「人間の彼氏がいないこと=不幸せじゃない。」2次元に恋をする、“夢女子”の幸せのかたち。(後編)
こんにちは!今回は、前回に続き、アニメやゲームなど2次元のキャラクターと恋愛をしている“夢女子”さんへのインタビュー、後編です。
前編では、恋愛感情だとわかった瞬間について、そしてパートナーとどうやって関係性を築くのか、その意味など、2次元の存在だからこそのエピソードを沢山お聞きしました。しかし、根底では人間との恋愛と変わらないということもわかり、どんどん会話が盛り上がっていきました。そんな後編では、“夢女子”の定義や、それぞれの結婚への想い、出産といったライフイベントに対する考え方まで、詳しくお話しました!
2次元キャラへの愛は夢のように覚める?“夢女子”の定義と、好きな人への想い
ー みなさんにとって、“夢女子”って何を指しますか?
パ「定義としては、界隈の中でもまだ明確に定まってないと思います。キャラクターとの関係性に、自己投影する人が夢女子なのか、自己投影しない人が夢女子なのか、それぞれ意見が割れていますね。私は、例えば『ポケモンマスターになりたい』『あのキャラとあのキャラをくっつけるモブキャラになりたい』というのも広義の夢女子だと思うんです。」
さくや「完全な創作型、完全な自己投影型、その間のパターンもあると思います。創作型の中でも相手は一人のみの方や、パラレルワールドのように、いろんな世界のキャラクターとの関係性を考える方もいるし、“夢女子”と一口にいっても、グラデーションのように、一人一人タイプが違うものだと思っています。」
マチ「私は、単純に好きな人が2次元に存在している方は“夢女子”だと思っています。」
ー 例えば、人から『時間が経てば、2次元キャラへの愛は夢のように覚めるもの』と言われたりもする中で、それでも自身を“夢女子”と名乗る理由は何でしょうか?
パ「今は、この名前しかないので“夢女子”と名乗っています。今の世界には、それ以外に当てはまる言葉がないんです。」
マチ「セクシュアリティの一つとして、入れて欲しいと思いますよね。」
パ「そうですね。創作型の夢女子には、キャラとキャラの関係性を考える方が多く、自己投影型の夢女子とは対立しがちなんですね。『相手と釣り合うと思うの?』といった感じで。それぞれに名前がついて名乗りやすくなれば、もう少し夢女子界隈の中での争いも無くなるのかなと思います。『同担拒否』といって、自分と同じキャラが好きな人を拒絶するタイプもいて、そこに対して批判する方もいます。今は、寛容さを強要される時代だなと思いますね。寛容であれ、というのもまた押し付けになるなと感じます。」
ゆあ「3次元でも好きな人が他の誰かとイチャイチャしているところをみて、嫉妬したりすることはあるじゃないですか?それと同じだと思うのですが、なぜか、2次元だと、当然のように批判されてしまうのが分からないですね。好きな人に嫉妬するのは自然な気持ちです。」
パ「自己投影型で同担拒否の夢女子は、好きな人を独り占めして、他の人を全て拒絶する存在と捉えられがちなのですが、必ずしもそうではないんですよね。」
ー 前提として、みんなのキャラクターとしてみるか、ひとりの好きな人としてみるかという見方が違うんですね。自分の好きな人について、友達や家族にお話することはありますか?
