令和4年のGO ACTION〜第十九回・You are NOAH〜
はじめに
2019年5月、鈴木秀樹が潮崎豪に言い放った言葉である。
当時、GHCヘビー級王座を保持していた清宮海斗の対戦要求を振り払い、鈴木がロックオンした相手は、GHCヘビーから遠ざかっていた潮崎だった。
二人の初シングルが実現したのは2019年7月。
30分ドローという結末も、潮崎は悔しさを、鈴木は「結末として、勝ってる」とコメントを残す対照的な試合となった。
あれから約3年、30分ドローとなったカードが、当時と同じカルッツかわさきで実現した。
初シングル当時、GHCヘビー級王座から遠ざかっていた潮崎は、この3年間でNOAHの象徴となり、名実共にNOAHの顔となった。
『N-1 VICTORY 2022』のブロック1位は絶たれた潮崎であったが、最終公式戦で大仕事が残っていた。
3年越しの因縁を消化する事である。
2022.8.28『潮崎豪vs鈴木秀樹』
迎えた最終公式戦。
両者の決着戦という意味合いに加え、鈴木にとってはブロック1位進出がかかる負けられないシチュエーションだった。
解説の井上光記者による言葉を借りるなら、試合の空気感は「異物を飲み込んだような試合」だった。
周囲が息を吞む、序盤の攻防と静寂。
その組み合いが終わった後、股を三回叩く鈴木秀樹の姿を見て、ただならぬ畏怖の念を覚えた。
その異様かつ静寂に包まれた空気を切り裂く、打撃音の対比。
潮崎がチョップを浴びせても、体をぶつけても、見ていて深部まで刺せていないような感覚に陥る程の圧倒的な威圧感が、鈴木の全身から放たれていた。
中盤の打撃勝負から、鈴木がダブルアームスープレックスを放つも、カウント2で返す潮崎。
一撃必殺が返された時の観客のどよめきは、誰もが試合が決した様子を確信していた事の反響だったように思う。
打撃勝負になった際、私の脳裏に焼き付けられた光景があった。
個人的に、潮崎も打撃が強い選手という印象があるのだが、鈴木のそれは、一発一発に「的確に相手を仕留める毒針」のようなインパクトを持っていた点だ。
フィニッシュ前、ゴーハンマーの雨を降らせる潮崎を、エルボーとニーリフトで沈めたシーンが、その象徴的場面だったように私は感じた。
2発目のダブルアームスープレックスが決まると、潮崎も返せず3カウント…。
その後、『拳王vs藤田和之』で藤田が勝利したことにより、鈴木秀樹が勝ち点11でAブロック1位を確定。
3年越しのネクストは、潮崎にとって残酷な結末となった。
まとめ
試合後、リング下にいる潮崎に感情を露にした鈴木秀樹。
「ノアはお前だよ」から約3年、バックステージで「決着はついている」と言いつつも、潮崎の眼前で言い放った「ノアが負けたんだ」という言葉は、私には鈴木の強烈な意趣返しだったように思えてならなかった。
潮崎豪の『N-1 VICTORY 2022』は4勝3敗で終了。
勝ち越しで終えたとはいえ、大会前のファン投票では優勝予想1位に挙げられながら、最終公式戦を待たずにブロック1位が絶たれる結果に。
期間中、シングル未勝利だった田中将斗に初勝利する実りはあったものの、勝ち点で上位3傑だった鈴木秀樹、藤田和之、拳王から勝ち点を1つも拾えなかったのが誤算か…。
潮崎にとって激動の2022年も、2/3を消化。
残りの4ヶ月、『N-1』の屈辱を糧にどう立ち上がるのか、私は気になって仕方がない。
季節は、秋を迎えようとしていた。
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