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なぜバイエルン、ドルトムントは国内移籍が多いのか。第2部

Lemです。これまでの投稿を見てくださっている方ならわかると思いますが、欧州全体で見た時にバイエルンやドルトムントが突出して国内クラブからの移籍が多いわけではない。もちろん数ではなく、例えば5位以上のチームからの獲得に注目するとバイエルンとアトレティコ・マドリーは他の欧州のクラブと比べると多いですが、それでもアトレティコ・マドリーはそのように言われない。

今回はあえてバイエルンやドルトムントの国内移籍を多いとした上で、なぜ多くなるのか、逆に他のリーグはなぜ多くならないのか。ここ5年の国内移籍選手の詳細とリーグルールを参考に考えていきたいと思います。

初めに

これらの情報はTransfer marktを参照しています。また、今回セリエA、リーグ・アンは含んでいません。

また、これは考察に近いです。データと共に紹介しますが、普段ブンデスを見ている私目線での考えとなるので、情報や知識の偏りはあります。この情報を見て、それぞれの考え方や見解が生まれることを望んでいます。

説明

主力と非主力の基準はリーグ戦で1800分以上出場している選手を主力、1800分未満を非主力としました。ただ、1806分といったギリギリ1800分を超えている選手は非主力としました。その点ご了承ください。

また、今回チーム名を記載していません。その代わりに前年度前所属チームのリーグ戦成績を載せています。その意図としましては、ネームバリューで判断してほしくないという意図があります。例としましてはドルトムントに17/18シーズンにレヴァークーゼンから移籍してきたトプラク、ライプツィヒに17/18シーズンにレヴァークーゼンから移籍してきたカンプルはブンデスリーガにおいて毎年上位に食い込むレヴァークーゼンからの移籍であり、上位チームからの獲得に名前を見ると思いますが、16/17シーズンのみレヴァークーゼンは順位を落とし、12位となっています。このことからネームバリューが与える影響を除くために今回チーム名は記載されていません。

今回CL圏チーム、EL圏チーム、1部中位チーム、1部下位チームと記載されていますが、その基準については、
CL圏→1位~4位
EL圏→5位~6位
1部中位チーム→7位~11位
1部下位チーム→12位~
としています。
かなり下位チームが多くなってしまいましたが、初めにブンデスリーガを基準に資料を作成しており、5位までを上位としていた関係でこのようにしました。その点もご了承ください。

説明が長くなりましたが、今回はチーム毎の情報を掲載します。2よろしくお願いいたします。

比較その1:自国籍選手について

ここでは、国内移籍選手のうち、自国籍選手(リーグがある国の国籍を持つ選手)がどの順位のチームから移籍してきたのか。移籍金はいくらだったのか。フリー移籍は何人であったか。主力であったのかそうでなかったのか。リーグ単位で比較していこうと思います。より詳細が見たい場合は1部を見て頂くと詳細を確認できます。

用語説明
(主)→前所属チーム主力選手
(非主)→前所属チーム主力ではない選手
(フ)→フリー移籍
(ロ)→ローン移籍

ブンデスリーガ
ドイツ国籍保持選手21人
主力選手13人

CL圏(主)5人(フ2人)→58.00m€(バイエルン4人(フ2人)、ドルトムント1人)
EL圏(主)0人

1部中位(主)5人→70.50m€(バイエルン1人、ドルトムント4人)
1部下位(主)2人(フ1人)→12.00m€(バイエルン1人(フ1人)、ドルトムント1人)
2部上位(主)1人(フ1人)→0m€(バイエルン1人(フ1人))
非主力選手8人
CL圏(非主)3人(ロ1人)→37.5m€(ドルトムント3人(ロ1人))
1部中位(非主)2人(フ1人)→0.5m€(ドルトムント1人(フ1人)、ライプツィヒ(1人)
2部上位(非主)2人(フ1人)→3.0m€(バイエルン1人、ライプツィヒ1人(フ1人))
2部下位(非主)1人→0.35m€(ライプツィヒ1人)