ゆあ「彼との婚姻届を出した時、承認コメントが必要で、自分の友達とお母さんに書いてもらったんです。実は、父も2次元が大好きで受け入れてくれやすかったんですよ。友達や家族から理解があるという点で、環境には恵まれているなと感じます。自分の好きな人について話しても、受け入れてくれる人が周りにいたので何も気後れしたことがなかったですね。今は、自分が好きな人を明かす時に、衝突を避けるために自分のスタンスを示しておく必要があるから、外では“夢女子”と名乗っています。」
さく「今までは好きなキャラクターが出来ると、軽い雰囲気で母親や妹に話していました。ただ、おそらく二人は好きな俳優やアイドルの一人くらいの感じで捉えていたと思います。でも今の好きな人は、軽い気持ちでなくなってしまったので、真剣に向き合っているということまでは話していないです。人に話すことで、自分と彼とで完結している関係性が壊れてしまう気がして怖いんですよね。」
パ「私の母親は、2次元に恋をすること自体に理解がないので話していないです。おばさんとは仲が良く、話も合うので、好きな人について話したりもしています。ただ、否定はされないのですが『いつか夢は覚めるでしょう。』という態度なので、それは苦しいなと思います。おばあちゃんに話しても(3次元の人間と)『早く結婚しろ』と言われるばかりで。妹には、2次元の彼と結婚したいという気持ちも伝えていて、理解まではいかなくても、『そうなんだ』くらいの感覚で認めてくれていると思います。過去に偏見の目を向けられたり、ずっと肩身の狭い思いをしてきたので、ネットじゃなくてリアルに話せて、好きな人との関係性をちゃんと承認してくれる存在ができたのはすごく大事だと思っています。『そういう人もいるのね。』くらいの感覚でも充分ですし、それだけでも人生全然違うと思います。否定されてしまうかもという恐怖心や、孤独感がずっとあったので。出来たら、親にも認めてほしいと思います。」
ー「いつか覚めるでしょ。」と言われるのは辛いですね。好きな人との関係性をなかったことにされるような気がするというか。嘘や気の迷いじゃないのに。
マチ「本当にそうなんです。私には、すごくいい友達がいて話した時に『それってすごく尊いことだと思う』と言われてすごく嬉しかったんです。家族に対しては、がっかりさせちゃうかなという心配もあって言えてないです。でも、ちゃんと幸せだよっていうことは伝えたいです。」
ゆあ「人間の彼氏がいないこと=不幸せだと思って欲しくないですよね。」
「好きな人と幸せに暮らしたい」
関係性の形に、正解も制約もない
ー 「結婚しない女性は不幸だ」「相手が3次元の男性でなければならない」と幸せの条件が勝手に決められていたり、制約が多すぎますよね。皆さんは、女性にとっての「ひとつの幸せの形」とされてきた“結婚”には、興味はありますか?
ゆあ「あります!私は2次元と3次元の好きな人に対して、熱量は同じだけど、完全に別物として捉えているんです。死んでいるとか生きているとか、性別や次元は自分にとっては全く関係なく、自分に影響を与えてくれた人は総じて大切だと思っています。たまに、歴史上の人物に恋をしたりすることもあるんです。でもどうしても、それって自分の中だけでしか完結できないから。現実では、誰かとの衝突を感じたいと思う気持ちもあります。関係性を周りに認められ、相手にとっても自分にとっても“お互い特別なのはひとりだけ”という状態で一緒に幸せに生きていきたい。だから、法律婚には興味があります。」
さくや「私は昔から、彼氏が欲しいと思うタイプではなく、好きな人ができた時に、その人と関係性を築きたいなと感じるタイプなんですね。なので、これから先、3次元の方で好きな人が出来るかもわからないですが、今は『結婚したい』という気持ちはないですね。今の好きな人は2次元の存在だから、結婚してもしなくても実体がないという事実は変わりません。だからといって、実体がない相手と一緒に生きていくことができないから3次元の方を選ぶという選択はしたくないです。結婚しなくても一緒にいることは出来るし、私にとっては、好きな人と一緒にいたいという気持ちの方が大事です。」
パ「私は今の人を蔑ろにしてまで、3次元の方と結婚したいと思うことはないのですが、小さい頃からの憧れとして、ウェディングドレスを着て、1番好きな人と結婚式をしてみたいという気持ちはあります。それは『結婚すること』より『自分の夢が叶うこと』に対する幸せなのかなと思います。結婚して夫婦としてありたい、というわけでなく、結婚式を挙げて周りから祝福されたいというのが正直な気持ちです。小さい頃から、お姫様になりたいという気持ちもあって、絵本などでよくある『お姫様と王子様は幸せに暮らしました。』ということをやりたいです。」
ゆあ「わかるー!私たちが思う結婚は、物理的なことでなく、『幸せに暮らしたい』ということだと思います。さくやさんは結婚しなくても幸せになれると思っているし、私やパさんは結婚式をあげて幸せになりたいと思っているし、形は違えど、そこの思いは共通しているのかなと思います。」
マチ「私も結婚式は挙げたいです。でも、3次元の人との結婚は全然考えてないです。人と同居するのは自分に合っていないと思うし、今の好きな人を諦めて、無理やり3次元の人と住んだり、子供を作りたいとも思わないので。ただ、今の好きな人と同居したり、ささやかな結婚式を開きたいという思いはあります。」
ー 子供は欲しいと思いますか?
