない社会不適合者なのに、更に近寄りがたい変人となること間違いなしだから、そこは「散歩です」と無難に回答して会話を速攻で終わらせる程度の低レベルなコミュ力は一応有している。

 しかし、他人と違った変な奴ほど、独特な考えや着眼点を持ち合わせている可能性が高く、普遍的な行動を避ける傾向にある。これは投資家としては素質がある。他人と同じ世間一般の常識的な考え方をしていては、周囲と同じような結果以外、生み出すことがないからだ。

 特異な結果を生み出すのは、常識的に考えて、普通ならそうはならないだろうと思うようなことを、さも当たり前かのように平然とやってのけることができるような、頭のネジが何本か外れている、変人寄りの人種である。

 私は今でも付き合いがある同級生から、学生の頃から一風変わった存在であることを、卒業して何年も経過してから言われたが、私としては普遍的ではないことは、褒め言葉以外の何者でもないため、実にポジティブに捉えている。

 だが、いくら投資家の素質があるとはいえ、持ち前のユニークな思考回路で実利が得られなければ、月曜から夜ふかしに登場するような属性の人と大差がないため、変な奴ほど両極端な結末を迎えやすいのは傾向として否めない。

 私は独特な感性から、お金を極力使わない倹約生活をゲーム感覚でこなせたり、運良く投資の世界で有利に働いたことから、金融広報中央委員会の統計上、20代単身者の上位0.8%に相当する金融資産を保有するに至ったが、一歩違えば路上で寝てるやつは大体友達だったかも知れない。

 プラスの方向に賭けて、両極端な変人の道を歩むか。安定した低空飛行で一般的な道を歩むかは個人の価値観次第な部分があるため、決して強要はしない。

 しかし、後者は日本社会全体が徐々に没落する傾向にあるため、これといった夢がない。前者にはまだ夢がある分、人生を賭けて追い求める価値があるのではないかと、信じて疑わないからこそ、今日も私は変人を地で行きゴミを観察している。


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