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ビジネスエリートになるための投資家の思考法 The Investor's Thinking (著・奥野一成さん)

著者の奥野さんから書籍版を頂きました、一方でKindleでも買い求めました。

そう、僕は奥野さんのファンなんです。その点、あらかじめご了承ください。

本書では「インベスター」というカタカナ語をあえて使っています。日本語を当てるとすると「投資家」ですが、この「投資家」という言葉には誤解された独特の語感があるように思うからです。

奥野 一成. ビジネスエリートになるための 投資家の思考法The Investor's Thinking (Japanese Edition) (p.45). Kindle 版.

まず、ここを取り上げさせていただきました。この「投資」っていう言葉へのひっっかかり、僕も長く持っていました。ある時期 「投資」という言葉を避けてわざわざ”invest"という言葉を使っていました。

↑の記事でご紹介した本を読んでから、「まあ、投資でもええんかな」と思い直しました。以来、あまりこだわりなく「投資」と表現しています。

奥野さんが今回「インベスター」という表現をチョイスされたのも理解できます。

今回の本で絶対に忘れないキーワードの一つ、それが「事業の経済性」でしょう。

Kindle版で検索したら 

”72件の検索結果が見つかりました”

Kindle版のページ数は254です。ですから、3.5頁読むと1回は出てくるわけです。


事業の経済性

けれども一番重視すべき点は、その事業が高い経済性を持っているのか、利益を生み出す源泉がどこにあるのか、特定することなのです。

奥野 一成. ビジネスエリートになるための 投資家の思考法The Investor's Thinking (Japanese Edition) (p.62). Kindle 版.

インベスターが見極めるべきは「なぜそのような形になっているか?」という原因、背景、すなわち事業の経済性です。それに迫るために、企業の沿革から、財・サービスの性質、競合環境、ビジネスプロセス、顧客は誰でどのような問題を解決しているのか、等の非財務情報を徹底的に掘り下げていきます。

奥野 一成. ビジネスエリートになるための 投資家の思考法The Investor's Thinking (Japanese Edition) (pp.81-82). Kindle 版.

”事業(の)経済性”。
これは みさき投資 の 中神康議さんもその大切さを指摘されています。
『三位一体の経営』の第3章のタイトルは”まずは十分な利益率を確保するー事業経済性”でした。
また冨山和彦さんの著書でも次のように述べられています。

事業の経済的な構造をインダストリー・エコノミクス、事業経済性と言う。これがわかれば、単なる流行り廃りを超えたその企業の儲けの仕組みが見えてくる。
そもそも儲かる仕組みになっていなければ、事業として成り立たないし、利益を高めようというときも、儲かる仕組みを理解していなければ、一見良さそうでも実は泥沼の打ち手ということを選択しかねない。

冨山和彦,経営共創基盤. IGPI流 経営分析のリアル・ノウハウ (Japanese Edition) (p.75). PHP研究所. Kindle 版.

企業価値を探求して投資判断する投資家が最も注意を払っているのが「事業(の)経済性」。

それをどのような枠組を使って探究しようとするのか、奥野さん流のやり方、そのエッセンスをこの本で読むことができます。


投資の果実は未来からもたらされる。

先日の記事で何度も書きました。

でも、その投資判断を行う過程において仮説をつくるには過去の検証が必要です。
過去の検証が予測の確らしさを担保するわけではありませんが、検証が十分で無い予測にどれだけの実現力があるのか、ってことですね。

奥野さんもおっしゃっています。

ではどうするのか?過去を検証するしかありません。

奥野 一成. ビジネスエリートになるための 投資家の思考法The Investor's Thinking (Japanese Edition) (p.85). Kindle 版.