ブンデスリーガについて。ブンデスリーガの対象クラブで例外的なクラブはライプツィヒ。ドイツ国籍を持つ選手であり、主力であった選手の獲得、上位チームからの獲得は0人。詳細を見て頂くとわかりますが、3人中2人がU19の選手であり、移籍金をかけて獲得するといったことはここ5年で0人。一方バイエルン、ドルトムントはドイツ国籍を持つ選手を上位や中位チームを中心に主力であった選手を獲得している。

プレミアリーグ
イングランド国籍保持選手22人
主力選手13人
CL圏(主)1人→
52.70m€(シティ1人)
EL圏(主)1人→50.20m€(チェルシー1人)
1部中位(主)3人→221.30m€(チェルシー1人、ユナイテッド1人、シティ1人)
1部下位(主)5人(ロ1人)→179.40m€(アーセナル3人(ロ1人)、ユナイテッド1人、チェルシー1人)
2部中位(主)1人→17.80m€(ユナイテッド1人)
2部下位(主)2人(ロ1人)→1.85m€(リヴァプール1人、シティ1人(ロ1人))
非主力選手9人
CL圏(非主)1人(フ1人)→
0m€(リヴァプール1人(フ1人))
EL圏(非主)1人→
38.00m€(リヴァプール1人)
1部中位(非主)1人(フ1人)→0m€(ユナイテッド1人(フ1人))
1部下位(非主)3人(フ2人)→
1.70m€(チェルシー2人(フ2人)、ユナイテッド1人)
2部中位(非主)1人(フ1人)→0m€(リヴァプール1人(フ1人))
4部上位(非主)1人→2.80m€(チェルシー1人)
ローンからのフリー1人→0m€(シティ1人)

プレミアリーグについて。まずローンからフリーについてですが、ローン移籍から買取義務、買取OP付ローン移籍をせず、ローン移籍の際の優先交渉権がない場合はカウントを1としていますが、上記の場合ではないためスコット・カーソンを2回表記しています。

プレミアリーグは中位以上の主力選手の獲得が5人とブンデスリーガの10人と比較しても非常に少ない。また、自国選手の一人あたりの移籍金が非常に高く、下位のチームからの移籍であってもブンデスリーガの上位チームからの獲得並みかそれ以上の移籍金を払って獲得していることが分かる。

ラ・リーガ
スペイン国籍16人
主力選手11人
CL圏(主)1人→
35.60m€(アトレティコ1人)
EL圏(主)3人→
35.50m€(バルセロナ1人、アトレティコ2人)
1部中位(主)3人→
75.00m€(レアル1人、アトレティコ1人、バルセロナ1人)
1部下位(主)3人→27.5m€(レアル1人、アトレティコ1人、バルセロナ1人)
2部中位(主)1人→1.75m€(レアル1人)
非主力選手5人
CL圏(非主)3人(ロ1人)→54.0m€(レアル1人、アトレティコ1人、バルセロナ1人(ロ1人)
2部中位(非主)1人→17.5m€(バルセロナ1人)
2部下位(非主)1人→2.50m€(レアル1人)

ラ・リーガについて。全体的に見るとブンデスリーガと非常に似ている。しかしフリー移籍0人ということはブンデスリーガとは大きく違う特徴である。また、ブンデスリーガでは上位チームからの獲得8人中バイエルン4人(主力4人)、ドルトムント4人(主力1人、非主力3人)だったのに対してラ・リーガは上位チームからの獲得7人中4人がアトレティコ・マドリーと上位からの獲得はアトレティコ・マドリーが目立つ。

比較その1から考えられること

3リーグを自国籍保持選手という観点で比較するとプレミアリーグにおいて上位チームからの獲得が少ないのは少ないのではなく獲得できないからではないかと考えます。EL圏以上のチームからの主力選手は2人とも50.0m€を超えており、1部中位チームからの獲得であるマグワイアは87.00m€、同じく1部中位チームからの獲得であるグリーリッシュは117.50m€、1部下位チームからの獲得であるベン・ホワイトは58.50m€などなど上位チームからの獲得ではなくてもイングランド国籍を持つ選手の価値というのは非常に高い。また、2部以下からの獲得も非常に多い。一方ブンデスリーガやラ・リーガは上位チームからの獲得であっても高くても30.00m€前後とプレミアリーグの下位チーム主力選手の獲得よりも安価である。このことからプレミアリーグにおけるイングランド国籍保持選手の価値は非常に高騰しており、上位チームからの獲得は非現実的なものになっているのではないでしょうか。

