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逆境を力に変える自分たちらしい戦いで(倉敷商業高校OB 角南堅太郎インタビュー)

兄の背を追い野球の道へ

――野球を始めたきっかけについて教えてください
 野球を始めたきっかけは、4歳上の兄の影響です。自分が幼稚園の頃から兄は小学校で野球をしており、その背中を追いかける形で小中高と全て兄と同じチームに所属して、兄の背中を追っていました。

――ちなみに、チームに入ったのはいつでしたか?
 幼稚園年長の時から兄のチームの練習に混ざって野球をやっていましたね。

――倉敷商業高校への入学の決め手もお兄様だったのでしょうか?
 そうですね。兄の存在が一番大きかったのです。
 また、毎年甲子園出場校が変わる岡山県で、定期的に甲子園に出場していてなおかつ県立だったのが倉敷商業でした。公立で地元の皆さんに愛される、その応援を背に甲子園でプレーしたいという気持ち、そして兄が倉敷商業ではあまり活躍できなかったので、その仇を取るためにも倉敷商業に入学しました。

――他の高校からお声はかかっていたのでしょうか?
 私立高校から何校かお誘いはあったのですが、やはり兄と同じユニフォームを着て、兄の分まで甲子園で活躍したいという思いがあったので、倉敷商業を選びました。

偉大な大先輩の名前にちなんだ練習

――高校時代に掲げていた目標は何でしたか?
 自分たちの代になるまで倉敷商業は春夏通じて8年間甲子園に出場できていなかったので、まずは甲子園に出ることが第一の目標でした。その中でも出て終わりではなくて、全国制覇するということが目標でした。それを常日頃から同級生、先輩、後輩全員で意識してやっていました。

――甲子園を目標としていた当時の思いなどを教えてください
 自分たちが特に意識していたのは、私生活の部分の重要性でした。
 一つは学校全体、生徒全体、先生全員で地域の人に愛されるチームを作ろうということで、朝の練習の合間に野球部員で地域の川の清掃などを行いました。そういった姿を見せることで応援してくれる方々が増えたと思いますし、そういう活動が大きかったと思います。
 もう一つが練習をしていく中で甘い言葉であったりは一切かけないということを意識していました。練習が終わったら仲は良かったのですが、高い目標を掲げている分、練習でミスをしたメンバーがいたら、それがたとえ登下校を一緒にする仲間であっても、その時は気持ちを鬼にして言っていました。それを言われた方も腐らずにそれを真摯に受け止め、それを見返すくらいの努力をするということは意識していました。

――当時の練習で印象に残っているエピソードなどはありますか?
 甲子園が中止になる前の冬の練習ですかね。自分たちが2年生の時の秋の大会で成績を残し、選抜当確という状況での冬の練習は、憧れの甲子園でプレーできるということでモチベーションが高まっていました。キツい練習がほとんどだったのですが、その先には甲子園があるということで笑顔で取り組めていて、それが高校生活の中で一番印象に残っている練習です。

――そうしたキツい練習の中でチームメイトと掛け合った言葉などはありましたか?
 キツい練習だったので身体が疲れてしまうのですが、例えばランニングの得意な選手が不得意な選手の背中を押して一緒に走ってあげるようなことがありました。
 野球はグラウンドに出ている9人、ベンチ、スタンドの全員で戦うスポーツですので、そういったところで「自分だけが上手くいったらいい」という考えの人は誰一人おらず、具体的な言葉はなくともそういった姿勢で見せていました。レギュラー陣が姿勢で示し、レギュラー外のメンバーも負けじと奮起し、支え合う様子が言葉ではなく姿勢で表れていたと思います。

――バットを振る力をつけるために、1日に1001スイングする練習を取り入れたと伺いましたが、その練習について教えてください
 倉敷商業の卒業生である星野仙一さんのお名前にちなんで、そういったメニューを自分たちの代から始めました。最初は慣れないことだったためキツかったのですが、次第に甲子園が近づくにつれて1人1人のモチベーションが上がっていきました。1001スイングをする中でも「1001本振ればいいや」という考えの人はおらず、プラスアルファで各々がやった分だけ結果になるという思いで取り組んでいました。

