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古道具屋

ここにはローズビルの駅前の、いやもうローズビル駅のと言ってもいいくらいほぼ駅敷地内のスペースから、数年前に移動してきた古道具屋があった。

パシフィックハイウェイをてくてく歩いて通勤する俺は、ローズビル駅のところでこの店の前をいつも通っていた。その店が同じハイウェイ沿いのチャツウッド寄りに商品そのままに移動したから、俺は相変わらず通勤の際にこの店の前を歩くのだ。

ぼろそうな、もとい、新しくはなく何の役にも立ちそうにないものばかりの品ぞろえで、中古品販売店というよりやっぱり古道具屋だった。もしかしたら店主本人は自信を持って古美術商だと思っていたかもしれないが、やっぱり古道具屋だった。決して古道具屋をディスってる訳ではないが、やっぱり古道具屋だった。

店内には入ったことがないが、表から通りすがりにガラス越しに眺めた。

酷い油絵がかかっていた。夜会で着けそうなお面のセットもあった。木彫りの置物もあった。気味が悪く、見ると運気が落ちそうだった。外から見えるところに並べられている品々は、鑑識眼のない俺の目ではその価値を見いだすことは難しかった。

「なんでも鑑定団」をあんなに見ていたのに…。物事には努力では補えないことがあるということがよく分かった。

ある日店がもぬけの殻になっていた。それこそ何にも残っていなかった。すっからかんだ。

まさかのことだった。
思いもしないことだった。
まさかあれが全部売れてしまうとは、完全に予想外だった。

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