このように、徐々に視野を広げ、視点を増やしていき、考察の幅を広げていきたいと思います。上記の考察はあくまで自国籍選手にフォーカスした結果から得られる考察です。皆さんはどう感じますか?

次の比較に行きます。

比較その2:自国籍非保持選手について

ここでは逆に国内移籍選手のうち、自国籍非保持選手(そのリーグがある国の国籍を持っていない選手)がどの順位のチームから移籍してきたのか。移籍金はいくらだったのか。フリー移籍は何人であったか。主力であったのかそうでなかったのか。リーグ単位で比較していこうと思います。より詳細が見たい場合は1部を見て頂くと詳細を確認できます。

用語説明
(主)→前所属チーム主力選手
(非主)→前所属チーム主力ではない選手
(フ)→フリー移籍
(ロ)→ローン移籍

ブンデスリーガ
ドイツ国籍非保持選手11人
主力選手10人

CL圏(主)2人→57.5m€(バイエルン2人)
EL圏(主)2人→48.5m€(ドルトムント1人、ライプツィヒ1人)
1部中位(主)2人→35.0m€(ドルトムント2人)
1部下位(主)4人(フ1人)→83.00m€(バイエルン1人、ドルトムント2人(フ1人)、ライプツィヒ1人)
非主力選手1人
EL圏(非主)→1人→
8.00m€(バイエルン1人)

ブンデスリーガについて。まずは前所属チームで主力ではなかった選手が1人しかいなかったこということで、国内移籍選手のうちドイツ国籍を持っていない選手の移籍はほぼほぼ前所属チームで主力である。ということが分かります。ライプツィヒは5人の国内移籍選手のうちドイツ国籍保持選手は3選手中3選手が前所属チームで非主力もしくはユースからの移籍であり、ドイツ国籍非保持選手2選手中2選手が前所属チームで主力選手ということでくっきりとわかれましたね。しかしカンプルはドイツ国籍を持っていませんがドイツ国内で育成されているため、CLの協会育成枠選手に該当します。

自国籍選手と比較すると自国外籍選手は11人ということで国内移籍選手の約3割が自国外籍選手ということになりましたね。また、移籍金で比較すると自国籍選手には合計181.85m€、自国外籍選手には合計232.00m€ということで人数は自国籍選手の方が倍近く多いですが、移籍金は自国外籍選手の方が多いということになりました。チーム別で見ると自国籍選手:自国外籍選手がバイエルン44:100.5、ドルトムントが125:88.5、ライプツィヒが0.85:43ということでドルトムントは自国籍選手に多く移籍金を費やしており、バイエルン、ライプツィヒは自国外籍選手に多く移籍金を費やしていることがわかりました。

プレミアリーグ
イングランド国籍非保持選手16人
主力選手11人
CL圏(主)3人(フ1人)
→53.4m€(アーセナル2人(フ1人)、ユナイテッド1人)
EL圏(主)1人→34.0m€(ユナイテッド1人)
1部中位(主)4人→281.85m€(シティ1人、ユナイテッド1人、リヴァプール2人)
1部下位(主)3人→69.0m€(シティ1人、リヴァプール2人)
非主力
CL圏(非主)1人(フ1人)
→0m€(チェルシー1人(フ1人))
EL圏(非主)2人→51.0m€(アーセナル1人、チェルシー1人)
1部中位(非主)1人(フ1人)→0m€(リヴァプール1人(フ1人))
1部下位(非主)1人(フ・ロ1人)→0m€(アーセナル1人(フ・ロ1人)

