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『桜舞う季節に』

今年も春が来る。
桜が、風に揺られて、花弁が宙を舞う。
桜の並木道、君の顔がよぎる。
この季節は、君の季節だ。
花弁が運ぶ、君の。
あーあ、歪んで何も見えないや。
あの時に、戻れたなら、なんて、馬鹿なことを考える。

今更、もう遅いけど、ありがとうを伝えたい。
君のお陰で、ここに居るんだよと、伝えたい。
戻れない過去に、思いを馳せて、たまに振り返る。
だけど、ずっと立ち止まったままだと、君に怒られちゃうから、また踏みだす。これからも進んでゆく未来に。

桜舞うこの季節だけは、進めていた歩を止めて振り返って、桜散る季節にまた前を向いて歩き出す。
ふと、桜の花びらが目の前に降る。
それを手のひらでに落ちると、優しく暖かい光が射し込む。
きみが笑ったような気がして、それをそっと包み込む。
君との思い出が心を満たす。
泣いて笑って、過ごした日々を。
過去に触れて、涙が溢れ出す。
めいいっぱい泣こう。そしたらまた笑おう。
これからも生きてくために、君と一緒に過去も抱えて、未来を生きてくために。君の思いを繋ぐために。

ありがとう。
そう呟く。
風が桜の花弁を、桜の香りを運んでくる。君を、連れてくる。
また会おう。君に話したいことが、沢山あるんだ。

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