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アクティブファンドには2種類ある。「企業価値を探究するファンド」と「それ以外」だ。

奥野一成さんの #投資家の思考法  を読んで感じたことを色々と考えています。↓の記事にも書きましたが、事業(の)経済性を捉える、捕まえる、把握することが大切だ、それをどうやって実践するか、が説かれていました。

2015年5月に出版された、奥野さんが編著された「京都企業が世界を変える 企業価値と株式投資」。この本は京都を代表する企業の経営者の皆さんの京都大学での講演録がメインディッシュなのですが、第8章は「長期投資の意義と実践」と題した論考を奥野さんが執筆されています。この第8章のごくごく最初のところに置かれた一節のタイトルが

企業価値を創出する事業=素晴らしい経済性を有する事業

でした。

優れた、素晴らしい事業経済性を有する事業、それを持続的に維持し、さらに強固にすることの出来る会社は、持続的に企業価値を創出することが出来る。ってことです。ですから、事業経済性を探り、捕まえ、把握することは、企業価値を探究することだと思います。


モーニングスターで調べてみると、インデックスファンド除外すると、国内株式型と国際株式型のファンドは 1,582本があるそうです。

僕の好み、関心、興味に左右されるところ大なのですが、上記のマガジンの運営も含めてこの数年、たくさんのアクティブファンドを眺めてきました。

奥野さんの「投資家の思考法」を読んで、考えて、ああそうだな、と気付かされました。

アクティブファンドには2種類あるな、って。

企業価値を探究しているアクティブファンド と 「それ以外」です

投資している会社、また、投資を検討している会社の事業経済性を捕まえるために調査、分析、チーム内で議論し、投資判断する。
その会社が市場でどう評価されているか、これからどう評価されるだろうか、は、後回し、あるいは、あまり気にしない。
そんなアクティブファンドが企業価値を探究しているファンドと僕は分類しています。

「企業価値を探究しているアクティブファンド」には3つの特徴があると考えています。

投資先の数が絞り込まれている(最大でも80社、90社)

投資先、投資候補先の事業経済性を捕まえるのには、当然、調査、分析、比較検討、投資仮説の構築等々のプロセスが必須です。また、一旦投資したら、その事業経済性に変化は無いか、投資仮説に綻びが無いか、定点観測も必須となります。1つの会社に投資する、それを続けるのには大変な手間と労力が掛かるものと想像されます。チームに多くの人員、リソースに依存する面はありますが、そうそう多くの投資先を抱えることは難しい。色んなファンドを見てきて、80社、90社くらいが一つの目安と僕は考えています。

こんな考え方もあります。僕が「企業価値を探究しているアクティブファンド」の代表格と捉えている”スパークス・新・国際優良日本株ファンド(愛称:厳選投資)"。

この”厳選投資”の2019年3月末基準の月次レポートで次のように説明されています。

私どもが「確信度の高い限られた銘柄に集中投資」する最大の理由は、それが「リスクを抑えつつリターンを最大化 する最も有効なアプローチ」だと考えているためです。一般の株式投資講座で習うような分散投資の有効性はあまり重 視していません。

ポートフォリオ理論上、投資している銘柄内容が高度に分散されていれば、10銘柄程度でも分散効果は十分発揮されることが証明されています。ここから更に組入銘柄数をたくさん増やしても、追加的に得られる分散効果は限られてし まうだけでなく、ファンドリターンは市場平均に収斂していってしまうのです。

企業価値を探究した結果、得ることができた投資候補先をさらに厳選、選び抜くということで、よりギューーーーっと絞り込むアクティブファンドもあります。

投資先1社への投資期間が長い

この点は非常に重要です。投資先の数が絞り込まれていたとしても、取っ替え引っ替えの20社のポートフォリオと、どっしりと長期間株式保有している20社のポートフォリオとは全く違う、ということです。

企業価値が高まっていく、増加が実現するのは時間が掛かります。

奥野さんは、NVICで実践されている投資を「企業価値増大を楽しむ投資」と表現されています(『「市場」ではなく「企業」を買う株式投資』の奥野さん執筆の第5章のタイトルが”企業価値増大を楽しむ投資”です)。時間が「複利」を強化するという側面もあります。素晴らしい事業経済性を持つ事業は時間とともにグングンと複利で企業価値を増大させていくわけです(事業経済性に乏しい事業の場合は、マイナスの「複利」でドンドンと企業価値を毀損させる)。

時間を掛けて調べて、分析して、比較して、考え抜いた投資判断と、投資先を短期間にコロコロと入れ替える行動は全く整合しません。裏返すと、コロコロと頻繁に投資先を取っ替え引っ替えするということは、企業価値を時間を掛けて探究していないからこそ為せるワザ? ということです。