プレミアリーグについて。まずは1部中位主力選手の獲得の中にはルカク(84.70m€)、1部下位主力選手の獲得の中にはアケ(45.30m€)がおり、この二人はイングランド国籍は持っていないものの、イングランド国内のクラブで育成されているため、ホームグロウンルール(HG)、CL協会育成枠選手に該当する。そのため、移籍金の高騰が見られた。プレミアリーグにおいて異質であったのはリヴァプール。今回対象の5クラブのなかで唯一自国外籍選手に要した移籍金の方が多かった。イングランド国籍を持たず、HG、CL協会育成枠選手に該当しない選手であるファンダイクに84.65m€の移籍金で獲得しており、上記の条件においてダントツの1位。2位はマンチェスター・シティに移籍したマフレズ(67.80m€)、3位はジョッタ、マティッチ(44.70m€)ということでリヴァプールが目立つ。

また、EL圏以上のチームから獲得した7選手のうち、4選手が獲得当時30歳を超えており、残りの3選手も30歳手前と若手の獲得はない。

自国籍選手の獲得と比較すると自国籍選手の獲得ではEL圏以上のチームからの獲得は4選手であったのに対して自国外籍選手の獲得では7人と上位からの獲得が目立った。また、2部以下からの獲得は0という点も自国籍選手の獲得は大きく違う点であった。

自国籍選手の獲得に要した移籍金は565.75m€、自国外籍選手に要した移籍金は488.9m€と中位以上の獲得が自国籍選手が8人、自国外籍選手が11人と自国外籍選手の方が上位からの獲得が目立ったのにも関わらず、自国籍選手の方がより移籍金を要していることが分かった。国籍ではなく、HG、CL協会育成枠選手に該当する選手で分けた場合HG、CL協会育成枠選手に要した移籍金は695.75m€、HG、CL協会育成枠選手に該当しない選手に要した移籍金は358.9m€と約2倍の差がある。

ラ・リーガ
スペイン国籍非保持選手9人
主力選手9人

CL圏(主)4人(ロ1人)→153.00m€(アトレティコ2人(ロ1人)、バルセロナ2人)
1部中位(主)1人→35.90m€(バルセロナ1人)
1部下位(主)2人→20.70m€(アトレティコ1人、バルセロナ1人)
非主力選手2人
CL圏(非主)1人(ロ1人)
→0.00m€(バルセロナ1人(ロ1人))
1部中位(非主)1人→15.00m€(アトレティコ1人)

ラ・リーガについて。まずはCL圏チームの主力選手であったグリーズマンはバルセロナに加入する際に120.00m€の移籍金で加入している。グリーズマンはフランス国籍のため自国籍選手ではないが、ラ・リーガのチームで育成されており、CL協会育成枠選手に該当する。そのため、この中でもかなり高額な移籍となっている。グリーズマンはバルセロナからアトレティコ・マドリーへの完全移籍、アトレティコ・マドリーからバルセロナへのローンで2回カウントされており、CL圏主力選手の4人中2人がグリーズマンとなっている。残りの2人はスアレスとネトであるが、スアレスは30歳を超えての移籍、ネトは移籍の18日後に30歳を迎えているため、プレミアリーグ同様若手の上位クラブからの移籍はない。

自国籍選手の獲得に要した移籍金は249.35m€、自国外籍選手の獲得に要した移籍金は224.60m€であり、僅かに自国籍選手の獲得に移籍金使っているが、CLの協会育成枠選手に該当するかどうかで比較するとCL協会育成枠選手に該当する選手に要した移籍金は355.35m€、CL協会育成枠選手に該当しない選手に要した移籍金は118.6m€と3倍の差がある。レアル・マドリ―が国内移籍選手の全てが自国籍選手・CL協会育成枠選手に該当する選手の獲得であるということも大きな特徴。

比較その1.2から考えられること

まず比較した3つのリーグに共通していたことは国内移籍において半数以上の選手は自国籍を持っている選手の獲得であったということです。そして国籍が移籍金に与える影響は少ないということも3つのリーグに共通している部分であったと思います。その根拠としましてはブンデスリーガでは見られませんでしたが、グリーズマンやルカク、アケといった選手はそのリーグの国籍を保持していませんでしたが、その地域で育成された選手であり、HGやCL協会育成枠に該当する選手であったので、移籍金がかなり高額なものになっていました。

