名ばかりFPが、自分の人生とお金に思いを馳せた日
ライフプラン表って知ってます?
ファイナンシャルプランナー(FP)に家計相談をすると、必ず作る人生の計画表。自分や家族が何歳のときにどんなイベントがあるのか、その時にいくらかかるのか、が一目でわかる表。
あれ、私、苦手なんです。
数字がばーっと並んでいるのを見ても、ぜんぜん自分ごとに思えなくて。ピンとこない。
かつて私が銀行で働いていた時、窓口でパパっとライフプラン表を作ってお客さまに見せられるようなシステムが導入されました。
ライフプランを確認しながら、お金の運用の必要性を感じてもらう的な話をするために。
それまでのように投資商品を売っているだけじゃ時代に追いつかなくなって、もっと総合的にお客さまに寄り添ってライフプランから一緒に考えましょう!っていう試みです。
仕事のためにFPの資格とってるから知識はある…...程度のライフプランニング。
まあ、導入されはじめたころに辞めちゃったので、「こんなこともするようになるのね(やることどんどん増えるわ…...)」って思ったくらいだったけど。
そんな思い出のライフプラン表(しかも苦手なやつ)が、ストーリー仕立てになって私の前に現れた!
あの数字の羅列みたいな表にキャラクターが登場して、思い思いに生活しているところを眺めているみたい。
え、面白いじゃん!
っていうのが、『三千円の使いかた』を読み終わって真っ先に思ったことでした。
この本、お金の実用書かと思ってたんだけど、違ったわ。小説だった。
だからこそ、自分の人生のお金について思いを巡らせるのにぴったりなのかもしれない。私みたいに数字を見ただけではイメージが広がらないタイプの人には。
自分ごととしていかにリアルに想像できるかって、大事でしょ。
これから自分に起こるだろうこと
『三千円の使いかた』には4人の女性が登場する。
夫に先立たれ、趣味の園芸を楽しむ祖母(貯金一千万円)。
家事を一手に引き受け、習い事にも熱心な母(貯金100万円弱)。
証券会社を退職し、節約熱心なポイ活主婦の長女(貯金600万円)。
就職して、理想の土地で一人暮らしをしている次女(貯金30万円)。
別々に暮らしているけれど、この4人は家族。この小説は、御厨(みくりや)家の女性たちの物語です。
この中で、私と共通点があるのは圧倒的に長女。
金融機関勤務の経験があり、子どもがひとりいる。年齢はたぶん10歳くらい私の方が上だけど、4人の中ではいちばん近い。
それなのに、私がいちばん共感できなかったのも長女だった。
境遇が似ているからこそ、ささいな違いが気になるからかな。
たとえば、食費を2万円に切り詰めるのに成功しているのは、母や祖母の家にしょっちゅう遊びに行って援助してもらっているおかげも大いにある、だとか。
夫のボーナスは全額貯金して、1千万円貯めることを目標にしているだとか。
私は彼女のように、コツコツ努力できる性格ではないし、自分から人に頼るのは苦手(親から送られてくる食べ物なんかはありがたく頂戴するけど)。
それよりも、これから自分に起こるだろう年代を生きる、御厨家の母や祖母の物語の方にぐっと引き込まれました。
子どもが巣立ったあと、老後のお金を考える時期に浮上する健康の問題や、夫との関係。
年金をもらうようになってからの生活費。貯金を取り崩していくことの不安。
そんなことが御厨家の母や祖母の心の揺れとともに、どどどーっと私の中に流れ込んできた。
ちょっと、私、もっと自分の人生のお金のこと考えなくちゃいけないんじゃない!?
こんな私でも今まで何も考えてこなかったわけじゃない。運用もしているし、預金もある。
だけど、なんていうか、あまり真に迫ってなかったなって思った。真剣味が足りなかったなって。
育ってきた環境は影響するようでそうでもない
『三千円の使いかた』には、家計簿の話がちょいちょい出てくる。
登場人物の中で家計簿をいちばんしっかりつけているのは、御厨家の祖母。その昔、婦人之友社から出版された羽仁もとこ監修の家計簿からその歴史が始まる、なんて話を孫にするくらいに大事な習慣となっている。
ここで、またもや私の現実と物語がリンクした。
その、羽仁もとこ監修の家計簿って、私の母がずーっとつけていたやつだったから。
私が小さいころから母が家計簿をつけている姿を見ていたし、一時期は婦人之友を通じて知り合った仲間と一緒に活動していたことも知っている。
その後、パソコンが一般家庭に普及するとともに実家の家計簿は電子化され、今は父がExcelでつけているはず。
正月の帰省中に「これから何があるかわからないから家の資産をまとめたものを渡しておく」と表を見せられたときは本当に驚いた。ここまでちゃんと管理しているんだなって。
そんなふうにお金としっかり向き合って暮らしてきた両親に育てられたのに、私は家計管理がうまくない。
何度か家計簿に手を出したんだけど続かず、家計管理のプロが「一番よくない」と言い切るどんぶり勘定でここまでやってきた。
結婚11年目にしてのっぴきならない出来事が起こり、ようやく今年から家計簿をちゃんとつけ始めたところ。遅っっ!(参考にしているのは、『正しい家計管理』という本。その話はまた今度ね)
銀行に勤めていようが、FPの資格を持っていようが、自分ごとにできなければこんなもんである。
御厨家もそうだけど、同じ家族でも家計管理のやり方や向き合い方が本当にバラバラで、これって親子でもあまり引き継がれないものなのかな。
とくに日本は、お金の話をオープンにしたがらない雰囲気があるもんね。
このままではきっと娘にも何も伝わらない。
いわゆる「お金の教育」を家庭でどうやっていこうか、例にもれずこれまでふわっと考えてきたけれど、ここにもメスを入れなくては。
「なんだ、お金のHowTo本じゃないのか」と一瞬期待が外れたものの、小説だったからこそ、自分のこれからや過去のことにここまで思いを巡らせられたのだと思う。
さて。
「人は三千円の使い方で人生が決まるよ」と御厨家の祖母が言うように、お金の使い方はその人そのもの。
本屋さんで『三千円の使いかた』が文庫本になっているのを発見し、図書館での予約待ちがいまだ50番目なのを確認して、「いま読みたい!文庫本化したならもう買っちゃお!」とレジに向かった私のお金の使い方は、どんなもんだろうか。
私は今このタイミングで読めたことに満足しているし、最初は図書館で借りようと思っていたのに安く買えるのを発見してようやく購入に踏み切るあたりが、なんとも自分らしいなと思う。
ー ー ー
あとがき。
物語は、家族が衝撃的な決断を下して終わる。
この結末、私は納得いかないし、考え直したほうがいいよ!!!って言いたい。
最後に実に意見の割れそうな「お金の使いかた」を持ってくるのね、なるほどなぁ。
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