ラジャー【小説】
放課後、教室には誰もいない。
僕は誰もいない空間が好きだ。
だからと言って理由もなく放課後残っているわけではない。
野球部が終わるのを待っている。
正確には野球部のマネージャーを待っている。
僕は英語が得意で語彙力には自信がある。
そんな僕を辞書代わりに放課後勉強するのが彼女の日課だ。
え、彼女のことが好きかって?
好きとか嫌いとか、そういうんじゃない。
なんて言ったらいいのかな。
貢献することに喜びを感じる相手、ではある。
そしてもう1人。
僕とマネージャーをつなげた野球部員。
彼が部室から帰ってこれば、部室が空になった証拠だ。
ほんの数分。
ほんの数分だけ、僕とマネージャーは一緒の時を過ごす。
そして空になった部室で着替えて整頓して帰るのだ。
そう、頭の中を整頓して。
私が何を整頓するかって?
恋愛心と英語の勉強を整頓しないと、身が持たない。
え?彼のことが好きかって?
好きっていうよりは、大好き💕
彼はどう思っているか謎ではある。
数分間私と一緒の時を過ごしたいのか、
と思えば、男同士で楽しく話している。
私は単なる繋ぎかも。
ちょうど時間があるから構ってもらっているだけかもしれない。
私から告白?
そんなこと出来ない出来ない。
でも友達に頼めば…。
俺は「いい人」なのか「どうでもいい人」なのか。
マネージャーに頼まれて、休みに3人で会うことになった。
3人というのは、
野球部員の俺と、
野球部のマネージャーと、
帰宅しない帰宅部員の親友だ。
正直俺は何やってんだか。
親友に頼まれてこうなったのなら話はわかるが、
マネージャーに頼まれてこうなるとは。
つまりは俺はマネージャーのことを
大事な女子友達と思っている。
友達以上親友未満、つまりは完全に友達だ。
帰宅部員とマネージャーが一緒になってくれたら、
嬉しいような寂しいような。
とにかく2人の役に立てればと、
時を見計らって、「用事を思い出した」と途中で抜けた。
彼女はそれを見て(ラジャー)と仕草をした。
伝わっているようだ。お邪魔虫はそろそろ消えていい頃か…。
「じゃあ帰ろうか、なんて言うとでも思った?」
と言われた僕はうまい返しもできずに、
「僕もキミのウチに帰るんじゃないの?」
と、気を効かせた。
「何か命令して」
と言われても、困る。
ちょっと時間を頂いて、
「もう5分早く帰って来れないかな」
と言った。
どうやら2人で英語をする時間が気に入っていたようだ。
彼女はしばらく考えた後、
「ラジャー」と言った。
「その代わり、〇〇〇して💓」
と要求される。まぁ彼女の家に通されるわけだから、渋々でもなく、
「ラジャー」と返した。
そんな恋の始まりの甘い誘惑に
心底浸かっていたかったのだ。
しかし急展開する、恋愛エピソードに
作者も困惑気味であるw
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