3つのリーグを比較し、バイエルンやドルトムントはなぜ国内移籍が多いのか考察していこうと思います。

まず、最初に私が目を付けたポイントとしましては移籍金と年齢です。

図1 EL圏以上のチームからの獲得であり、移籍金が発生した全ての国内移籍

図1はEL圏以上のチームからの獲得であり、移籍金が発生した全ての国内移籍を対象として、その選手の年齢、移籍金を平均化したものです。フリー移籍はこのデータには反映されてません。(年齢は移籍当時のものではなく、移籍してきたシーズンに迎える年齢となっております)

プレミアリーグは対象選手が8人、最高年齢が33歳(ダヴィド・ルイス)、最低年齢が24歳(チェンバレン)、最高移籍金が52.70m€(ウォーカ―)、最低移籍金が8.70m€(ダヴィド・ルイス)。

ラ・リーガは対象選手が9人。最高年齢が34歳(ルイス・スアレス)、最低年齢が20歳(テオ・エルナンデス)、最高移籍金が120.0m€(グリーズマン)、最低移籍金が1.50m€(アントニオ・アダン)。

ブンデスリーガは対象選手が9人。最高年齢が31歳(フンメルス)、最低年齢が20歳(キュイザンス)、最高移籍金が42.5m€(ウパメカノ)、最低移籍金が8.00m€(キュイザンス)。

最高移籍金はラ・リーガのグリーズマン、平均移籍が最も高いのはプレミアリーグ、平均年齢が最も高いのはプレミアリーグということで年齢、移籍金を加味するとブンデスリーガは国内移籍においてCLやELに出場するようなチームからの獲得であり、比較的若い選手であっても他のリーグと比べると安価に選手を獲得していることがわかります。

少し視点を限定します。

図2 EL圏以上のチームからの獲得であり、主力であった選手の移籍金が発生した全ての国内移籍

図2 EL圏以上のチームからの獲得であり、主力であった選手の移籍金が発生した全ての国内移籍を対象とし、その選手の年齢、移籍金を平均化したものです。

プレミアリーグは対象選手が5人、最高年齢が33歳(ダヴィド・ルイス)、最低年齢が24歳(チルウェル)、最高移籍金が52.70m€(ウォーカー)、最低移籍金が8.70m€(ダヴィド・ルイス)。

ラ・リーガは対象選手が7人、最高年齢が34歳(ルイス・スアレス)、最低年齢が22歳(ロドリ)、最高移籍金が120.00m€(グリーズマン)、最低移籍金が1.50m€(アントニオ・アダン)。

ブンデスリーガは対象選手が7人、最高年齢が30歳(ヴァーグナー)、最低年齢が22歳(ズーレ)、最高移籍金が42.5m€(ウパメカノ)、最低移籍金が13.00m€(ヴァーグナー)。

この条件においてもプレミアリーグは全体的に移籍金が高く、平均年齢も最も高く、ブンデスリーガは全体的に移籍金が低く、平均年齢も低いことがわかる。

さらに視点を限定してみます。

図3 EL圏以上のチームからの獲得であり、主力選手かつ協会育成枠に該当する選手の移籍金が発生した国内移籍

図3はEL圏以上のチームからの獲得であり、主力選手かつ協会育成枠に該当する選手の移籍金が発生した国内移籍を対象とし、年齢、移籍金を平均化したものです。この条件にするとプレミアリーグでは2人、ラ・リーガでは4人、ブンデスリーガでは3人が対象となる。プレミアリーグではまずこの対象となる選手が2人しかおらず、2人とも50.00m€を超える移籍金を要していることが分かる。ラ・リーガはグリーズマンが全体を押し上げているので平均が高くなっていますが、ブンデスリーガでこの同条件における最高移籍金がブラントの25.00m€であるということと比較すると、やはりラ・リーガのトップクラブ3チームからの絶対的な選手の獲得には120.00m€近く移籍金が掛かることがわかる。

