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投資のリスクとリターン。

有限責任を台無しにする信用取引。

 株式が伝統的な資産として200年以上もの間、投資家から愛され続けるのは間違いなく有限責任の導入が契機だったと思われる。

 世界で最初の株式会社とされているのが1602年のオランダ東インド会社では全社員の有限責任制が取り入れられ、その制度は現代でも続いている。端的に言えば、出資した金額以上の責任を負うことがないため、最大のリスクは出資した際に引き換えた株式が紙切れと化すことだけで、倒産した際の債務を負う無限責任とは雲泥の差である。

 中世ではカンパニーの語源からも想像できるようにcom+panと一緒にパンを食べる仲間意識が強かったことからも、経営は親しい間柄の中で行い、資金繰りが悪化した際も運命共同体として責任を負うのが一般的だったらしいが、これではあまりにもリスクが大きいため、お金持ちが儲かりそうだからと気軽に事業に出資しようとは思わないだろう。それ位、有限責任は画期的な仕組みだったのである。

 つまり、株式投資は構造上、現物であり続ける限り、出資した以上の金額を失うことはないのである。

 それでも、世間一般が描く投資のイメージは最悪の場合、大損して借金を負い、月曜日の通勤時間に列車に飛び込んで自決するようなネガティブな印象を持たれがちなのは、信用取引によってレバレッジを掛けているからである。

 大切な考え方なので、ことある毎に記している気もするが、一発逆転狙いで身の丈に合っていない信用取引により、許容できないリスクを取っている個人の投資手法が危ないのであって、投資そのものが危ないわけではないのである。包丁と同じで、使い方を誤れば便利な道具は時として凶器と化すのである。

マイナスは100%、プラスは青天井。

 リスクとリターンは表裏一体ではあるものの、現物投資であれば有限責任という画期的な仕組みによって、リスクは限定的、リターンは青天井となっている。

 例えば1株500円の株式を100株、5万円で保有したとして、この株が紙切れとなった際の損失はMAX5万円である。文字どおりリスクとリターンが表裏一体であるのなら、見込める利益も5万円程度とするのが、リスクの取り方として妥当な線であるが、株式の場合「テンバガー」なんて言葉にもあるように、何かの拍子で10倍になる銘柄も少なからず存在する。仮に株価が10倍に化ければプラス900%のリターンである。リスクは100%にも関わらず。

 私も実際に大型株から中小型株、ボロ株と言われるような銘柄まで数十を幅広く保有しているが、ボロ株で6割強の含み損を抱えているのを除き、財務が健全で、不祥事を連発するような企業体質でもなければ通常時は半値どころか2割も下落しない。そのため、実質的なリスクはマイナス50%程度が良いところと考えている。

 それに含み益も含み損も、確定するその時までは幻想であり、得した、損したと言って良いのは売買によって損益を確定させたときだけである。含み益であたかも手持ちの現金が増えたかのような、得した気になって財布の紐が緩くなったり、逆に含み損で途端に金払いがシビアになる人は、その日の機嫌と市場平均が連動していると揶揄され、他人が離れていくので要注意である。

投資は国策に乗っかる方が良い。

 投資と一言で表しても、様々な資産がある。預金、株式、債券、貴金属、不動産。いずれも投じた金額よりも大きなリターンを得ようとする目的からすれば同じな投資である。最近なら暗号資産やNFTなども投機か投資かの違いはあれど、目的は同じだろう。

 数ある投資の中でも個人的には税金やインフレを考慮しても、利益が得られる手段は株式一択だと思っている。国も少額投資を推進するためにNISA口座を推奨したり、老後資金の形成にiDeCoで運用するように誘導している。GPIFが株式、債券で運用していることからも、長期的にも株式に資金が流入する流れは変わらないだろうし、仮に株式市場が破綻するなら、資本主義経済の世の中も破綻しているので、それどころではないだろう。

 そんな株式の中でも、日本の国策や税制を考慮すると、配当控除を活用する形で配当金を受け取るのが最も罰金と揶揄される税金が少額で済むと考えている。投資となると、どうしても大きく稼ぐことに目が行きがちだが、支払わなくて済むものは、支払わないことも同じくらい重要だと感じている。

 そのため、最高税率55%の暗号資産どころか、キャピタルゲインで20.315%の税金を支払うのも癪な性分から、基本的に売買益を出すことは考えておらず、高配当株の生涯保有が前提で銘柄を分析、選定することを心がけている。

 それでも減配や無配転落かつ業績が回復して株価が戻る見込みがないような、当初の目論見と異なる展開となってしまった場合、ただ単に損切りするようなことはせず、含み益の出ている銘柄も同時に利確することにより、キャピタル課税が相殺されるように心がけている。

 利確時の損益だけを見れば収支トントンで換金しただけのように感じられるかもしれないが、利確に至るまでの間に4%前後の配当という確定益を、実質7.2%の税率で受け取っていたのだから、トータルで見ればプラスなのである。

 キャピタル狙いで銘柄を売買するのを狩猟型に例えるなら、インカム狙いで長期保有するのは農耕型と言えるだろう。狩猟型の場合、〇〇ショックと言う氷河期を生き延びるのに苦労するが、農耕型の場合、入金された配当金とそこそこの株主優待によって穏やかな生活を送る中で、割安な銘柄を買い増すことで、時間はかかるものの鼠算式に資産を増やすことができる特徴がある。むしろマーケットが暴落してパニック状態と化した際に他の投資家が投げ売りする銘柄を、虎視眈々と狙う姿はまるで羊の皮を被った狼である。

 目先の利益に囚われてキャピタル狙いでリスクを取りすぎると、いつか暴落に巻き込まれ、手痛いしっぺ返しを食らう可能性も相応に高くなる。それよりも一度に儲ける額は数%程の高配当株投資で株式市場に長居することで、アインシュタインが人類最大の発明と絶賛した複利の恩恵を享受するのが、一見地味ながら最善の手法と言うのが私の投資感である。


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