甲子園中止になったからこそ分かることも

――甲子園中止の第一報を知った時はどういった感情でしたか?
 1,2年生の時に行けなくて、野球を始めた時から少なからず甲子園というものは常に念頭に置いていたので、「去年の先輩たちの代までは普通に甲子園があったのに、なんで自分の代だけないんだろう……」と思っていました。そして自分の1つ下の代から普通に甲子園があるので、今でもその葛藤があります。
 当時は悔しい思いというか、何にぶつけていいのか分からない気持ちがありました。でも、だからといって今までやってきたことは無駄にしたくなかったですし、皆と野球ができているだけ幸せだと思うようにしていました。仲間の大切さや、日常のありがたみなど、中止になったからこそ分かることもあったので、そういった点ではプラスになったかと思います。

――ミーティングなどでの監督の話で印象に残っていることはありましたか?
 監督やコーチもそんなことになるとは思ってもいなかったので、監督やコーチの方が自分たちより落ち込んでいたかもしれません。監督、コーチを逆に自分たちが励ましていました。最初は選抜が中止になり、夏も中止になるかは分からなかったので、選抜が中止になった段階では「夏にもう一回監督をちゃんとした形で甲子園に連れて行こう」という話をしていました。

3年間の集大成の証明を

――その後、各都道府県で独自大会開催の動きが進みましたが、大会の開催を聞いたときの心境を教えてください
 独自大会ということで次にはつながらないという形だったので、自分たちの代の中でも未来のある後輩たちがメインで出るなど、次の世代のことを考えた方がいいのではないかという声もありました。その時に後輩や監督、今まで練習を支えてくれた周りの方々が「3年間の集大成を見せる舞台だから、3年生中心でそれを証明してほしい。それを見せることが後輩たちにとっても力になるのではないか」と言われたので、3年生の集大成を全てぶつけるという気持ちで戦うことにしました。

――独自大会決勝は序盤0-1でリードされ、6回に一挙6点を奪い逆転する展開でした。その当時の話を聞かせてください
 自分たちの代は決して圧勝するようなことはなく、秋の大会から何度も何度も逆転され、その度に逆転し返してという苦しいゲームをものにしてきました。独自大会の決勝でも苦しい状況になって、でも逆境を力に変えることに関してはどこのチームにも負けない自信があったので、自分たちらしい戦いだったと思います。

――決勝以外の試合で印象に残っている試合はありますか?
 この試合というのはないのですが、3年生がマネージャー含めて26人いて、岡山県の独自大会は25人ベンチ入りできたので、結果的に3年生が毎回全員ベンチに入ることができました。秋の大会は18人しかベンチ入りできないということもあり、3年生全員で戦えたというのは独自大会を通して印象に残っています。

――選抜出場予定だったということで甲子園交流試合があり、角南さんは試合前の外野ノックを担当されたとのことですが、甲子園のグラウンドに立った感想などを教えてください
 今まで甲子園のスタンドから見るという経験はありましたが、実際にそのグラウンドに立った時は球場の迫力を感じました。たった1試合だけでしたが、12年間野球をやってきて、一生懸命バットを振ってきてよかったと感じました。
 結果的に選手として出ることはなかったのですが、ノックをさせてもらえるということで、ノックを始める前には涙が出そうになりました。それと同時に、甲子園で元気いっぱいにプレーしている仲間を見ると、自分のノック1本でも皆の力になったのかなと嬉しく思います。

当時の3年生にしか分からない気持ちを大切に

――この「あの夏を取り戻せ」というプロジェクトについて聞いたときはどう思いましたか?
 最初に思ったことは、そうやって動いてくださる方がいることが嬉しいという思いでした。甲子園でやりたいという思いもありますが、皆と一緒に野球をすることが好きなんです。大学進学や就職で離れ離れになった皆と再び1つになって集まれる機会を作るために動いてくださる方々がいるので、そういった部分でも非常にありがたいと思っています。

――このプロジェクトでの目標について教えてください
 当時の3年生にしか分からない気持ちがあると思うので、その気持ちを大事にしながら全員が皆と集まれて、野球ができてよかったと思えるようなプロジェクトにしたいと思います。

――最後に応援してくださってる方々へ意気込みをお願いします
 このような状況で世界が大変な状態の中、自分たちのために様々な方が動いてくださり本当に感謝しています。ぜひこのプロジェクトを実現させて、自分たちの元気いっぱいなプレーを見ていただいて、世界中の皆さんに少しでも勇気と笑顔、感動を与えられるように頑張りたいと思います。
 頑張ります!


プロジェクト公式サイト:https://www.re2020.jp/
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