これらの点からプレミアリーグはHG、CL協会育成枠に該当する選手の価値が高く、上位チームの若手から中堅の主力選手にはかなりの移籍金を要するため、獲得が減り、上位チーム同士の国内移籍が少なくなっている1つの要因ではないかと考えました。そしてブンデスリーガにおいてはドイツ人枠、協会育成枠に該当する主力選手であり、上位チームからの獲得であっても移籍金が比較的に安いため、上位チームの協会育成枠に該当する主力選手の取引、獲得が多いのではないかと考えました。

番外編:近年のリーグ順位と上記の比較

ここではあまり深い考察はしません。あくまで箸休めです。

今回対象としている移籍市場は17/18シーズンから21/22シーズンまでです。そして選手成績は16/17シーズンから20/21シーズンまでです。

16/17シーズンから20/21シーズンの各リーグの順位と国内引き抜きの因果関係についてなにかあるのではないかと思い、比較し、考察してみようと思います。

まず、16/17シーズンから20/21シーズンまでに6位以上でシーズンを終えたチームが各リーグいくつあるのか見ていきたいと思います。

ブンデスリーガ

ブンデスリーガは4位以上でシーズンを終えたチームが8チーム、6位以上のチームが11チーム。

プレミアリーグ

プレミアリーグは4位以上でシーズンを終えたチームが5チーム、6位以上のチームが8チーム

ラ・リーガ

ラ・リーガは4位以上でシーズンを終えたチームが5チーム、6位以上のチームが9チーム。

最もここ5年で上位に食い込んだチームが多いのはブンデスリーガで8チーム。次いでプレミアリーグとラ・リーガが5チーム。6位以上ではこちらもブンデスリーガが最多で11チーム、ラ・リーガが9チーム、プレミアリーグが8チームとなりました。

プレミアリーグはここ5シーズンで6位以上のチームの顔ぶれが全く同じであったシーズンが3シーズンあり、国内移籍選手のうち、6位以上のチームからの獲得であり、HGに該当し、主力選手であった選手の獲得はトッテナムから1選手、レスターから1選手、主力であった選手のみの場合でも上記の2人に加えてチェルシー3人、アーセナル1人となっている。チェルシーから移籍した3人は33歳、32歳、29歳と若くなく、HGに該当しない選手であった。

一方ブンデスリーガはここ5シーズンで6位以上のチームの顔ぶれが全く同じであったことは1度もなく、プレミアリーグではここ5シーズンで4回以上6位以上に入ったチームが8チーム中5チームなのに対してブンデスリーガでは11チーム中4チームとバイエルンの10連覇で1強という印象が強い一方でヨーロッパの舞台を目指すチャンスは多くのクラブにある。ブンデスリーガはEL圏以上であり、協会育成枠に該当し、主力であった選手の獲得は5人。シャルケからの獲得が1人、レヴァークーゼンからの獲得が1人、ホッフェンハイムからの獲得が3人となっている。

ラ・リーガは3位以上はここ5年で3クラブが争っているが残り1枠はセビージャもしくはバレンシアのどちらかというのが近年の順位である。ただ、ブンデスリーガ同様ELを目指す戦いは非常に熾烈。ラ・リーガはEL圏以上であり、協会育成枠に該当し、主力選手であった選手の獲得は5人。その5人はセビージャから1人、ビジャレアルから1人、べティスから1人、バルセロナからの移籍が1人、アトレティコ・マドリーからの移籍が1人となっている。

この観点から比較すると近年のブンデスリーガにおける上位チームからの獲得はシャルケ(1/5)1人、レヴァークーゼン(4/5)1人、ホッフェンハイム(3/5)3人であり、上位に定着しているチームからの獲得は1人のみ。その移籍金は25.00m€となっている。プレミアリーグはトッテナム(4/5)、レスター(2/5)であり、上位に定着しているチームからの獲得はこちらも1人のみ。その移籍金は52.70m€。ラ・リーガはセビージャ((4/5)、ビジャレアル(3/5)、べティス(2/5)、バルセロナ(5/5)、アトレティコ・マドリー(5/5)でとなり、上位に定着しているチームからの獲得は3人であるが、グリーズマンが2カウント分であり、最高移籍金が120.00m€となっている。

