マガジンのカバー画像

じぶん作詩/短歌 のようなもの

14
運営しているクリエイター

#自由律

Re:

まるいきつねいろに焼きあがった土曜の朝を、ナイフでざくざくと切り込んで、そしたら呑み込まれたのはあなたの前にいる私のほう。部屋に散らかった齧りかけのいくつもの昨晩を、たまに思い立って、本音と嘘の段ボールに放り込んで明日の不燃ごみにと思うけれど、きれいに片付いたためしなんてそれはなくて。ああ、また山溜まりになったものたちに薄くラップをかけて、部屋の端に置いておくことしかできないでいる。置いているのか

もっとみる
まがいものの朝

まがいものの朝

起きて 夢を見ていたと悟って

ふやけた意味の意味を

裸足の裏でなぞろうとつめたい

6AMにフローリング 着地

ただしい輪郭とは すなわち朝の窓辺

あてどころに尋ねあたらぬ意味 まがい者が

光のもとでは均く声をならべ

昨日を名乗り わたしを騙って

こんこんと 

今日も

今日に

折り重なっていく

また同じ夢を見ていた

くるくる貝

くるくる貝

相変わらず奇抜な柄が似合ってしまうきみの

ひろい肩やむねに付いてる貝や貝や貝や貝の

そのうちの一つに過ぎないとしても少なくとも

薄まったレモネードが回ってるいまはあたしの海だ

だからくるくる回って永遠に減らなくてこの時間が

続いてほしいのに続いてほしくない、なんで?

分かってるんだよそうして陽だまりみたいに笑う

ちゃん付けしてくれるさり気なく靴をほめてくれる

優しさを持て余して手も

もっとみる
万華夜のほどろ

万華夜のほどろ

水彩画が淡くぼやけるみたいに、あたしの脚に一晩中絡んでいた温もりは夢のなかの出来事だった。

それはそれは美しくて、あたたかくて、甘くて、にがくて。そして存在が即ちすでに、嘘だった。

あたしは幻を見ていた。

ほてった紅で口づけしてオレンジワインの芳ばしさを深く深く海のいろに染めた明け方。

煌びやかな電飾に浮かび上がったのは、昨晩という名の喫茶店かバーであったかもしれない。

夜が溶ければ灯り

もっとみる