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思ったより、この世界は悪くないよ


退院してから調子はいいどころか、まあまあ悪いのが正直なところだ。そこを隠さないで素直になりたい、なってみせたい、と意気込んで夏の暑さにバテているセミの鳴き声があまり聞こえない今年の7月。セミも引きこもりなのか、それとも早い梅雨明けからの季節感覚の勇み足のような感情なのか。しかし、セミには申し訳ないが夏の実感に絶望するので大人しくしててほしいところだ


退院数日前に夜勤だった看護師と話していた(内容はあえて再現度を落としておこう、本来の会話は私と医療者にとどめて、ここはニュアンスで)

看護師『 彩璃さん、本当に大人になったし、成長したよね 』

彩璃「あの時は本当に色々あったから、本気で20歳で終わらそうと思ってた」


そう、その看護師さんは私の解離症状が顕著になった時期を当時の入院病棟で見ていたひとりだった。担当看護師ではなかったものの、不調時に対応してくれていたことが多かった、葛藤や悩みに寄り添ってくれていた看護師だった。そして、約2年半経ち再びお世話になったのが今回の入院だった

『 そうだったんだね。でも死なずに乗り越えて大人になったのを見れて話せて嬉しいよ 』

「今は”あの時死ななくてよかった”って思う。辛かったけれど、人生の経験と価値観や視野を広げるきっかけになった」

『 もし、あの辛くて苦しかった当時の彩璃さんに今の自分が声をかけてあげるなら、なんて声かける? 』

突然振られた質問に動揺したし、咄嗟にレスポンスできる内容でなかったので1分以上は「う〜〜〜ん…(悩)」と悩んだ。結構難しい質問だったが

「なんやかんやで " 思ってるより、この世界は悪くないよ " って言うかな。すべてが良いことではないけど、悪いことだけじゃないから」

『 彩璃さんのたくさんつらい思いした時期も見ていたからその言葉聴けて嬉しいし、私もその言葉自分にかけたいと思ったよ! 』

その看護師は目を輝かせ、心から喜んでいたことが私にも伝わったし、私もそう言ってもらえるまでに成長できたことに自分の言動ながら、喜びも感じた。成長は自他に認められて認めてこそ、だと実感した。相互的肯定は双方の糧や経験、価値観に影響がある、そんな気がした

それは私の自己陶酔だとしても、だ

自分が変わることって自分だけが変わることではないのかもしれない。自分が変わる事は、きっと、変えていく一歩、変わっていく握手、のように思う。自分が変わろうと思う、その変化こそは序章の、例えるなら挨拶。でもそれは人見知りだった人がする大きな成長の挨拶。これから変わっていく、変えていくきっかけ

自分が変わるのは、自己完結でなく、他者から見れば「変わった」ことの一つ。それはパズルをしているように。はじめの縁を、基礎を作るための、探していたパズルのピースを見つけること。周りを固めること。そこから埋めていく手立てを、ピースを見つけること。きっと「変わっていく」「変えていく」ことは次第に埋めていくパズルのピース

この思っていたより悪くないこの世界できれいなピースも汚れたピースも完成したらきれいな一つの絵になるよ、きっと


案外悪くないよ、

世界も、あなたも、

そして、わたしも

過去も、未来も。



2022/07/09  BY。彩璃