【Livro?】No.1 妹おんぶに片手ランドセルの11歳。
妹をおんぶして22時過ぎに外を歩いている私。片手にランドセル。
を持ってた気がする。いや、持てないか。
2012年か2011年。父の浮気現場に乗り込んだ母から「伶南、いますぐ家を出て。聖夏も連れておばあちゃんの家をピンポンして。今すぐ!」これもポルトガル語だったっけ。
妹を無理やり起こして、おばあちゃんの家に行き何十回もピンポンした。「なになにこんな時間に。どうしたの。」「ママがとりあえずおばあちゃんの家に行けっていうから。」「あいなといるの?まぁいいから入って。びっくりした。」「そう。うん。」
起きたら母はおばあちゃんと話していて、私が起きたのに気づいて話をやめた。
この記憶も曖昧で正しいかわからない。でも私はすごく怒っていた。
父が浮気をしていることを母は勘づいていて、その証拠を掴もうと色々なことをしたそう。
ただでさえ、父に対する感情が複雑だったのにもっと複雑になって、母をここまでボロボロにさせた父に腹がたった。自分が王様だと思っていた父、アイデンティティとプライドを傷つけられた母。喧嘩ばかりでその喧嘩も喧嘩じゃなかった。言葉の壁ってやらでまともな言い合いもできていない。いや、そういう意味のその言葉じゃなかったよ。この表現はそれが言いたくて言ったわけではなかったと思うんだけどな。って私が通訳したり、通訳しなかったりしないと危なかったり。
子供の時、父と母がコミュニケーションが上手く取れていないのが日常だった。私も自分の感情を伝えたり、怒らずに、睨まずに伝えるのが下手くそだった。
小学校5.6年生の私は大人で、子どもで、とても大人っぽかった。
ムスッとしていてもそれが可愛いと愛されている妹がずるくて何回も意地悪をした。上手に貯金をしている母似の妹の財布から500円玉をくすねたり、無視したり、押したり。我慢できなかった。妹の大事なiPadを壊したり、脅したり強制的に従わせたり。自分が父に似ていることを認めたくなくてもそうだとわかっていた私は母に「パパと同じ」と言われるたんびにどんどん似ていき自分が憎かった。そんな父も憎かった。
我慢できないって見えるように意地悪をしていたんだ。気づかない母と父。気づいて欲しいけどその前に怒られる。当たり前だとわかっているのにあの感情はどうしても苦しかった。
同じくらい妹を守った。「お姉ちゃんがいるから大丈夫だよ。」もうすぐ喧嘩が終わる頃(これは母が諦める時)だと察して妹に声をかけた。
あれから10年経っても私は記憶があるようでないあの苦い感情を振り返る。セラピーみたい。
忘れ物をしないようにとランドセルを開けたら、毎回チェックするためのリストを貼ってランドセルは傷ひとつつけないように大事に使って、投げたり外の床に置いたり。ランドセルにまで気を使っていた。けどランドセルを背負わずに忘れたまま学校に向かうことも。なんで誰も言ってくれなかったの?意地悪だよね。
少女漫画はベットの枕元と足元に並べてその上にぬいぐるみ。スティッチの時計とスティッチの枕。6畳くらいの部屋の大半を占める暑苦しいそこらへんの気よりツルツルな2段ベットと引っ掛けてあるカバン。引き出しを同時に開けられない机の配置。この部屋のドア、廊下とリビングの境目のドアが閉まってても聞こえる2人の大人が「違う。わかってない。もういい。わかった、わかった。」と、頭が痛くなるほどのブラジル人にとって普通の声量で自分を伝えあっている。伝え合えていなかった。
父と母が授業参観来ると他の大人に「綺麗だね、若いね、かっこいいね。」「ありがとう。」私の父と母は確かに美男美女だ。でも母は今、もっと美しくなった。
自分の部屋があったりなくなったり。トイレに入りたい時に入れたり入れなかったりするくらい、母の兄弟が次々に同居をしていた。
今大人になって父の寂しさや孤独感がわかる。言い訳をさせてもらえない社会と大人の冷たさ。何より娘に心の底から恨まれた目を見た父は気が気が出なかったんだろう。なんて馬鹿なんだろう。蕎麦を食べてどうなったか正直知らないけど色々大変だったみたい。
心で繋がっていれば、愛があればよいなんて嘘。誰がそんなこと言ったの。言葉が違っても大丈夫なんて嘘。誰がそんなこと感じたこともないのに言ったの。愛よりお金でしょというと冷たい目で見られるこの世の中を作ったのはみんな。でも、本当。愛だけじゃ繋がらない気がしてお金が欲しいと思う貧困の思考。
貧しい心になってしまう貧しい家庭。これを攻めたら惨めに感じる自分。何度も惨めに感じてきた。惨めだと感じることを選んでいる自分。選びたくないのに選ばないとやってられない自分。惨めなんかじゃないと言われるとさらに惨めに感じる惨めな自分。
今の私は、本音を深掘りされると父の顔が思い浮かぶ。その時に選ぶのは、私か父か。どちらがこの感情を作っているのか。父を選択肢に入れている自分にがっかりする。
そしてこれでも生きている自分を誇りに思うわ。
Reina Y
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