そして全体の獲得を見ても5シーズン以内に4回以上6位以上でシーズンを終えていないクラブからの獲得はプレミアリーグが4/11、ラ・リーガが5/12、ブンデスリーガが8/13であった。

個人の移籍理由にフォーカスした場合、ドルトムントへの移籍のみになってしまいますが、フンメルスはバイエルンからドルトムントに移籍する際にマンチェスターユナイテッドからドルトムントよりもより高い待遇を提示されていた。しかし、マンチェスターユナイテッドはCL出場権を持っておらず、フンメルスはCLでの戦いを望んだこともあり、ドルトムントへ移籍した。ブラントの場合も少し似ている。移籍する前年度レヴァークーゼンは最終節までCL圏を争っており、結果として5位に終わったため、CL圏を逃した。そのことも影響し、次の年ドルトムントへ移籍した。このことからCL権を安定的に確保できるかどうかは選手の決断に大きな影響を与え、ここ5年でCLに出場し続けているクラブはラリーガ3チーム、プレミアリーグ2チーム、ブンデスリーガ2チームとなっており、ここ5年で3回以上に限定した場合でもラリーガ4チーム、プレミアリーグ5チーム、ブンデスリーガ3チームとブンデスリーガは安定的にCLに絡めるチームは多くない。このことももしかすると影響し、有望な国内選手はバイエルン、ドルトムントに集まっているのかも…

プレミアリーグ、ラ・リーガにおいて上位クラブからの国内移籍が少ないのはもしかすると上位チームが固定化されてしまっていることが1つの要因ではないでしょうか。

最終考察

これらのことを踏まえてなぜバイエルンやドルトムントは国内移籍が多いのか。ということについて私なりの考えをまとめます。

私の考えの結論から言いますと国内獲得が多い理由は制度的な理由ではないと思います。確かにプレミアリーグは25人の登録制限があり、その中でさらにホームグロウンルールを課せられているので、優秀なホームグロウンルールに該当する選手は価値が高騰しており、下位や中位の主力選手の獲得であっても移籍金が100.0m€を超えるような移籍もある。そして、CLや EL圏からの獲得で特にここ5年で毎年6位以上でシーズンを終えているクラブからのホームグロウンルールに該当する主力選手の獲得は0、CL、EL圏のホームグロウンルールに該当する主力選手であっても50.00m€であり、ブンデスリーガの移籍と比較してもかなり高額なことがわかる。一方でブンデスリーガとラリーガを比較するとラリーガの3強からの引き抜きにおいては、グリーズマン120.0m€と言ったかなり高額な移籍があり、これはブンデスでは見られない。このことからやはり上位チームのCLの協会育成枠に該当する絶対的な主力の引き抜きにはブンデスと比較すると高額な移籍金がかかることがわかる。ラリーガは登録上限25人はあるが、ホームグロウンルールはなく、外国人籍選手の登録に制限をかせられている。CL、ELの協会育成枠については最大で4枠までのため、ブンデス同様登録ルールによる価値の高騰の影響は小さい。

では、登録ルールによる価値の高騰の影響が薄いラリーガとブンデスリーガにおいてなぜブンデスリーガのバイエルンとドルトムントが国内移籍が多いのか。

まずは自クラブで育成された選手の割合について。こちらのデータはCIES Football Observatoryを参照しています。

5大リーグで最もクラブで育成された選手の割合が高かったのはラ・リーガで20.9%、次いでリーグ・アン17.2%、プレミアリーグが12.7%、ブンデスリーガが12.0%、セリエAが8.7%となりました。この数値からわかるようにラ・リーガのクラブは自クラブで育成された選手を非常に重要視する傾向にある。国内クラブから優秀な選手を引き抜くのではなく、自クラブの優秀な若手選手を積極的に起用しているのではないでしょうか。このことかラ・リーガのクラブは国内移籍がブンデスリーガのクラブに比べると少なくなっているのではないかと考えます。

