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令和4年のGO ACTION〜最終回・Re-UNION~

はじめに

2023.4.16、プロレスリング・ノア ゼビオアリーナ仙台大会。

NOAH初進出となった会場でのビッグマッチは、試合開始前から拳王の前説などで盛り上がるなど、良い雰囲気で幕を開けた。
その盛り上がりに更なる火を点けた出来事が、第2試合終了後に起こった。


場内に流れる、『ENFONCER』の調に沸き立つ観客達。
入場ゲートに現れた"王"の帰還に、会場中が歓喜した。


「みんな、待たせたね!潮崎豪、復帰します!5.4両国国技館大会、みんな、期待だけしていてください。I am NOAH!」


令和4年の潮崎豪

2022年の潮崎豪は、負傷欠場という形で幕を閉じることになった。

2021年にGHCヘビー級王座から陥落後、ほどなくして発表された長期欠場を経て、2021年11月に復帰発表。


その場で、即座に中嶋勝彦の持つGHCヘビー級王座に挑戦表明するも、2023年元日・日本武道館大会で中嶋に敗戦。
中嶋から「敗れたら、(潮崎の自身の代名詞でもある)『I am NOAH』を使うな」という戦前の要求を呑む事になる、最悪のシチュエーションから2022年の潮崎豪は始まった。


その後、トップ戦線に戻るために直訴したシングル4番勝負でも全敗を喫するなど、年始からのシングルマッチは6連敗を数えた。


その後、3月のシングル連戦で復調の兆しを見せた後、藤田和之の保持していたGHCヘビー級王座に4.30両国国技館大会での挑戦を表明。

藤田の欠場により清宮海斗との王座決定戦になったものの、このチャンスを逃さなかった潮崎が勝利し、GHCヘビー級王座を奪還。
同王座では最多記録となる、5度目の戴冠を果たした。


しかし、同日の両国大会に参戦した『史上最大のX』・小島聡の挑戦を受けた6.12『サイバーファイトフェスティバル』では、初防衛戦で敗れてしまい、すぐさま王座陥落。


王座奪還に向けて動いたシングルリーグ・『N-1 VICTORY 2023』は4勝3敗で勝ち越したものの、最終公式戦を待たずしてリーグ戦敗退が決まる屈辱。
優勝決定戦が行われた9.3大阪大会でのタッグマッチで、ティモシー・サッチャーのサブミッションに敗れたのを最後に、長期欠場へと突入した。


欠場期間中は、2021年にGHCヘビー級王座を獲られた武藤敬司の引退ロードにも、コロナ禍以降初となる声出し応援解禁の大会にも、試合出場することは叶わなかった。


悔しさにまみれた印象の方が色濃い潮崎の2022年だったが、前述の仙台大会における復帰発表時の歓声、試合後のサイン会の列は、潮崎に対する期待感に満ち溢れていた。


2023年は、早くも5ヶ月目に突入しようとしていた…。


2023.5.4『拳王&征矢学&中嶋勝彦vs潮崎豪&清宮海斗&稲村愛輝』

迎えた復帰戦当日。

5大GHC王座戦が組まれた両国ビッグマッチで、潮崎の復帰戦はセミファイナルだった事は、期待の大きさを窺わせていた。


清宮海斗と稲村愛輝を携える形で、対角には『金剛』の面々。
2021年末の復帰戦同様、トップ戦線の選手達に頭から挑むことで、再びその場所へ返り咲くための闘いが始まった。


潮崎豪と中嶋勝彦の先発で始まった一戦は、復帰戦の主役である潮崎を中心に回っていく。


終盤は潮崎と中嶋のマッチアップが軸に。


潮崎のチョップと中嶋のキックが交錯する攻防となったが、個人的に、潮崎のチョップは未だ本調子ではない印象を受けた。
チョップの破裂音は、2022年初めの時のような、掌に爆薬を仕込んだような音ではなかったからだ。

このクオリティを復帰戦で求めるのは酷だったのかもしれないが、試合を見ていて、潮崎のギアが上がっていくのはこれからのように思われた。


そんな本調子ではない中でも、清宮と稲村のアシストを受けて中嶋を攻め立てる潮崎。


しかし、一瞬の隙から金剛が反攻に転じると、形成は一気に逆転。


まさに「一寸先は闇」という言葉を象徴するような畳みかけから、最後は中嶋が潮崎からバーティカルスパイクで勝利。


中嶋「潮崎豪。なんだ、この無様な姿は。これがI am NOAHなのか?あの強い強い潮崎豪はどこに行ったんだ?もう一度、やってやろうか。立て!」


潮崎を痛烈に批判し、強い言葉で焚きつける中嶋。

掲げられた中嶋の右手は、不甲斐ない潮崎に対しての制裁を意味するかに思われたが、一転して、その右手は潮崎の眼前に差し出される。

差し出した中嶋の右手を握手で返す潮崎の姿に、騒然とする場内。


中嶋「AXIZ、復活だ!」


2018年12月の結成後、GHCタッグ王座の最多タイ記録となる3度の王座戴冠を果たすも、2020年8月末に突如として終わりを告げたタッグチーム・『AXIZ』。


復活宣言後に潮崎と中嶋が決めたポーズは、約2年8ヶ月間も袂を分かっていた者同士とは思えぬ程、あの当時のまま変わっていなかった。


まとめ

「潮崎豪。アンタ、俺の事、必要としてないでしょ。」

2020.8.30の『AXIZ』解散時に、中嶋が発した言葉である。

同日のメインで組まれたGHCタッグ王座決定戦・『潮崎豪&中嶋勝彦vs杉浦貴&桜庭和志』の終盤戦。
右腕を容赦なく攻められた潮崎に中嶋がタッチを求めるも、潮崎はタッチを制して自ら試合を決めに行った事も、この発言の重みを強く引き立たせていた。


しかし、あの一件があったからこそ、約2年8ヶ月後に元パートナーの差し伸べる手を必要とした潮崎の姿が、私には印象的な出来事として残っているのだ。
「パートナーに頼れる」事の強さ。


2022年とは異なるアプローチで、トップ戦線を狙いに行く潮崎(或いは中嶋)の姿に、私は今から注目せずにはいられない。


苦難にまみれる時期が長かった"令和4年の潮崎豪"は、両国ビッグマッチでの復帰戦を以て終わりを告げた。
そしてトップ戦線へ上がる為、かけがえのない最高のバディ・中嶋勝彦と行動を共にする、"令和5年の潮崎豪"が始動したのである。


~完~


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