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サマータイム開始のシドニーでウォーキングした話。

今日はバルメインにある豪寿庵のリンダさんに衣紋掛けを届けた。
例のアレの猛威で社会封鎖する前からの任務を漸く果たす時が来たのだ。

9:45にチャツウッド駅前で友人A氏と落ち合う。
しかし俺が7分遅れる。申し訳ない。

電車でハーバーブリッジを渡ってシティに入り、ウインヤード駅で下車。そこから俺たちのウォーキングが始まる。

まずはダーリングハーバーまで出る。
そこはシドニーシティの西脇の内海で周囲には観光客向けの商業館、レストラン、水族館に動物園、博物館、エンターテイメントセンター、イベント広場、中華庭園などが集まるおしゃれな地域だ。

物凄くいい天気のシドニーの観光地をズンズン歩く。
ギラギラの太陽の下で観覧車がぐるぐる回っている。
日本のと違って回転スピードが速くて、のんびりはしていない。本当にぐるぐる回っている。

でも毎年沢山いるはずの海外からの観光客の姿はない。
なんだかとっても残念な感じがする。

ダーリングハーバーを後にしてカジノであるThe Starの脇を抜け、アンザックブリッジを渡る。

ハーバーブリッジは欄干が丸いが、アンザックブリッジは三角形をしている大きな橋だ。天辺にはオーストラリアの国旗がはためいている。

俺らはとにかくズンズン歩いた。
そしてもう一つ橋を渡ってドラモインという街のアウトレットモールに到着。

久しぶりのモールは人、人、人で賑わっていた。フードコートは使えない席を作っている分、席に着けない人たちが困っていた。空いている椅子は奪い合いだった。俺は中華を、A氏は中東の料理を食べる。和食を売る韓国人経営だろう店の餃子を買ってみたが、一個$3.60もした割には許せない具しか入っていなかった。リピートする客はいないだろう。

NIKEやTommy Hilfigerやポロ・ラルフローレンでは入店制限が行われていた。それほど人が多かった。俺はあるものを買いたくて片っ端から店を漁ったが、欲しいものは見つからなかった。

ショッピングモールを出た足で、すぐ裏のビーチへ降りる芝の斜面で休んだ。ビーチの向こうはキラキラと水面が陽光を反射させていて、ボートやヨットが行き交っていた。時間はのんびりと流れていて、どこにも争いはなかった。

眠ってしまうわけにはいかなかったのでA氏をせかして再び歩きはじめる。来た道を少し戻るのに、来るときに渡った橋をもう一度渡る。岸辺の芝の公園の上に建つマンションの住民の暮らしを思い浮かべてしまう。比べてみても仕方がないのに。

ズンズン歩く俺らはビクトリアロードを左に曲がってバルメイン地区へ向かう。週末にマーケットが開かれていた小学校の校庭ががらんとしていた。日曜日のマーケットはしばらくお休みらしい。
例のあの人の猛威は満遍なくシドニーの隅々にまで届いていた。

バルメインのメインであるダーリングストリートに出ると、それをひたすら北に歩く。街の中心地には道を挟んでレストランや商店が並ぶ。酒屋に入ってアサヒビールを手土産に買う。本当はすぐにでも飲んでしまいたいところだが勿論そんなことはしない。

日本風旅館である「豪寿庵」が見えたところでマスクをする。リンダさんは病気開けなので念のため。

約束の時間内にドアをノックする。リンダさんはテーブルで仕事をしていた。会うのは2月ぶりになる。とても元気そうだった。A氏にリンダさんを紹介し、リンダさんにA氏を紹介する。そして最大の目的だった「衣紋掛け」をリンダさんに渡した。数か月越しの任務達成に一人秘かに安堵する。

俺はA氏への庵内のガイドをリンダさんに丸投げした。A氏は英語がぺらっぺらで、オージーのリンダさんもストレスなく話ができる(俺の英単語の知識はかなりうすっぺらぺらなので、リンダさんも話をするのにストレスが溜まると思うのだ)。

俺はトイレに行ってから庭に面したベンチで休憩する。殆ど風もなく庭木は大人しく佇んでいて、板壁には屋根の影で斜めに切られて陽が当たっていた。手前の池に水が落ちる音を聞きながら、鯉たちがゆらゆらと泳ぐ姿を眺める。とても癒される空間にいるのだと誰もが思うだろうと思いながら、俺はずっと脹脛(ふくらはぎ)のマッサージをしていた。いつもと違う靴を履いてきたからか、張りが酷い。

思っていたよりずっと長い時間が経って漸く二人が戻ってきた。とても満足した顔をしていた。よい時間を過ごしたのだろうという想像は簡単にできた。

お茶を勧められたが断り、リンダさんにさようならを言って庵を出る。フェリーの時間が迫っていたからだ。

庵からダーリングストリートを真っすぐ上って下って船着き場に向かう。シドニーのビル群からハーバーブリッジからノースシドニーまでが真横から見える素晴らしいロケーションだ。地元の人だけで観光客は来ない場所。

フェリーの到着が5分ほど遅れる。いつものことだ。
時間通りに来るとは誰も思っていない。

出発したフェリーは水面に真っ白なラインを引きながらどんどんスピードを上げていき、ついでに水しぶきも上げて進んだ。甲板にいた俺たちは強くなっていく風をまともに受けたがA氏の表情はそれに比例して笑顔になっていった。髪が乱れて困難に陥っている俺の心中をよそに、A氏は口を半開きて目を輝かせながら今日一番に楽しそうだった。

マックマホンズポイントを経て、フェリーはミルソンズポイントに到着する。船着き場では遊園地帰りだろう家族連れがずらりと列を作って入船を待っていた。ソーシャルディスタンスを守っているとはお世辞にも言えなかった。

俺達はそのままハーバーブリッジの真下を横切ってオペラハウスの見えるところまで行って写真を撮り、芝の丘をのぼってミルソンズポイントの電車の駅まで歩く。ここでウォーキングが終了。

スマホのデータによると歩いた距離はトータルで13.5km。
炎天下にしてはまあまあ歩いただろう。

これからは帽子がいるかもね、となんとなく思った。




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