この点で、「企業価値増大を楽しむアクティブファンド」の老舗、コモンズ30ファンドの目論見書が素晴らしいです。

非常に小さい字で書かれているのですが

投資先企業31社の平均保有(投資)年数は10.5年(2022年1月末時点)となっております。なお、10年以上保有が21社、5年以上10年未満が8社、5年未 満が2社となっております。

投資先の保有期間がどうなっているのか、わかりやすく説明されています。

「企業価値を探究しているか」それを投資判断に直結させているか、それを示すうえで、投資先の投資期間はとてもとても大事です。保有期間、投資期間の状況をきちんと開示しているアクティブファンドは非常に少ないのが実状です。

企業価値を探究しているアクティブファンドなら
投資先の保有期間を示すのは当たり前。

これが1日も早く実現してほしいと期待しています。

下記のコラムでは、この保有期間のことを「ファンド・デュレーション」として詳しく説明されていますので、ぜひご覧ください。

具体的に企業価値を語る月次レポート・情報発信

投資先が絞り込まれていても、その投資先各社への投資期間が相応に長くても、それだけでは「企業価値を探究しているか」は分かりません。その探究のプロセスを受益者にしっかりと伝えようという姿勢の有無、それは月次レポートや情報発信から見てとることが出来ます。

企業価値を探究するアクティブファンドの月次レポートは以下のような特徴を持っています。

具体的な社名、固有名詞を示している

それ以外」のアクティブファンドの月次レポートには「輸送用機器銘柄」「機械銘柄」といった言葉が多く見られます。投資先の固有名詞が示されていないのです。
この種の表現がごくごく当たり前になっている現実をとても不思議に思うのです。

真摯に時間を掛けて調査して、企業価値を探究した結果、投資判断したのに、なぜ具体的な会社名を示すことができないのか???と。

企業価値を探究した結果、じっくりと時間を掛けてその価値増大を楽しもうとしたのに、なぜ具体的な会社名を示すことができないのか???と。

みっちりと企業価値を探究、吟味を重ねて投資判断した投資先であれば、具体的な会社名を示せるはず。なにより、その投資判断のプロセスを伝えることが、ファンドの受益者の納得性や信頼を高めるはずです。

株価や基準価額の騰落についてのコメントが淡白

企業価値を探究しているアクティブファンドの月次レポートは、株価の動き、ファンドの基準価額の騰落についてのコメントはごくごく少なくなっています。1ヶ月という極めて短い時間の市場の動き、そこでの投資先各社の評価をあれこれ論じることにあまり意味が無いからだと思います。それよりも重要なのは、投資先の事業経済性、またその一端を数字として示す業績でしょう。また、事業での新たな取り組み、新規投資等です。そうした事実から事業経済性がどう変化しているのか、変化しそうなのか、そこがしっかり捕らえられているか、それが「企業価値を探究すること」だと思います。

月次レポートで、その他の情報発信で、企業価値を探究している様をしっかりと伝えている。「企業価値を探究しているアクティブファンド」か「それ以外」かを分ける、極めて大きなポイントだと考えています。

企業価値を探究しているアクティブファンドを
盛り上げたい!

この記事で挙げた3つの要素

投資先の数が絞り込まれている、
投資先1社への投資期間が長い、
具体的に企業価値を語る月次レポート・情報発信

これを満たす「企業価値を探究しているアクティブファンド」は、1,582本あるアクティブファンドの中でも圧倒的少数派です。ほとんどが「それ以外」です。

また、ファンドに投資する側も、基準価額の騰落や短期間の騰落率にばかり関心を向けている投資家がほとんどでしょう。企業価値を探究している受益者ってめちゃめちゃ少ないと感じています(SNS等の発信からの所見ですけれど)。

企業価値を探究しているアクティブファンドを盛り上げたい!

#noteクリエイターサポートプログラム  という試みがありますね。

この試みに乗っかれないか、と考えてみました。

・支援してほしい活動の時期や期限

時期。正直なところ、長い道程が予想されます。株式投資、と聞くと、「価格」の話、「儲かった、損した」の話が反射的に出てくる状況は根深い。それを転換させるのが「企業価値」なのですが、時間が掛かるのは間違いありません。

というわけで、定期的、半年に一度くらいに「企業価値を探究しているアクティブファンド」をテーマにしたイベントができないか、と妄想しています。

・支援を希望する内容

「企業価値を探究しているアクティブファンド」が、「企業価値」に着目する個人投資家が増えるような仕掛けを、noteに居る人で考えてもらえないかなあ、と。

今、頭に浮かんだ妄想を書いてみました。

「企業価値を探究しているアクティブファンド」を盛り上げたい!

これが出発点です。

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