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みなさまのたなごころ撰集

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これは私だけの、と云いながら、その宝箱とやらをどうしても人の目前でぱっと開けて見せたくなるというのは、どうやら生来人間に根を張っている欲求らしい。たなごころ撰集だなんて、それっぽ…
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2024年5月の記事一覧

短編小説 「昼下がりの君へ」

短編小説 「昼下がりの君へ」

コトッ、昼食のタンパクサンドを食べ終え、庭でくつろいでいると、芝生に金属製の球体カプセルが降ってきた。見上げるといつもの赤い空が見え、飽きもせず太陽が輝いていた。僕が産まれる前は空は青かったらしい、とはいえ、金属が落ちてくるのは珍しいことだった。

こういう時は、ダンの出番だ。ダンは僕の友達、そして、僕の家族。ダンは家の二階全フロアを自分の部屋として使っていた。僕の部屋は一階のこの庭に出入りしやす

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思い通りにならない短編小説

思い通りにならない短編小説

 彼は布団の中で、スマホをいじりながら、眠れぬ夜を過ごしている。

 眠れぬ夜とか書くと、ちょっとカッコよく思うかもしれないが、実際はつらいものだ。
 薬も飲んだが、効かない時は効かない。体が薬に慣れてしまったものだから。

 彼の名前は、また今度にしよう。どうせ、これは短編小説なのだから、登場人物は彼しかいない。

 彼は仕事の傍ら、毎日、スマホに書き殴る。文字を書き殴るのが日課なのである。でき

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