こうした仮説をつくるプロセスが具体的に
第4章 企業の本質に迫る5つのプロセス で説明されています。

企業の本質とは事業の経済性とほぼ同義です。

「自分で」が”ジブン・ポートフォリオ”には必須


この第4章の中に「実際に手を動かしてみよう」という一節があります。

第3章には「手を使って考える」「足を使って考える」とあります。

これらのフレーズには非常に大事なことが含まれていると感じます。それは「自分で」探す、調べる、考える、ということです。一次情報を基にすることも強調されています。

仮説を導くときに一次情報以外の検索をするのは考え物です。誰かの意見とか感想などの二次・三次情報は仮説構築の邪魔になることはあっても助けになることはありません。自分で考えるということの妨げになるからです。

奥野 一成. ビジネスエリートになるための 投資家の思考法The Investor's Thinking (Japanese Edition) (p.86). Kindle 版.

投資信託についてマスメディアで見る記事の多くは、ホンマ?と思うようなものがたくさんあります。結論が先にあって、それに合わせてデータを拾っているんじゃないの?と感じることがホントに多いのです。なので、極力、自分で調べるようになりましたし、自分で納得できる形で調べていないことをネットで発信することはできるだけ控えるようにしているつもりです。

本の第4章では、実際の会社がいくつか出てきます。その会社の一次情報を「自分で」確かめてみるかどうか。本を読んで「そうなのかあ」で終わっては勿体無い!ってことなんです。「自分で」調べてみよう!って。

最近では、投資先の会社を眺めてみる時は、決算短信や決算説明資料等を当たって自分でExcelに数字を拾ってみるようにしています。もちろん、プロの皆さんほどの粒度とまではいきませんが、自分が気になる数字で並べてみると、「これは何や?」というものが見つかったりして、そこからまた新しい「問い」を持つようになります。

本の中で奥野さんは「好奇心」の大切さを述べられていますが、「自分で」探す、調べる、分析してみる、つなげてみる。こうしたプロセスを重ねることで「問い」が生まれ「好奇心」が刺激される、強くなるのを最近、感じます。
実際に「自分で」探して、調べて、考えるようになって、投資が楽しくなりましたし、その一方で、まだまだ深掘りが足りないな、と自分に対して物足りなさも感じるようになりました。それが「好奇心」の芽なのかもしれない、って思うんです。

こんな風に「自分で」調べてみよう!、と刺激になったのが、奥野さんたちが毎月つくられている月次レポートです。たとえば、こちら です。

「自分で」手を動かす、探す、調べる、分ける、考える、決める。これを重ねることでちょっとずる進歩する、これがこの本で言われる「ジブン・ポートフォリオ」にとって最も大事だ、と再認識、再確認することが出来ました。これがこの本から得た一番の果実です。

繰り返します、大事なのは「自分で」です。

その通り!と感じたこと

本を読んで、ホンマその通りですわ!と大きく頷いたのが「リカク」の件。

株式を売却するという決断は、現金に投資するという決断です。

奥野 一成. ビジネスエリートになるための 投資家の思考法The Investor's Thinking (Japanese Edition) (p.93). Kindle 版.

配当についても述べられていますが、全くその通り!って思います。

お金を懐にいれたまま数えているより、リスクをとって、そのお金を「これは!」と思う素晴らしい企業や優秀な経営者に預けることで、ほんの微力であったとしても世界中の様々な課題解決の一端を担えるほうが有意義だと思います。

奥野 一成. ビジネスエリートになるための 投資家の思考法The Investor's Thinking (Japanese Edition) (p.96). Kindle 版.

自分の資産の時価に注意はほどほどに、自分が投資を通じて関わっている事業、その価値創造、実現により多くの関心、好奇心を振り向けていくようになりたいものです。

時間の経過とともに「時価がいくらか」なんてことは眼中になくなること。
自分が関わっている事業、そこで働く人たちがつくる価値にドンドンと注意が向き、その周辺、環境から新たな事業に好奇心が向かうこと。

それが目指すべきインベスターなんだろう、と思いました。

「自分で」探す、調べる、考える があってこその”ジブン・ポートフォリオ”。
そんなインベスターが一人でも増えたら、世の中はより明るくなると思います。

刺激的な読書となりました。奥野さんに深く感謝です。

僕がリスペクトするインベスターさんの記事もどうぞ!

奥野さんのVoicyも!

投資家の思考法、インベスターシンキングをテーマにゲストと対談されています。
ぜひ、こちらもお聴きになってみては!




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