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触覚についての考察2 ~マッサージでの"痛きもちいい"とは?~

◇はじめに

『触覚についての考察』の第二弾です。
今回のテーマは"痛気持ちいい(イタキモチイイ)"について。
「イタギモ」です。

「痛い」と「気持ちいい」という相反するような言葉が合わさっています。
どういったメカニズムなのかは曖昧な部分もあるので、掘り下げていこうと思います。

◇初めて施術をうけるお客さんへの説明

私は整体師ですので、日々お客さんに触れています。
初診のお客さんで、はじめて身体を触られる施術を受けるという人がいます。

そのような方には最初に強さ加減の説明をします。
「施術を受けるときの強さ加減は、"痛きもちいい"がいいと言われています。強すぎると痛くて身体に力が入ってしまいますし、弱すぎると効果がありません。様子をみながら施術をしていきますので、強さ加減が合わなかったらおっしゃってください」

"痛きもちいい"という言葉で通じるのかなと思ったりもしますが、これまで「"痛きもちいい"って何ですか?」と聞かれたことはありません。

◇脳内麻薬

マッサージを受けて「痛きもちいい」と感じているときは、脳内でエンドルフィンが分泌されていると考えられます。

エンドルフィンとは「脳内麻薬」「快感ホルモン」と呼ばれる脳内で働く神経伝達物質の一つです。ストレスや快楽、感動などを覚える場面で分泌されます。
この物質には鎮痛作用があり、ケガをした時もエンドルフィンが分泌されれば痛みが和らぎます。

つまり、エンドルフィンを分泌させるポイントは「痛み」です。

◇痛みの程度

しかし、マッサージでの圧す刺激が強すぎると痛みしか感じなくなってしまいます。
すると、自律神経である交感神経が優位になります。心拍数は上がり、筋肉は硬直します。体は緊張し続けるので、リラックスとは逆の状態になってしまいます。

つまり、エンドルフィンを分泌させて気持ちよくなるには、体が緊張しない程度の「ほどよい痛み」が必要になってきます。

自律神経のバランスでいうと、少し交感神経よりの状態といえそうです。

◇覚醒レベル

ここで自律神経系から考えていきます。
覚醒レベルは、脳の生理的な活動状態のこと。自律神経の交感神経と副交感神経の働きで、覚醒度が上下します。

ポリヴェーガル理論をご存知でしょうか。
ポリヴェーガル理論とは、自律神経の迷走神経に着目した理論です。自律神経系を三種類に分類しています。
【 交感神経 】神経系を覚醒させる(アクセルの役割)
【背側迷走神経】神経系の覚醒を下げる(ブレーキの役割)
【腹側迷走神経】神経系の覚醒度を調節する(チューニングの役割)

・覚醒度が上がる…【焦りモード】→興奮、不安
・覚醒度が下がる…【疲れモード】→グッタリ、ぼんやり
・バランスがいい…【安心モード】→落ち着き、ニコニコ

これらを「耐性領域」というストレス耐性の図に対応させたものが下の図1です。
覚醒度の上下を曲線の推移で表しているのが図2。

体が緊張しない程度の「ほどよい痛み」は、図でいうと緑エリアと赤エリアの境界ではないかと推測されます。
赤エリアまでいってしまうと緊張してしまう。しかし、緑エリアであれば「痛み」を感じることができないので、エンドルフィンは分泌されない。

「ほどよい痛み」とは狭いストライクゾーンなのかもしれません。

◇覚醒した状態のリラックス感

以前、note に投稿した『こっそりリラックス』というものがあります。

『こっそりリラックス』とは、くすぐったさを利用してリラックスするという小技。
くすぐったいという感覚は独特なもので、副交感神経が優位でありつつも交感神経も働いているという"覚醒した状態のリラックス感"が得られるというもの。

「痛きもちいい」という感覚も"覚醒した状態"と"リラックスした状態"が混合しています。
"リラックスした状態の覚醒感"と言えるかもしれません。

◇痛みに弱い人

ここまで、"痛きもちいい"の話を続けてきましたが、マッサージの強さ加減の"痛きもちいい"は一つの基準であって、誰にでも当てはまるわけではありません。

痛みに弱い人などは、少しでも痛かったら身に危険が迫っていると判断して身体が硬直してしまいます。リラックスどころではありません。

そのような方は、さするようなソフトなマッサージが向いています。

以前にマッサージを受けて痛かった経験があるとマッサージ嫌いになる場合もあります。

痛みに弱い人の場合、触覚過敏が隠れているケースも考えられます。
痛みの閾値は人によって違うからです。

カレーの辛さの好みと似ているかもしれません。
激辛が好きな人もいれば、甘口じゃないとダメな人もいるようにです。

ちなみに、激辛が好きな人は、ストレス解消に辛さを求めている場合があるようです。
激辛の刺激を脳が痛みと認識し、脳内でエンドルフィンが分泌していると考えられるからです。"痛きもちいい"ならぬ"辛きもちいい"ですね。
エンドルフィンは脳内麻薬でもあるので、辛さで「ヒーヒー」いっているときは、ストレスを忘れられるというメカニズムです。
しかし、辛いものを食べ過ぎると内臓にダメージを与えるので、胃が痛くなったり下痢をしたりするので注意が必要です。

◇まとめ

触覚について"痛きもちいい"という感覚から考えてみました。
私的には、「痛み」は主観的な感覚であるということを再認識できてよかったなと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。
つづく…

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