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勘定合って銭足らず


人手不足倒産もといブラック企業淘汰

 帝国データバンクの調べた結果に基づくと、人手不足倒産が過去最多ペースで生じているらしい。今年に入り、日経平均株価はバブル期の最高値を更新し、昨今のインフレの後押しもあって、大企業の業績も好調。税収も過去最高なんてニュースが出たばかりである。

 それにも関わらず、中小企業を中心に資金繰りが悪化して、倒産件数が増加傾向にある。一見すると不思議な現象にも見える。

 コロナ禍で苦境に立たされた中小企業を中心に、無利子、無担保でのゼロゼロ融資という名の延命措置。もとい時限爆弾を抱え込み、5類以降で経済活動が優先されるようになってから、返済が重くのしかかる。

 そんな中での、円安や原材料費の高騰、大企業の不祥事が矢継ぎ早に炙り出され、受注や操業に影響が出るなどの経済状況の変化に、経営モデルが対応しきれず倒産に至っている側面も、素人目線では大きいように思う。

 要するに、本来ならコロナ禍で淘汰されるはずだった企業が、公金と言う名のゼロゼロ融資によって、騙し騙しやっていた綻びが、今になって表面化しているに過ぎない。

 ここまで、人手不足という言葉を使わず、倒産件数の増加を考察してきたが、そもそも、人手が足りないなら、賃金を上げれば応募が集まることは、山口県の山奥にある獺祭でお馴染みの旭酒造が証明している。

 つまり、人手が集まらない程度の薄給で、こき使えそうな「都合の良い人手」が不足する程度で倒産する企業など、そもそもの経営が行き詰まっている可能性が高く、そんな企業は潰れて頂いた方が、成果を労働者に還元せず、むしろ使い潰すような待遇を続けるブラック企業に、必然的に人が集まらなくなるため、マクロで見た世の中的にはプラスだと考える。

基本給20万円に満たない企業にお祈りされる筆者

 そんなブルーカラーを中心に人手不足が声高に叫ばれている昨今、私はかねてからの通信制大学で、非大卒の身から晴れて大卒となり、大卒フィルター対策に乗り出したのが早かったことから、まだ20代と院卒(博士課程)の年齢に近い。

 そのため、既卒かつ職務経歴があるにも関わらず、間口の広い企業ほど、新卒枠の募集要項の条件を満たす謎の状態となっており、明らかに新卒ではないが、合法的に新卒カードが切れる場合があり、冷やかし半分で就活している。

 鉄道員時代に蓄財した金融資産があるため、別に賃金労働せずとも、自分ひとりが食う分には困らない程度の資産所得はあることから、資金繰りに困っていて是が非でも就職しなければならない状況ではなく、基本的にやる気はない。

 ただ、高卒だったら就けないような条件で、就活する機会があるのに、それを試行しなかったことで、晩年に尾を引くのは癪なので、それならば、やるだけやってみて、どこの企業からも相手にされなかった方が諦めがつく。

 とはいえ、就職人気ランキング上位の会社は、学歴フィルターで排除されるのが関の山であるため、話のネタになりそうな求人に偏るが、大卒で基本給20万円に満たないような香ばしい企業ですら、僕と契約して、魔法少女に(ryとはならずにお祈りされる辺りに、リスキリングが絵に描いた餅である社会構造の根深さを感じる。

働かないアリは社会が良くなるために必要

 そもそも、教育→就労→引退のライフステージが前提で、新卒一括採用、年功序列、終身雇用とメンバーシップ型雇用の形態を取っている日本企業では、高卒で一度社会に出た者が、大学に入り直して知識や技能を習得(リスキリング)し、労働市場に再度参入することを想定していない。

 想定していないからこそ、私のような一度社会に出てから大卒となった超マイノリティを、どう扱って良いのか分からず、想定外のリスクを忌み嫌う企業ほど、脳死で避ける傾向にある。

 そうやって人材を育てる意識がなく、安くこき使える人間を選り好みし続けた結果、都合の良い人手が不足し、納期が遅延。キャッシュコンバージョンサイクルが悪化し、どこかのタイミングで資金繰りに窮して倒産。「勘定合って銭足らず」とは、まさにこのことだろう。

 しかし、希望はある。円安効果で、国際基準の賃金で雇う外資系企業が、黒船的な役割となって、その地域の労働力を吸い取ることで、最低賃金スレスレの低空飛行で買い叩いていた企業が潰れる形での賃上げが、現に熊本で生じつつある。

 一律1,500円のコス○コバイト(余談だが、本国で”t”を発音しないため、正確な読みはコスコ)で、地方の若い労働力を総取りしているのも同じ現象だろう。

 弊害としては、社会に必要な仕事にも関わらず、低賃金なエッセンシャルワーカーの働き手が集まらなくなり、社会インフラに綻びが生じることになる。現に熊本市電は急遽、6/29に人手不足を理由に大幅減便を断行した。

 この状態が続くと、将来的には資金力のない鉄道やバス事業者では、賃上げできずに経営破綻となる可能性が無きにしも非ずと考えるが、これが最も現実的な形での賃上げで、日系企業間での自浄作用的な賃上げには期待していない辺りに、国力の低下を如実に感じてしまう。

 ただ、人口動態を鑑みても、これまで以上に移民でも受け入れない限り、日本国内の労働力は時間経過とともに減少する。

 つまり、今、無理して働く必要のない人や、生活保護が取れるような人は、働かないアリという名の、コロニー(日本社会)の余力として、あえて労働力を社会に供給しないことにより、ブラック企業からボディブローの如く働き手を不足させ、息の根を止めることができる可能性を考えたら、「働いたら負けかなと思ってる」が、まわりまわって労働者のためになる社会貢献と考えるが、いかがだろうか。


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