次にブンデスリーガのドイツ人枠について。ブンデスリーガでは登録に制限がなく、外国人枠もない代わりに、ドイツ人枠を設けている。ドイツ人枠とは、簡潔に説明するとドイツ国籍を持つ選手を12人以上登録しなければならないというルールである。ブンデスリーガでは登録枠に上限がないため、登録のみによる弊害はプレミアリーグに比べるとかなり少ない。登録に制限のないルール下では機能しないように思われるこのドイツ人枠であるが、ブンデスリーガ、ドイツという地域の特徴によって実は大きな意味を持つ。ドイツでは「50+1」というルールがあるように、伝統的なフェラインを強く支持し、地元住民、サポーター、観客を非常に重要視し、健全経営であるということも非常に重要視される。

では、なぜこれらのことが登録上限がない中でのドイツ人枠を意味のあるものにしているのか。ドイツ人枠には2つの大きな意味がある。まず1つ目は自国選手を大切にすることによってサポーターの地元意識を尊重、刺激することに繋がっているという点である。ドイツでは非常に地元意識が強いと言いましたが、過去にはブンデスリーガのクラブではないですが、先発メンバーに自国選手がいないということがあり、それに対して批判が起こった。このことからドイツでは地元意識の強いサポーターの反感を買わないようにし、自国選手を大切にしている。また、自国選手が多いということは地元意識の強い観客・サポーターにとっては地元意識を非常に刺激するものとなり、観客動員数増加にも繋がる。2つ目はドイツ人枠を設けることによって外国人籍選手の獲得が自然に抑制され、経営の健全化に繋がるという点である。この点も健全経営で知られるブンデスリーガならではではないか。これらの点からブンデスリーガでは自国選手を大切にすることがサポーター、観客、地元を大切にすることに繋がっており、登録上限のない中のルールであっても効力のあるルールとなっている。また、ライプツィヒの国内移籍が非常に少ない点もこのルール、地域柄が非常に影響している。ライプツィヒは旧東ドイツ地区にあり、東西ドイツ統一後は1部リーグで継続して成績を残せるような強いクラブは存在していなかった。ライプツィヒは元々ドイツサッカー連盟が設立された場所であり、ドイツ初の全国大会で優勝したチームの地元でもあった。元々サッカーに対して非常に情熱を持ったサポーターが多かったが、強いチームがなく、ライプツィヒという地域のドイツ国内における競争力は非常に低いものになっていた。このことから競争力を持った強いチームの誕生は非常に歓迎された。サポーターは他のクラブとは異なり、地元意識や地域密着を期待しているのではなく、競争力を持った強いチームであり続け、経済的な成長を期待している。この点がライプツィヒの国内移籍が非常に少なくなっている点の一つだと考える。(よく言われる国内クラブから嫌われているという要因もあると思います)

このことから①登録上限や登録ルールによる自国選手の価値の違い、②経済規模、③ラリーガのユースに対する意識、④ブンデスリーガのドイツ人に対する意識。非常にざっくりにですが、この4点さらに、追加するなら⑤上位チームの非固定化。この5点によって他のリーグに比べて、ブンデスリーガのバイエルンやドルトムントは国内移籍が多くなっていると考えます。

最後に

かなりの長文になってしまい簡潔さに欠け、わかりにくいものになってしまったことをお詫びします。申し訳ありません。

ですが、これらが私のバイエルンやドルトムントの国内移籍が多いと考える現段階の全てです。

みなさんはこれらのデータからどう感じましたでしょうか。よかったらご意見お聞かせ下さい。

考え方や感じ方、受け取り方は100人見たら100通りあると思います。また、それは日々変わっていくものでもあると思います。私自身も何か新しい発見や知識、視点を得て、よりよい考え方ができるようにしていきたいと思っています。

最後まで読んで頂いた方本当にありがとうございます。

では、また。

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