見出し画像

資本主義の中心で、資本主義を変える(著・清水大吾さん)を読んで

清水大吾さんの『資本主義の中心で、資本主義を変える』を読み終えました。

毎年毎年、昨年以上の結果を求められる。
このプレッシャーは、どこからきている?

「成長が目的」の世界は、人を幸せにしないーー。
著者は「世界最強の投資銀行」の名を馳せるゴールドマン・サックスで16年、資本主義と闘ってきた。
資本主義を変えるためには、「資本主義の中心」にいる必要があったのだ。

世界を変えるには、日本から。その思いから著者は、日本の資本市場の奥深くまで切り込むことになる。

「Up or Out(成長しないヤツは出ていけ)」という「現実」のなかで、どんなに追い詰められても、長期的な社会へのインパクトという「理想」にこだわり、人生を捧げてきた。

1兆円ビジネスという経済性と社会性の両立を追いかけ続けた、元ゴールドマン・サックス営業による「現実と理想の両立のしかた」。


最も強く印象に残ったのは、この箇所です。

「儲ける」か、「儲かる」か

重要なのは、「社会のためになることをする」ことと、「利益を得る」ということの「順番」だ。

1章 資本主義は「限界」か? 92頁

社会のためになることを、儲かるようにしてみせる」という順番にこだわり

1章 資本主義は「限界」か? 93頁

順番を違えないこと。これがこれからは益々大事になってくる、それが僕の予想です。この順番をしっかりと説明し、説明通りに活動していると認められる会社は尊敬を集める。一方で、順番をテキトーにいい加減にしていることが見透かされると、市場、顧客、働く人たちから見捨てられてしまう。そんな流れを予測しています。

「今だけ、自分だけ」

短期思考を象徴する言葉として何度も登場するのが「今だけ、自分だけ」という言葉。この言葉は、リザルトパラダイムを象徴している言葉のようにも思います。 関心、注意を向ける矢印が自分ばかりに向けているようにも。自分の資産が今ナンボなんだろう、という具合に。

そして、もう一つ。アワビは3年!

政策保有株式問題の解決が進めば・・・

素晴らしい経営者と、バフェットのような本物の長期投資家が対話を深めていくことができれば、この国には素晴らしい未来が待っているはずだ。

2章 お金の流れを根本から変える 173頁

事業に、プロセスに、順番に関心を寄せ、見守り、建設的な対話相手となりうる長期投資家がどれだけふえてくるか、も重要だと思います。

会社が成し遂げなければならない変化

本来、資本主義の根本原理である自由経済下では、他社と違った取り組みをしているからこそ利益を得ることができるはずだ。

2章 お金の流れを根本から変える 182頁

differentを追求できるか、追求し続けられるか。

投資家との対話においても次のように述べられていました。

投資家は議論を求めているのに、日本の企業は自分たちの主張をするのではなく答えを求めるので話がかみ合わない 

2章 お金の流れを根本から変える 184頁

「哲学」を持っていない、と指摘されています。

曖昧な概念に慣れていない。目に見えない「コーポレートガバナンス」や「企業文化」を本質的に考えようとしていなかった。

2章 お金の流れを根本から変える 185頁

上でご紹介した 日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか では、コンセプト化、抽象化の弱さが痛烈に指摘されていましたが、そこに通じているように思いました。

教育の問題もあると思います。問いを立てて、自分なりの答えを探すことの経験の乏しさ。文脈の近い人同士でゴニョゴニョとやっておけばなんとかなった、そういうところから、コンセプト化、抽象化、概念の取り扱いがドンドン不得手になってしまったのだろう、と思いました。

今朝の清水さんのポスト。

エジンバラのベイリー・ギフォードさんは「ひたすら哲学の話」。

そうなのですよね、アワビは3年!を理解できている投資家なら、長い目線でWhyを、Whatを。それをHow どうやって実現してきたか、実現しようとしているか。それを支える「ものの考え方」を知りたくなるのがごくごく自然な論理の流れだと思います。

ダイバーシティは「ものの考え方」の多様性

3章 ピラニアを放り込め! 266頁で、ダイバーシティについて

「ものの考え方の多様性」であるべき

と清水さんは主張されています。

いくら女性や外国人を増やしたとしても、ものの考え方が似通っていたとしたら新しい発想は出てこない。

とも。この点は上述の、コンセプト化、抽象化、概念に上手く取り組むために非常に重要な要素だと考えられます。多様な「ものの考え方」を前にした時、問いを立てるところから様々な見方が出てくるでしょうし、当然、文脈が大きく違っている中で調整を図り、答えを探す必要が出てくるはずです。

この重要性をどれだけ認識して組織づくりをしていくか、も投資家として関心、注意を向けるべきだと悟りました。

面倒くさい人

些細なことににこだわるのはただの面倒くさい人かもしれない

清水さんご自身を「面倒くさい人」とされていましたが、僕もかなり「面倒くさい人」「面倒くさい投資家」だと思います。

金融教育じゃなくて投資教育と呼ぶべきだ!とか、ね。

最近、ますます意固地、頑なになってきてます笑

「面倒くさい」でこの記憶も甦りました。

清水さんの「面倒くささ」に、とても近いものが僕の中にあるのを感じる読書体験となりました。

個々人が社会の常識に無作為に流されることなく独自の考え方を確立し、そして議論をすることで初めて新しい考え方は生まれてくるはずなのだ。

いつか清水さんと「面倒くさい」同士でお話ができると面白そうだなあ、と思いました。

あと、メモのようなこのポストも大事です。

#アニマルスピリッツ を思い起こさせるキーワードが ピラニア でした。

ここから先は

0字

この記事が参加している募集

推薦図書

読書感想文

サポート頂いた際は、TableforKidsへの寄付に使わせていただきます。 https://note.com/renny/n/n944cba12dcf5