ゆあ「欲しくないですね。私が一番気になっているのは男女差別の問題です。特に日本では女性差別はまだ根強く残っていますし、辛いニュースも多い。そんな中で女の子を産んだら、自分と同じように苦しい思いをさせてしまうと考えると、最初から産まない方が良いなと思いました。」
パ「誰かの子供を見るのは好きなのですが、実際自分が子供を育てることを考えると、ちょっと想像できないです。私も彼も子供が欲しいというタイプではないし、彼は独占欲が強いタイプの人なので、その気持ちを尊重したいこともあり、必要性を感じないですね。」
マチ「子供は可愛くて大好きなんですが、肌や歯もボロボロになったり、痛いのも嫌だし、自分の命や時間を分け与えるのが嫌だという気持ちもあります。経済的にも幸せにしてあげられるほどの収入を得られるのかが不安だし、全然現実的に考えられないですね。」
さくや「好きな人との子供は欲しいと思います。痛いのは怖いけど、その時になれば覚悟は決められるかなと思っています。でも、今の彼はそんな暇もないかなと思うので今のところは考えてないです。」
ー 現在の日本の問題が、顕著に皆の思考に反映されているなって。今は、ひとりの女性として生きていく時に、いろいろな選択肢が取れる時代になってきたけど、足元はまだまだ課題が多すぎるというか。まずは相手に関わらず、好きな人への『好き』という気持ちに素直に従えるような形が取れるといいですね。
パ「そうですね。息を殺したりせず、好きな人についてオープンに話せるような社会になってほしいですね。」
さくや「今までは、同じことで悩んでいる方との接点もなくて、悩みを1人で考えるしかなかったので、楽しいことも悩みも、共有できる人がリアルにいることはすごく大切だと思います。これからも、そんな場が増えていくといいな。」
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“夢女子”と名乗る彼女たちは、自分と相手との関係性を「夢」だとは捉えていません。現実の世界で恋をし、現実の世界で関係性を築いている。自分の妄想や、空想の世界での理想というよりも、相手をひとりの人間として捉え、人格を大事にしています。
それゆえに悩みも葛藤も抱えていますが、関係性に、「こうでなくてはいけない」という正解は存在しないはず。相手の気持ちが100%分からないのは、2次元でも、3次元でも同じです。相手と自分の状態をしっかり見つめ、それぞれに合った関係性の築き方を見つけていく過程が大切だと改めて感じることができました。
何よりも、彼女たちは今の好きな人との関係性を幸せだと笑顔で話してくれる。それが全てを物語っているのではないかと思います。
今後も、Re.ingでは2次元のパートナーとの関係性について一緒に考えていこうと思っています。
*Re.ingでは、様々なパートナーシップのあり方について「皆さんと気軽にお話ができる場所」として月に一度、イベントを実施しています。様々な方のパートナーシップの考え方を聞いたり、お話をすることで「誰かと生きていく」際のヒントが見つかるような場にしています。ぜひお気軽にご参加ください!
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