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揚蒲鉾の素朴な味わい(枝豆天、ねぎ天、ピリ辛いか天) 南アのスパークリングワインの泡と酸味の刺激

海外から帰国後、最初のシーフードは何にしよう。短期の滞在ではあったが帰国直後の習性で和食が欲しくなる。どうしても海外滞在中は外食が多くなり、料理の味付けも濃いので、ジンワリ染みるような素朴な一品を求める。

家路への駅構内で、味の浜藤“てとて”という魚中心の和惣菜専門店を発見。ちょうど気分に合うお惣菜を発見。お舟に乗った揚蒲鉾5点盛り(756円)。ピリ辛いか天、いわしねぎ天、ねぎ天、枝豆天、もろこしボールと、いかにもビールに合いそうなラインアップ(が、いつも通りワインに合わせる)。

揚がった蒲鉾の弾力のある食感の奥から、練り物の白身魚の素朴な風味がジンワリと広がる。この素朴な味わいに特にネギの爽やかな香味、ピリ辛イカのアクセントが口内に楽しい刺激。

セラーから取り出したのは南アのスパークリングワイン(シャルドネ品種)と長野県の白ワイン(ソーヴィニョン・ブラン品種)。

長野のソーヴィニョン・ブランの爽やかな香りがネギや枝豆とよく繋がりそうと想像して合わせたが、なぜか生臭みが立ちあがってしまった。ワインの繊細さが、生臭みの立ち上がりを押さえきれなかったか。もう少し強めの風味のソーヴィニョン・ブランだとまた違ったかもしれない。一方で南アのスパークリングワインは期待通り。熟成感による複雑さでワインの主張がやや強かったが、それでも泡と酸味の刺激の調和は文句なし。

さて、揚蒲鉾とそれぞれのワインの相性について詳しく。


グラハム ベック, ウルトラブリュット, 南アフリカ シャルドネ, 2016, 12.5%, 3,529円
Graham Beck, Ultra Brut, South Africa

1991年より生産スタート。ブドウ畑のある南ア ロバートソンは、ウエスタン・ケープの中で石灰岩質土壌の濃度が高いシャルドネの銘醸地。白亜質石灰岩の土壌が広がるシャンパンに土質が近しい。そして醸造設備はシャンパーニュから取り寄せ。南アフリカで本場シャンパーニュに極めて近い条件下で醸造。2016ヴィンテージで7年熟成。
香りにはリンゴのコンポート、ジャムにやや厚めの樽香とヘーゼルナッツ、ブリオッシュ、アカシアなどの黄色い花や蜜も微かに。上品でエレガント、シャンパンにみまがうフレーバー。
味わい、まず口に当たる泡の数がきめ細やか。キレのあるシャープな酸味、ややグリップのある充実の果実味は力強さと同時に繊細なエレガンスも。極めて上品なフィニッシュ。最高のコスパ。シャンパンを意識して作りつつ、しっかりとシャンパンに負けない味わいは立派。

枝豆天にワインを合わせる。ワインの厚み、熟成による奥行きが圧倒的のものの、天ぷらの食感に泡の刺激と酸味が心地よく箸が進む。相性: ★★★☆☆

ねぎ天に。練り白身魚の天ぷらの素朴な風味に、ネギの香味が爽やかさを与えて料理にメリハリ。料理にメリハリがついた分、ワインの酸味が繋がり心地よく一体化。相性: ★★★☆☆

ピリ辛いか天に。揚蒲鉾に唐辛子のアクセントが入り、白身魚とイカの風味にメリハリをつける。熟成かのあるワインの厚みが唐辛子の辛味を包み込み、そのままイカの風味にも寄り添う。相性: ★★★☆☆


ベリービーズワイナリー, Zephyr, Sauvignon Blanc, 長野県塩尻市(ブドウは安曇野産), 2020, 12%, 2,420円

日本のおへそ(belly)に位置する塩尻から、輝くビーズの輪のように、ぶどうやワインを介して人をつなげていきたい、との思いが込められたベリービーズワイナリー。2018年創業。エチケットがスタイリッシュでおしゃれ。品種ごとにイラストを使い分ける。実際のお味も素晴らしいクオリティのソーヴィニョン・ブラン。
香りにはカボス、スダチ、ライム。柑橘の果皮。穏やかで繊細、微かに白桃や梨。セルフィーユ系の明瞭なハーブ香。フレッシュでピュア、コンパクトに涼やかに品種個性を凝縮。
風味はみずみずしい口当たり、明瞭な酸味、前半からビターネスが広がり一貫してドライでフレッシュ。前菜の葉物系のサラダメニューにぴったりのスターターワイン。

枝豆天に。ワインが白身魚のすり身の中の生臭みスイッチを押してしまう。ワインの繊細さが思わぬ方向に作用してしまったか。もう少し押し込みの強いワインならまた違ったかもしれない。相性: ★★☆☆☆

ねぎ天に。ネギの香味がワインの爽やかな柑橘香に繋がるものの、やはり白身魚のすり身の中の生臭みスイッチを押してしまう。相性: ★★☆☆☆

ピリ辛いか天に。唐辛子の辛味にソーヴィニョン・ブランの爽やかさ、酸味が調和。辛味が料理を包んでいる分、ワインが合わさっても生臭みが立ちあがらない。相性: ★★★☆☆

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