見出し画像

"アクティブ投資、 パッシブ投資? それとも真の投資?" (Stuart Dunbarさん/ベイリー・ギフォード)

こちらのノートで「眺めてみた」エジンバラの投資会社(あえて「投資」会社と呼びます、「運用会社」ではなく)ベイリー・ギフォードさんの日本語版ページにとても素晴らしいインサイトがありました!

タイトルは

株式投資の本来あるべき姿 について話し合いましょう

です。執筆したのは、Stuart Dunbarさん。ベイリー・ギフォードのパートナーです。


アクティブ投資、 パッシブ投資? それとも真の投資?

最初に、こんな問いを投げかけています。

この「真の投資」は↑のノートで出てきた"Actual investor"の訳語でしょう。

全てのアクティブ投資が同じ括り にはならず、そもそも「アクティブ」 と呼ばれているものの多くが、本来あるべき姿からは程遠いのです。投資の 基本的な目的は、経済における余剰資金を、利益を生み出す事業機会を見つけた起業家や企業経営者のアイデア、 プロジェクトに資本として供給することです。プロの投資家としての私たちの仕事は、これらのアイデアやプロジ ェクトに関連するリスク、起こりうる 投資リターンの範囲、及びそれらの生 起確率を比較検討し、資金調達に使用 されている株式又は債券に価格を設定 することです。

ろくすけさんもブログで同じような指摘をされています。

経営者は「価値」をつくり、
投資家は「価格」をつける。

企業への投資を通じて魅力的な投資案件に資本を注ぎ込むという私たちの基本的な 役割は、一体どこに行ってしまったのでしょうか。私たちの将来の年金を払うために必要な富を創造しようとする本来の姿勢は、一体どこに行ってしまったのでしょうか。経済・社会の進歩は、技術的な躍進、イノベティブな流通モデルやインフラストラクチャ、そして想像力やクリエイティビティに依存しています。「今週は市場価格が小幅上昇する」などと判断しても、それは進歩には繋がらないのです。

アクティブファンド の月次レポートに市況の解説、見通しは確かに多い、というか、それしか書いていないレポートもうじゃうじゃ存在していますからね。

Stuartさんはこのような現状を生み出した原因、元凶と断言しているのがCAPMです。

CAPMは、投資リターンを人工的にアルファ値(特定の証券に固有のリターンの要素)及びベータ値(投資収益率の 市場平均に対する感応度)に分割し、 それにより、投資判断を行わずに(又 はその知識も持たずに)投資家が、効率的に市場リターンを享受できるという考えを生み出しました。従って、市場ベータが株式ポートフォリオの出発点となり、それを「アウトパフォーム」することがアクティブ運用業界が 持つ付加価値になったのです。

この「投資判断を行わずに(又 はその知識も持たずに)投資家が、効率的に市場リターンを享受できるという考え」こそが、インデックス運用ですね。

(アクティブ運用の)投資の成功の定義は、ベンチマー クを上回ったか否かという相対的なものとなり、運用報告なども相対的なものです。

つまり、CAPMという存在が本来の「投資」を歪めてしまった、それはまだまだ続いている、と指摘しています。

殆どの株式投資は、もはや企業による投資プロジェクトに、リスクを取って長期的に資本を供給することではなくなってしまいました。想像上の「市場リターン」を最小限のコストでただ乗りすることが主流になってしまったのです。

私自身、「想像上の「市場リターン」を最小限のコストでただ乗りする」インデックス運用を否定するわけではありません。しかし、資本を投下する先を選別することなく、また、それを手に入れる価格は市場が付けたものに常に盲従する行動は、「投資」と呼ぶことはできないと思います(個人の感想です)。だから、「インデックス投資」ではなく「インデックス運用」なのです。何を買っているか、いくらで買うか、全て「運」任せなのですから。

クライアント(資金の出し手)との エンゲージメントを増やし、投資の本当の意味を理解して頂くために努力する必要があります。それは、妥当な運用手数料を請求し、そしてコストの内訳を自主的に開示することを意味します。

CAPMが生み出した「アクティブ運用」は、「真の投資」ではない。「真の投資」を伝える必要性を強調しています。

多数ではなく少数

アリゾナ州立大学のベッセムバインダー教授の調査によると、1926年から 2016年までに、米国株式市場で生み出された富の合計は、上位1092社の株式 が生み出した富の合計と同等でした。 更に驚くべきことに、その半分は90社 (僅か0.3%の企業)によって生み出されました。それは、残りの全ての銘柄 がマイナスという意味ではなく、残り の全てが生み出した富の合計が1か月物の財務省証券と同じであったとの意味です。

対象となっていた会社数は25,322社です。

ここからCAPMは「ただのモデルに過ぎない」と断言しています。痛快ですね。

この後、どのようなアクティブファンド マネジャーを選ぶべきか、どのような点を重視するべきか、というポイントについて説明されています。アクティブシェアや売買回転率についても意見が述べられています。

市場平均(ベンチマーク)を上回るのを目指すアクティブファンド

このStuartさんのインサイトを読んで今更ながら感じたのは、「アクティブファンド =市場平均(ベンチマーク)を上回るのを目指す」という概念は、CAPMというモデルが生み出したものだ、ということです。

投資の基本的な目的は、経済における余剰資金を、利益を生み出す事業機会を見つけた起業家や企業経営者のアイデア、 プロジェクトに資本として供給すること」を"真の投資(Actual investment)"とするならば、”真の投資”は、上記の「市場平均を上回ることを目指す」アクティブ運用 とは全く別物であり、一緒くたにされるのは適切ではないとつくづく思います。

Stuartさんの「株式投資の本来あるべき姿 について話し合いましょう」の全文は

こちら からご覧ください。

ベイリー・ギフォードさんの別のインサイト

私たちの共有する信念

こちらに

当社の株式運用プロセスの基本は、成長企業を長期株主として保有することです。投資先企業が成長機会に投資 し、株式市場からの短期的圧力を無視するようはたらきかけ、企業がその潜在能力を発揮出来るように支援した いと考えています。当社はお客様の資金の活発なスチュワードとして、投資先企業の株主という重責を果たしていきます。

という説明があります。これこそ、まさに #オーナーシップ投資  だと感じます。

オーナーシップ投資、真の投資を目指していきたい、ベイリー・ギフォードさんのインサイトを読んであらためてそう強く思いました。

今回のStuartさんのインサイトを私と同じく「興味深い!」「そうだよねー」って感じてくださった方、下記のサークルでも楽しみ頂けるものと思います。ご覧になってみてください。


サポート頂いた際は、TableforKidsへの寄付に使わせていただきます。 https://note.com/renny/n/n944cba12dcf5